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オンライン社会調査事始め、ただし内容はけっこう高度

2019-07-25 15:39:24 | 読書ノート
マシュー・J.サルガニック『ビット・バイ・ビット:デジタル社会調査入門』瀧川裕貴, 常松淳, 阪本拓人, 大林真也訳, 有斐閣, 2019.

  インターネットを使った社会調査の教科書。マニュアル的なものではなく、方法論についての議論が中心だ。研究者または大学院生向けの内容である。著者はダンカン・ワッツの弟子で、有名なミュージックラボ実験(参考)の論文で第一著者になっている若手研究者である。研究事例が豊富で、読書案内や演習問題も充実している(ただし回答はない)。個人的には、研究事例集として楽しめた。

  内容は、ビッグデータの扱い方と注意点(巨大かつ常時データが入手可能であることが多いが、バイアスを持つ可能性があることなど)、調査やアンケートの心得(誤差の問題など)、実験方法(RCTが望ましいけれども、そうすることができない場合の実験設計など)、調査対象者や協力者の見つけ方(ネットを通じた募集方法やなど)、倫理(プライバシー保護など)である。お金の話も少々あり(他の方法より安いのかなど)、数式もたまに出てくる。

  で、読んでみて「さあやってみよう」という気になるかどうかだが、僕の場合はそれほどでもなかったな。結局、データの収集は英語環境だとやりやすく、日本語環境ではそれほどでもないということもあって、日本語でやるとコストがかかりそうだという思いがまずきてしまう(被験者の募集なども含む)。というわけで先立つものがいる、という考えになる。でも、アイデア次第というところもあるので、若手研究者ならば面白いガイドになると思う。

  
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