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孤独は悪で、友人が少ない人は早く死ぬとのこと

2021-12-20 10:25:02 | 読書ノート
ロビン・ダンバー 『なぜ私たちは友だちをつくるのか:進化心理学から考える人類にとって一番重要な関係』吉嶺英美訳, 青土社, 2021.

  友人関係についての科学啓蒙書。人間関係における親しさのレベルに段階があること、その個体差、性差、発達段階について論じられている。ソフトカバーながら内容はかなり濃い。著者はダンバー数で知られる英国の進化心理学者で(参考 1 / 2 / 3 )、原書は
Friends: understanding the power of our most important relationships (Little Brown, 2021.)である。なお本書の議論は、いわゆる友達だけでなく、家族・親族・性的パートナーなどのあらゆる親しい人間関係も含んでいる。

  社会的孤立は免疫の不調をもたらし、心身の状態を悪化させる。では、必要な人間関係の数はどの程度か。ということで、まず親しさの段階について調べている。著者によれば、他者との関係は、およそ5人で構成される「最も親しい友達」のグループ、それを含めた15人の「親友」グループ、次に50人の「良好な友達」グループ、最後に150人の「ただの友達」グループというように、同心円状に広がる段階があるという。特別な関係を維持するのには時間と労力がかかる(各段階での友情を形成するには一緒に過ごすべき時間および接触頻度の目安があるとのこと)。このため、個人によってグループの人数に多少の違いがあるにしても、50人の「親友」を形成するようなことはできないという。新たに親友ができたならば、これまで親友グループの一人だった誰かが外側にはじき出されるのだ。

  加えて、人によって友人の数や質に差があるように見えるのはなぜか。外向的・内向的など性格によって友人の数や付き合い方に違いがある。性格の違いは関係維持のスタイルの差となる。すなわち、生物学的な認知能力や人間関係に投資できる量には限界があるため、関係の数の差は関係の質──浅さ・深さなど──の違いとなってくるという。友人関係は、育った環境の同質さ、ユーモアや音楽の好みなどの点で似た者同士であることが多い。さらに、男女で好ましい人間関係のスタイルが違うため、同性の友人のほうが多くなる傾向にある(例えば、男性は会話よりも共有した時間を重視し、かつ浅い人間関係に留まるとのこと)。以上のような議論を、著者が指揮した大規模調査やホルモンの変化を見る実験などを参照しながら展開している。

  以上。「親しさ」をめぐる社会的・生物学的な観察と考察をこれでもかと詰め込んだ内容で、紹介できなかった面白い話も多い(暴力的な男性の家系は子どもの数が多いとか)。個人的には親友(家族や血縁者も含む)が15人というのはちょっと多いかなあという気がしなくもないのだが、これは僕が将来早く死ぬということなのだろう。もう十分生きたか。
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