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普天間飛行場問題をソ連とリトアニアの関係と結び付けて話すのは、さすが元ソ連に派遣された高級官僚佐藤優氏だと思う。ただ、沖縄と日本政府とはスケールが違いすぎるなあと思ってしまう。

ソ連は他国を武力で支配する社会主義であり、民主化を求めると徹底して弾圧した。多くの国がソ連から独立しようとしたがソ連軍に弾圧されて民主化も独立もできなかった。しかし、そのようなソ連は経済が衰え次第に国力が弱くなっていった。ゴルバチョフ時代のソ連は崩壊寸前だった。ゴルバチョフはベレストロイカ政策で民主化と経済復興をめざしたが経済復興は成功しなかった。情報公開、民主化を推進しようとしているゴルバチョフを共産党の旧守旧派が軟禁してクーデターを起こすが失敗する。軟禁を解かれたゴルバチョフはソ連共産党の活動停止を指示した。ソ連の崩壊の始まりである。
このソ連の衰退、ゴルバチョフの民主化という大きな流れの中でリトアニアの独立があったのであり、「ゴルバチョフがリトアニアの人の声に真摯に耳を傾け、中央政府の差別政策を是正していれば、リトアニアがソ連にとどまる可能性が十分あった」という佐藤氏の説明は欺瞞である。

「中央政府の差別政策」はソ連の基礎を築いたスターリン時代からずっとつづいているソ連の政策である。中央政府に有利な協定を結び搾取するやり方がスターリンが築いた社会主義であり、ソ連に組み込まれた国々は中央政府の圧政に苦しめられた。ソ連が、「中央政府の差別政策」を解くということはソ連がソ連でなくなり、ソ連が崩壊するのと同じことを意味する。
リトアニアの独立はソ連支配体制からの脱却であり、ゴルバチョフがリトアニア人の声に真摯に耳を傾けようがリトアニアは独立していた。

「バルト三国の独立については、東欧諸国とは違いソビエト連邦軍を投入し武力で鎮圧する立場を取った。同時にゴルバチョフがこれらの国に入って市民と対話しようと試みるも、ソビエト連邦軍の介入によって逆に独立感情が高揚。結局リトアニアが1991年3月に、エストニアとラトビアは8・19クーデターの翌日8月20日に独立を宣言し、従来の15共和国による連邦体制は崩壊した」

バルト三国をソ連軍が武力弾圧に失敗したのはソ連の衰退を象徴している。

佐藤氏は日本政府の沖縄に対する構造差別とソ連体制の中央政府の差別政策を重ね合わせているが、内容が全然ちがう。
ソ連の中央政府の差別政策は、中央政府による共和国への不平等条約による搾取であり弾圧であった。それに比べて沖縄の構造差別とは米軍基地が本土との面積比で沖縄に集中していることである。法律は本土も沖縄も同じ法律が適用されている。経済的には米軍基地があるということでセイフは交付税を優遇している。軍用地や雇用など基地経済は沖縄の経済に大きく貢献している。自衛隊も軍隊である。自衛隊、米軍をひとつの軍隊として考えると必ずしも軍隊が沖縄だけに集中しているとはいえない。佐藤氏のいう構造的差別は偏った考えである。

佐藤氏は「県外移設以外の選択偽はない」と述べているが、佐藤氏ほどの経験と見識のある人が「県外移設」ができると信じているとは考えられない。佐藤氏は日本のすみずみまで知り尽くしている。普天間飛行場を移設することができる地理的な場所は知っているはずだ。移設可能な場所に住んでいる住民が普天間飛行場を受け入れるかどうかを佐藤氏なら数秒もあれば推理できるはずだ。普天間飛行場を受け入れる住民は本土にはいない。そういう判断以外にない。

ウチナー評論は沖縄のマスコミを喜ばすために書いているのだろう。商売商売。
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