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良い評判を維持することで生き残れという図書館経営論

2023-10-13 21:09:40 | 読書ノート
Gary L. Shaffer Creating The Sustainable Public Library : The triple bottom line approach Libraries Unlimited, 2018.

  図書館経営論。副題にあるtriple bottom line approach (以下TBLと略記) を取り入れることによって、公共図書館は長期に持続可能となり、かつ繫栄するはずだと説く内容である。著者は現在、グレンデール市図書館・芸術文化局局長かつカリフォルニア図書館協会会長を務めているとのこと(本人HP)。

  TBLとは、経済、自然環境、社会的関係性の三つの面での持続可能性を追求する経営である。20世紀末に誕生した概念で、国連環境計画(UNEP)による事業所向けの報告書記載事項の基準を示したGrobal Reporting Initiative (GRI)中に取り入れられており、私企業ではすでに採用しているところがあるらしい。公共図書館もこのコンセプトを受け入れて経営に励めば「持続可能」となるという。

  図書館におけるTBLの経済の章では、資金集めと財務状況のモニタリング、集客について議論されている。図書館は集客のために新しいサービスを次々と起ち上げ、一方で古くなったサービスは廃止してゆけと説く。自然環境の章では、館の建築時にLEEDなる環境に配慮した建築であることの認証を受けることや、車両の代替エネルギー使用、リサイクルが勧められている。

  社会的関係性の章は二つに分かれていて、前半は対外的な関係についてである。取引先が法令遵守しているかきちんと監視すること、ネガティブな評判が立たないよう外向けのアピールを欠かしてはいけない、顧客管理システムを導入せよ、などと説かれる。社会的関係性の後半は対内的関係すなわち人事および労務管理についてで、簡単にまとめれば従業員の士気を低下させないようにせよということだ。

  以上。読んでみると「良い評価の持続」=「長期に持続可能」という印象がもたらされる。図書館サービスの質を高める話はない。それよりは道徳的な面での評判の管理が重要だということのようだ。21世紀の図書館はそうやって生き残るしかないのだろうか。
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