なぜ裁判を起こしたのか・八重山教科書問題

八重山教科書問題裁判を起こした人のブログがあることを知ったのでブログを覗いてみた。とても丁寧で説得力のある文章はかなり鍛えられた人が書いたとしか思えない。親切丁寧で正直に説明しているように見えるが、肝心なところを上手に本当の内容を折り曲げて、もっともらしく嘘の説明をしている。しかも、法律的にまずいところはうまく隠している。
八重山教科書問題裁判を起こした理由は裁判で勝つより、裁判をしながら集会やブログなどて政治運動をするのが目的だろう。

一部分であるが引用して、その文章の嘘部分を説明する。

「八重山では、八重山採択地区協議会が、その諮問機関に当たります。それで、採択権のある石垣市、竹富町、与那国町の各教育委員会は、八重山採択地区協議会に諮問します。(審議調査してもらい意見を求める)八重山採択地区協議会は、調査員(各教科ごと3人の専門の教員が選ばれ、調査研究をする)を置き、共同調査研究を行います。(H24年度使用教科書の採択についての中に示されるH14年文科省の通知に明記)
そして、八重山採択地区協議会は、審議調査し、教科書を選定し、
各教育委員会に答申します。(審議調査した意見を報告)
その答申に基づき、各教育委員会において、審議し、各教育委員会ごとに教科書を採択します。
採択の権限のある教育委員会においては採択、
諮問機関である協議会においては選定
というふうに用語を使い分けます。(石垣市学校指導課長、指導主事の両方とも、同じように教えてくださいました。)
このような用語の使い分けでも、採択権限と諮問機関の役割の違いが、わかるようになっています。
地教法第23条第6項で示されている通り、
採択の権限が、市町村教育委員会にあることから、
八重山採択地区協議会の答申と異なった採択をした竹富町教育委員会は、違法ではありません」

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説明は丁寧であり、やさしさがにじみ出ている文章だから、ほとんどの人は文章の内容を信用するだろう。このような文章は法律に精通し、書くのを鍛錬した人にしか書けない。無償化法と地方教育行政法について精通していない人なら、上の文章を完全に信用するだろう。

八重山採択地区協議会は諮問機関ではない。八重山採択地区協議会は国が無償給与する教科書を採択する協議会であり、八重山採択地区協議会が採択した教科書だけが国が無償給与する教科書となる。だから、八重山採択地区協議会で採択した育鵬社の教科書以外の教科書を採択した竹富町には文科省が無償給付することは絶対にない。もし、文科省が育鵬社の教科書以外の教科書を無償給与したら文科省が無償措置法を犯したことになる。

ブログでは採択権限と諮問機関の用語の違いを丁寧に説明し、役割の違いを述べて八重山採択地区協議会は諮問機関で教育委員会は採択機関であると説明している。このように説明するとほとんどの人が納得するだろう。しかし、八重山採択地区協議会は国が無償給与する教科書を採択する機関であり、諮問機関ではない。一方、教育委員会は地方教育行政法に従って学校で使用する教科書を採択する機関である。

八重山採択地区業議会は国が無償給付する教科書を採択することはできるが、三市町の学校で使用する教科書を採択することはできない。石垣市の教育委員会は石垣市の学校で使用する教科書を採択することはできるが国が無償給与する教科書を採択することはできないし、竹富町と与那国町で使用する教科書を採択することはできない。同様に竹富町、与那国町の教育委員会もそれぞれの学校で使用する教科書を採択することはできるが国が無償給与する教科書を採択することはできないし、他の市町の学校で使用する教科書を採択することもできない。八重山採択地区協議会と各教育委員会は採択機関であり、ただ採択する内容が違うだけだ。

ブログは筋の通った説明をしてきて、「採択の権限が、市町村教育委員会にあることから、八重山採択地区協議会の答申と異なった採択をした竹富町教育委員会は、違法ではありません」と八重山採択地区協議会が諮問機関だから、竹富町教育委員会が八重山採択地区協議会の採択した教科書と異なった採択をしたのは違法ではないと説明している。その説明は間違っている。

竹富町教育委員会が違法でない理由は八重山採択地区協議会が諮問機関だからではない。八重山採択地区協議会は国が無償給付する教科書を採択する協議会であって、市町で使用する教科書を決める機関ではないからだ。八重山採択地区協議会は採択した教科書を市町で使用するように強制することはできない。強制すれば地方教育行政法の教科書を自由に採択する権利を犯してしまうからだ。

無償措置法は国会で審議した法律であり地方教育行政に違反するような条例を導入するわけにはいかない。無償措置法に市町村の学校で使用することを強制する条例を入れてしまうと、憲法が保障している選択自由の権利を犯してしまうからだ。国会は無償措置法に地区の市町村教が使用する科書使用を強制する条例を入れるわけにはいかなかった。
もし、無償措置法で採択した教科書を地区の市町村で使用するように強制する条例を導入しようとしたら、地方教育行政法も改定しなければならないし、憲法に保証する選択の自由を侵してはいけないかという問題や、地方自治の権利を犯してしまうのではないかという問題までおよんでくる。無償措置法に強制力を持たす条例を加えるのは大変な作業になる。反対する議員も多いだろう。簡単に無償措置法に強制力を持たす条例を加えることはできない。

革新系の人たちが八重山採択地区協議会は諮問機関であると言うようになったのは、竹富町が東京書籍の教科書を採択したことに対して文科省が「違反」ではないと答弁したことがきっかけだった。「八重山採択地区協議会の採択が市町に対して拘束力がない。拘束力がないから八重山採択地区協議会は諮問機関である」という理屈をつくったのだ。新聞で見る限りではあるが、最初に八重山採択地区協議会は諮問機関であると主張したのは革新系の弁護士だった。

革新系の人たちやブログを掲載している人は、絶対に無償措置法が国が無償給与する教科書を採択するための法律であるとは言わないし、八重山採択地区協議会は国が無償給与する教科書を採択する機関であるとは言わない。それを認めると、9月8日の全体協議は有効でありしかも拘束力あるという主張が崩れるからだ。
彼らは9月8日の全体協議は無償措置法にのっとった協議であり、全体協議には拘束力があるから三市町は東京書籍の教科書を採択するべきだと主張している。県教育庁も同じ主張をしている。

無償措置法には拘束力はない。国が無償給与する教科書を採択するだけだ。八重山採択協議会が採択した育鵬社の教科書を採択した市町には国は育鵬社の教科書を無償給与する。育鵬社以外の教科書を採択した市町は国が育鵬社の教科書を無償給与するのを断ったことになるから国は育鵬社の教科書を無償給与することができない。だから、無償給与をしない。これで無償措置法についての問題は終わりである。

地方教育行政法は無償措置法と違って強制力がある。地方教育行政法では市町村の学校で使用する教科書を教育委員会で採択して文科省に報告するのを義務化している。もし、国に報告しなかったら国が教科書を採択して学校に給与し、教育委員を罰することになる。

無償措置法と地方教育行政法の違いは、採択と諮問の違いではない。採択内容の違いだ。
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