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一人ひとりは無知なので、チームで考えよう、と

2018-06-15 12:41:30 | 読書ノート
スティーブン・スローマン, フィリップ・ファーンバック『知ってるつもり:無知の科学』土方奈美訳, 早川書房, 2018.

  無知についての認知科学。一般向けではあるが、各種実験・調査の話がてんこ盛りで著者らが何を言いたいのかなかなかわかりづらい本である。「各種実験・調査の話」はそれなりに面白いので、それらを目的に読むといいのかもしれない。原書はThe knowledge illusion : Why we never think alone (Riverhead, 2017.)である。

  主となる主張は「個人は基本的に無知。思考は集団で行われる」ということである。その手段が知人でもgoogleでもいいが、簡単に情報にアクセスできて知識を引き出せると考えている個人は、実際には理解できていないことを「知っている」と錯覚しやすい、という。また、疑似科学の信者に科学的知識を与えても彼らは考えを変えない。なぜなら、彼らの思考は個人のものではなく、属している集団から来るものだからだ、という。これらの問題についていろいろ事例が提示され、最後に人間の認知構造に合わせた教育が説かれる。たくさんのことを知っている人たちを集めて作業させるよりも、狭い専門知識を持った人たちでチームを組ませて作業させたほうが生産的になる。なので、集合知を活かす社会制度設計を、ということのようだ。

  納得させられることは多い。だが、疑問も起こる。知らないことを知っているように思い込むバイアスは普遍的に見られる。こうした勘違いが欠点ならば、なぜそのような傾向が人間に埋め込まれているのだろうか。すなわちそれは進化的なデメリットとはならなかったのだろうか。おそらくならなかったのだろうし、知的に謙虚でないことはメリットさえあったのだろうと、個人的には推測する。こうした疑問に対する説明が抜けているので、無知に関する多面的な検証とは言い難く、残念ながら浅い議論に終始しているという印象が残る。
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