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低収入の夫なのになぜ妻は働かないのか

2019-11-17 08:44:54 | 読書ノート
周燕飛『貧困専業主婦』新潮選書, 新潮社, 2019.

  日本には、貧困家庭であるもかかわらず専業主婦をやっている女性がかなりの数いる。彼女たちはなぜ働かないのか、働いてもらうにはどうしたらよいか、を論じる内容でる。著者は中国出身で、現在は労働政策研究・研修機構主任研究員とのこと。

  本書の調査によれば、夫の収入が全体の下位5分の1に入るようなレベルでも、妻の17%は働いていないらしい。貧困専業主婦の生活は苦しく将来の見通しは暗いにもかかわらず、彼女らの3分の1は生活に満足している。働かない理由のいくつかには、子どもが難病にある、自身が鬱気味というのもある。しかし、より大きな理由として、専業主婦を有利にする日本の社会保障制度、離婚へのハードルの高い法制度、本人が育児の価値を高く評価していること、などが挙げられている。特に、育児への高い評価は、労働市場に復帰して低賃金労働をするよりも、子どもの相手をしていたほうがマシ、という態度をもたらす。

  しかし、やはり彼女たちは働いた方がいい、と著者は議論を展開させる。ではどうしたらよいのか。専業主婦を優遇し「ない」社会保障制度の設計など、選択アーキテクチャによって労働に誘導するという策が提案されている。

  以上。著者の提案の方向性に関してはおおむね同意するものの、すぐに首肯していいものか考えさせるところがある。失うものと得るものののバランスはとれているだろうか、と。その部分以外の、専業主婦の実態のところは、きちんと調査されていて役に立つ資料となっている。

  
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