ひろの東本西走!?

読書、音楽、映画、建築、まち歩き、ランニング、山歩き、サッカー、グルメ? など好きなことがいっぱい!

幻夜(東野圭吾)

2006-11-09 22:10:00 | 15:は行の作家

Genya1_1 幻夜(集英社)
★★★★~★★★★☆’:80~85点

またまたですが、読書仲間のそらさん(日だまりで読書)も感想を書いておられる「幻夜」を読了しました。

この作品は、かの衝撃作「白夜行」とは双子の関係にあるとか、続編の関係にあると言われているものです。上下2段組み524ページの長編を一気に読ませる東野圭吾さんの手腕はさすがでしたが、衝撃度・感銘度は「白夜行」の方が上と感じました。写真が重要なポイントとなってくる中盤あたりは非常に面白く、ワクワク(ゾクゾクか?)しながら読んだのですが、終盤になるにつれて物語は深みを増すというよりも展開が早くなり、水原雅也と加藤刑事が遂に相対する場面など「え?こうなるの?」といった感じで拍子抜け。まあ、「白夜行」からもこれは想像できるといえば想像できたのですが、それ以上のラストを期待していただけに惜しいなあというのが本音でした。

「白夜行」と比較してみると、確かに、とある事件をきっかけに悪に手を染めてどんどん堕ちていく男女(女が主で男が従--雅也は桐原亮司以上に可哀想)、たった一人になっても執拗に追いかける刑事、風と共に去りぬ、スカーレット・オハラ、ブティック「ホワイト・ナイト(白夜)」、太陽・・・といった内容・フレーズなど明らかに「白夜行」を意識させますが、描き方はかなり異なっていました。

「白夜行」は最後まで主人公二人の真の気持ち・考えが明らかにされない、二人の会話のやりとりも示されない、いったい誰が何をどうやったのかの具体的手口も殆ど明らかにされない・・・全て読者が類推するのみ。そういった不気味さ・不可解さがあったゆえか、底知れない情念というか暗い・黒いエネルギーを感じたのですが、本作では、殆ど全てが提示されます。ただ1点、新海美冬の過去と本当の気持ちのみが最後まで謎に包まれたままで。これはこれで怖かったですが・・・。

読んでいる途中、宮部みゆきさんの作品との共通点を感じました。ある人物になりすますという点で「火車」の新城喬子(?)を、考えること・やること・やらせることのエゲツなさ(非人間的な無茶苦茶さ)という点で「模倣犯」のピースを彷彿とさせます。

「白夜行」は原作と全く異なった描き方をしたTVの影響もあって、唐沢雪穂がそう悪女でもないようにも思えたのですが(綾瀬はるかさんの演技や人柄もあるかな?)、新海美冬は全く救いようのない人物・生き方だと思ってしまいました。

新海美冬とは一体誰なのか。彼女の生い立ちは? これまでにどんな人生をおくってき
たのか。彼女が生きている・生きていく目的は何か?彼女にとって幸せとは何か?彼女は真に幸せを感じることがあるのか?美冬は人間として精神的に破綻している?お金や地位や美貌だけを追い求めているとも思えないのですが・・・。頭が良く綺麗なのに、美冬がこのような生き方しかできない理由は?など、色々と考えさせられる凄い作品ではありました。東野圭吾さんはよくぞこんな人物を考えついたものだと思います。しかし、もう少し心の闇の部分を解き明かしてほしかったなあ。

また、もう一つの疑問としては、整形手術を繰り返す・繰り返してきたとしても、かなり有名になった人物がこれほどスパッと過去を隠して、過去を断ち切って生きることができるものだろうかということでした。

「白夜行」と双子の関係にあるとは思いますが、私は続編とはとらえませんでしたね。しかし、2作合わせて非常に実験的というか野心的な作品でした。

**************** Amazonより ****************
1995年、西宮。父の通夜の翌朝起きた未曾有の大地震。狂騒の中、男と女は出会った。美しく冷徹なヒロインと、彼女の意のままに動く男。女の過去に疑念を持つ刑事。あの『白夜行』の衝撃が蘇る!
********************************************

P.S.その他参考ブログ(11/12追加)

 ◎ぐれえすさんの”お犬と本のある暮らし”
 ◎ゆきうさぎさんの♪ウサギ・絵・花・本・写真・・・♪
 ※お二方の記事、見つけることができていませんでした。失礼!