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学力・知能における下位16%のこどもたち

2019-09-22 17:57:57 | 読書ノート
朝比奈なを『ルポ 教育困難校』朝日新書, 朝日新聞出版, 2019.
宮口幸治『ケーキの切れない非行少年たち』新潮新書, 新潮社, 2019.

  低学力層について報告する二作。片方は一応普通に日常生活をおくっている高校生の話であり、一方は犯罪者の話なので、並べて紹介するのは前者に失礼なことなのかもしれない。だが、二つの書籍が提示する低学力≒低知能の目安がほぼ共通していたこともあって、記録しておきたくなった。

 『ルポ 教育困難校』は底辺高校に教師として勤めた経験のある著者によって書かれている。チャイムが鳴ってから生徒を席につかせるのまでに時間を取られる、トラブル対処に教員のエネルギーに割かれて教育どころではない、扱いにくい生徒は自主退学するように誘導する、などなどの実情が描かれている。巷間問題になっている「ブラック校則」なども、底辺高校では秩序維持のための現実的な対処方法なのである。おおよそ偏差値40ぐらいの高校が該当するようだ(ただし例外があることも紹介されている)。生徒の学力は下位16%の層ということになる。

 『ケーキの切れない非行少年たち』は少年院で法務技官として勤めた経験にある精神科医によって書かれている。ケーキを三等分することができないことを例に、非行少年の多くは認知機能に障害を抱えている、とする。このため、正常な認知機能を前提としたソーシャル・スキル・トレーニングは効果をもたない。少年院出所後も社会に適応できないのはそのせいではないか、と。したがってまず認知機能を鍛えるトレーニングを彼らに施すことが必要だ、と主張する。なお、非行少年のIQは85程度で、これまた下位16%となる。

 『ルポ 教育困難校』の著者は底辺高校にも現状では意義があるという。ただ、個人的には遅すぎるという気がする。習熟度別学級編成が偏差値別の高校振分けによって10代の後半になってやっと実施されている、という感じだ。小学校低学年での習熟度別学級編成には効果がないと言われているが、学力差が顕著になる小学校高学年では考えてみてもいいのかもしれない。また、低学力層のうちどの程度含まれているのかわからないものの、認知能力上の問題があるならば早い段階で発見されて対処されるべきだと感じる。
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