「罪を憎んで人を憎まず」は竹富町にはないのか




 「スポンジのように何でも吸収する子どもには、尖閣や国防や愛国心をあおるのではなく、八重山であった悲しい歴史を通じ、平和を考える教育が必要」と感じ「二度と子どもたちを犠牲にしない」という思いと戦争への怒りを理由に、八重山採択地区協議会の採択した育鵬社の教科書を採択しないで東京書籍の教科書を採択したことは法律上なんの問題もない。
 問題なのは八重山地区の無償給与教科書を八重山採択地区協議会で育鵬社の教科書と決めたのに、東京書籍の教科書も無償給与しろと国に要求したことである。
 無償給与教科書以外の教科書を無償給与することは法律違反だから国はやるはずがない。竹富町は慶田盛教育長の政治思想を優先して東京書籍の教科書を採用するのなら、竹富町が教科書代金を負担するのは当然だ。

 竹富町が育鵬社の教科書を拒否し、東京書籍の教科書を採択したのは明らかに政治思想が原因している。慶田盛教育長の戦争体験は戦争の一部である。戦争は国家の問題であり、戦争の原因、戦争の規模、戦争の過程、犠牲などを全体的に教えるのが教育の基本である。
 「八重山であった悲しい歴史」を教えるのはいいが、一部の戦争被害を教えるのでは教育とはいえない。なぜ戦争が起こったか、朝鮮戦争、ベトナム戦争、カンボジア内乱など子どもの視野を世界に広げる教育が大事だ。
 尖閣、中国、アジア問題はこれからの日本には重要な問題である。「尖閣で国防や愛国心をあおるのではなく」という理由で教えないのは間違っている。

 慶田盛教育長は「二度と子どもたちを犠牲にしない」と述べているが、八重山の悲しい出来事を教えることが「二度と子どもたちを犠牲にしない」にはならない。日本が軍国主義に戻ることはない。
日本全体をそして世界を見れば分かる。

 アフガン、イラクは民主主義国家になり、エジプト、リビア、チュニジアの市民革命は成功した。これから民主主義社会をつくっていく。ミャンマーも民主主義国家になった。シリアも市民運動が続いている。アジアでも韓国、台湾、フィリピン、カンボジアは民主主義国家になった。世界の流れは民主主義へと流れている。

 日本が軍国主義国家に戻ることはあり得ない。それどころか日本の民主化はわずかながら進んでいる。
 「八重山の悲しい出来事」にこだわりすぎると日本、世界の現実を知らない子どもを育てることになる。慶田盛教育長の自分の体験にこだわった教育は間違っている。八重山だけでなく、沖縄、日本、アジア、世界を知る教育をするべきだ。


 太平洋末期に島民を日本刀で脅し、マラリアの汚染地域に強制的に疎開させた山下虎雄軍曹が、1981年にひっそりと島を訪れた時に、「・・・戦前の軍国主義の亡霊を呼びもどすように来島したことについて、全住民は満身の怒りをこめて抗議する」と浦仲さんは抗議書を突きつけたという。
 戦後66年が過ぎた今も怒りは消えず、「島民の傷は一生消えない。戦争につながるものは島にいれさせない」と浦仲さんは述べている。

 浦仲さんは「恨みつらみ」を子や孫たちへ伝えるというのだろうか。それでは子や孫たちがかわいそうだ。
 なぜ山下虎雄軍曹は島を訪れたのか、「恨みつらみ」の強い浦仲さんはその理由を聞かかった。ただひたすら「恨みつらみ」を山下虎雄氏にぶつけた。山下虎雄氏が好き好んで島民を日本刀で脅し、マラリアの汚染地域に強制的に疎開させただろうか。山下虎雄氏も軍国主義の犠牲者ではなかったのか。
 戦前はみんな軍国主義教育を受けた。戦後の日本を牽引した多くの政治家や知識人も戦前は天皇崇拝者であった。山下虎雄氏もそのひとりだ。

 山下虎雄氏もどこか田舎に生まれ育った普通の人間であっただろう。赤紙で徴兵されて軍国主義を叩き込まれた若者のひとりだっただろう。戦争が終わり、戦争中の自分の行為を死ぬほど後悔したかもしれない。悔いても悔いても悔いきれない罪を背負った人間であると自分を責め続けたかもしれない。
 彼が懺悔をしたいのなら、懺悔をさせるべきだった。そして、山下虎雄氏と腹を割って話し合い、二度と軍国主義や戦争のやってこない国にするのをお互いに誓うべきであった。
もし、彼が悔いていなければ唾を吐けばいい。

 憎むべきは軍国主義であり戦争だ。人間ではない。66年を経ても直接手を下した人間を恨むのは間違っている。これでは軍国主義の本質を理解することができない。戦争の本質を理解することができない。

「罪を憎んで人を憎まず」という諺は竹富町にはないのか。
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