ひろの東本西走!?

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エル・ドラド(服部真澄)

2006-08-10 23:30:00 | 15:は行の作家

エル・ドラド(新潮文庫)
★★★★~★★★★☆’:80~85点

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juraさんのブログ:jura'file+++movie でアップされていた「エル・ドラド」。途中、家族旅行に出かけたりして読み方がやや散漫になってしまったのですが、本日読了。面白かったです。

書名は単行本のときは「GMO」だったそうですが、「エル・ドラド」(南米に存在すると言われた黄金郷のこと)の方が色んな意味を含んでいるし、今も昔も変わらない人々の狂騒ぶりも想像させてずっと良いと思った。

【注意:以下、ネタバレあり】

GMO(遺伝子組み換え作物)自体が実は持っている底知れぬ恐ろしさ、それを悪用すれば生態系を、ひいては世界を動かし支配し、その命運を握ることも可能になる怖さ・不気味さ。その”麻薬のような”怪しい魅力に人々が取り憑かれ翻弄される内容に唸った。

遺伝子組み換えトウモロコシといった言葉は聞いていたが、それが何のためのものなのか、何をどうしているのか等について無知だったことを思い知らされた。それにしてもGM昆虫まであるとは!

題材的には、”超弩級国際サスペンス”といえる内容だろうが、読んでいる最中はあまりそういった感じは受けなかったように思う。作者によっては、あるいは書き方によっては、波瀾万丈、ハラハラドキドキのどんでん返しの連続といった冒険小説風に仕上げることも可能だったと思うが、服部真澄さんは敢えて(?)静かな筆致とされたようだ。しかし、静かなタッチゆえにかえってGMOの怖さやそれを利用しようとする人々・国家の凄まじさ、翻っておぞましさ・おろかさが見事に描き出されていたと思う。この静かなスタイルは若干迫力不足ともとらえられるが、ノンフィクション的な味わいを持たせる意味も含めて私には好ましく感じられた。また、物語のスケールの割には登場人物が少な目で理解しやすかったと思う。

また、この物語は評論家・北上次郎風に書くと、「かつて気鋭の科学ジャーナリストとして活躍しながらも(巨額のインサイダー取引がらみのスクープで)堕ちてしまった失意の翻訳家・蓮尾一生の(ちょっとホロ苦い)復活物語でもあるのだ」となるか。ちょっと物足りないなと思ったのは、冒頭で抗争に巻き込まれて殺された、蓮尾の唯一の友・アダム少年の描き方。後半でも彼のことが少しは出てくるのだが、非常に聡明で印象的な少年だったので、彼のことをもっと深く描いて欲しかった。 蓮尾の担当編集者である三角乃梨、不思議な笑顔と優しさを持つ私立探偵のアール・カッツ、共に良し。若くして伝説的な科学ジャーナリスト:レックス・ウォルシュがあることに関与することについては、薄々そういうことになるんだろうなと想像していたので、それに対しての驚きは小さめだった。

某組織(!)によって飲まされた自白剤の恐怖。現地での案内人、ホセ・ルイス・比嘉の正体は? こあたりのスリル感・サスペンス感は見事だった。

********************* Amazonより *********************
内容(「BOOK」データベースより)
食料の生産と流通を寡占し、世界的大産業に成長した「アグリビジネス」。彼らの次の狙いは新種のGMO(遺伝子組み換え作物)を駆使し、食料のみならず地球のあらゆる生態系を支配することだ―。アグリビジネスの陰謀を暴く原稿の一部を遺して消息を絶った、天才科学ジャーナリスト、レックス・ウォルシュ。翻訳家の蓮尾一生は、彼の足跡を追って南米ボリヴィアへ飛ぶ。
内容(「BOOK」データベースより)
密林の奥に開発されたワイナリー。コカインの原料作物「コカノキ」に蔓延する病害。行方不明となった何人ものサイエンティスト。ボリヴィアの奥地で進行する極秘プロジェクトに迫る蓮尾一生は、ついに驚愕の真実に直面する。人間が神に逆らって創造したGMO(遺伝子組み換え作物)がもたらす大いなる厄災を予見し、地球の未来に警鐘を鳴らす、超弩級国際サスペンス。
内容(「BOOK」データベースより)
除草剤でも枯れないコーンや大豆。カレイの遺伝子を持つジャガイモ。しかし、それはほんの「序曲」に過ぎなかった―。“神の手”を自在に操る巨大企業とワインビジネスの闇、優雅なるセレブたちの光と翳、北米アナポリスの放火殺人と南米ボリヴィアの奥地。すべての仄かな点と線が結びついた時、醜悪なる「真実」が現れる。

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2 コメント

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ひろ009さま (jura)
2006-08-12 00:10:12
ひろ009さま
TB&ご紹介ありがとうございます。
小説、楽しんで読まれたようで、ほっとしました。
しっかりと感想を言葉にされてて尊敬です!
確かにアダムは、とってつけたような・・・感じが残りましたね。
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☆juraさんへ (ひろ009)
2006-08-12 09:59:16
☆juraさんへ

思いつくまま書いたので、感想のような、そうでもないような脈絡のない文章
なのですよ(^_^;
いつも、あらすじだけにならないようには注意してますが。

アダム少年はとてもいい子だったようなので、あのような描かれ方のままなのは気になりました。

素晴らしい作品を教えてくれてありがとね。
juraさんのブログにもコメントを残したつもりだったのですが、確認ボタンだけ押して送信ボタンを押し忘れたみたいでした。ゴメンね。

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