二グロ ニガー ニガストゥ


中学三年生の時の英語の先生は砂辺松一先生だった。砂辺先生は英語がペラペラだった。読谷村にはアメリカ人が多く住んでいたので、砂辺先生は時々アメリカ人を連れてきて英語の発音練習をさせた。

ある日若いアメリカ人を連れてきた。名前はジョンとしておこう。ジョンは白人で20歳そこそこの青年だった。金髪で青い目をしていた。身長は170センチくらいで高くなかった。ジーパンをつけラフな服装だった。ジョンは大勢の生徒の前に立つのは初めてのようで落ち着かなかった。私たちを見ては恥ずかしそうに下を向いたりしていた。

授業は英語の比較級の勉強だった。Tall高い tallerより高い tallest最高に高いの勉強だ。砂辺先生は単語の意味を説明し、比較級の意味と発音の仕方を説明をした後に、ジョンに比較級の発音をさせた。私たちはジョンの発音を聞きながら発音練習をした。2,3の単語を練習した後に、砂辺先生は、「ニグロ」の発音練習をさせた。砂辺先生は「ニグロ」は黒人のことであるが「ニガー」は黒人を差別する言葉であるとのことだった。砂辺先生はアメリカの実際の生活では比較級といっても単なる比較級としてだけ使われているのではなく、「ニガー」のように実際には差別の言葉として比較級が使われている場合もあると説明した。

砂辺先生はジョンに「ニグロ」の比較級、最上級の発音を私たちに教えるように話した。するとジョンは驚いた顔をした。そして、砂辺先生に訴えるようなしぐさで話した。ジョンはニガーは黒人差別の言葉であり、声に出したくないというようなことを砂辺先生に言ったと思う。そのことを承知の上で発音練習をさせようとしていた砂辺先生はジョンに発音するように説得した。嫌がっていたジョンだったが砂辺先生の説得に負けてニグロの比較級最上級の発音を私たちに教えることを承知した。
ジョンが「ニグロ」と言うと私たちは「ニグロ」と言った。砂辺先生とジョンの話し合いでジョンが「ニガー」を口にしたくないということが分かった私たちはおもしろがって、ジョンが弱々しく「ニガー」と言った後に、いつもより大きい声で「ニガー」と発音した。すると若いアメリカ人の顔がみるみるうちに真っ赤になった。若いアメリカ人は下を向いたり横を向いたり砂辺先生を向いたりと落ち着きを失っていた。砂辺先生が冷静な声で二言三言いうと、ジョンは観念したように発音練習を続けた。
私は、私たちが「ニガー」と大声を出しただけで若いアメリカ人の顔が真っ赤になっていったのを今でも覚えている。
ジョンは数回ほど私たちに発音を教えてくれた。ジョンはシャイなアメリカ青年だった。

ジョンとはこれっきりだったが、私はジョンを思わぬことで新聞で見ることになる。あれから5,6年たった頃、ジョンが脱走兵として夕刊紙に顔写真つきで載っていたのだ。ジョンはベトナム戦争反対を訴えて軍隊から脱走したとのことだった。その後のジョンについては知らない。

注 にぐろの最上級はWEBで見つけることができなかったのでカタカナ表記にした。


訂正
「「NIGGER」を比較級の用例というのは初耳で、何か変な気がします。単純な名詞だと思います。この先生の勘違いではないでしょうか」北谷孝さん。

私の勘違いだと思います。砂辺先生がニグロは黒人のことだが、ニガーは黒人を蔑視する言葉であると説明しのをはっきりと覚えていますが、それが比較級の勉強であったかどうかははっはりしません。私が勝手にそう思い込んでいる可能性が高いです。

若いアメリカ人がニガーと言うのは勘弁してくれと砂辺先生に頼んでいる様子や砂辺先生が真剣な表情で表情でジョンを説得し、ジョンが仕方なさそうに砂辺先生の説得に応じている様子は覚えています。
そして、私たちが大きな声で「ニガー」と言った時に若いアメリカ人が顔を真っ赤にしてとても困っていた様子は今でも覚えています。
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