祖国復帰運動をアホらしいと思っていた高校生の私 今も思っている

祖国復帰運動をアホらしいと思っていた高校生の私 今も思っている
 
1962年にキューバ危機があった。中学一年生の時である。ケネディ大統領はソ連との核戦争を辞さないと宣言した。核戦争になればカデナ飛行場に核ミサイルが投下され私たちは死ぬと私は信じていた。核戦争を心配していた私は学校に行く前にラジオニュースを聞き、学校から帰るとラジオニュウースを聞く毎日だった。

キューバ危機
、1962年10月から11月にかけて、旧ソ連がキューバに核ミサイル基地を建設していることが発覚、アメリカ合衆国がカリブ海でキューバの海上封鎖を実施し、米ソ間の緊張が高まり、核戦争寸前まで達した一連の出来事のこと。

 小学3年生の時、広島と長崎に原子爆弾というすごい爆弾が投下され、一瞬のうちに何十万人の人が死んだということを聞いた。原子爆弾の開発は進み、原子爆弾一発で沖縄の人はみんな死ぬと聞かされた。カデナ弾薬庫に原子爆弾を貯蔵しているという噂があった。カデナ弾薬庫の核爆弾貯蔵は事実であった。読谷村の残波岬にはミサイル基地があり、ミサイルを設置していた。ミサイルは何度も見た。カデナ飛行場の近くに住んでいる私たちにとって核戦争は身近なものだった。

 米国とソ連が核戦争をすればカデナ飛行場に核ミサイルが飛んでくると私は信じていたからキューバ危機に注目していた。キューバ危機が回避された時はほっとした。危機を回避したのはケネディ大統領の勇気ある決断があったからだと信じた私にとってケネディ大統領はヒーロヒーであった。

 高校2年生の時に読谷飛行場でパラシュート投下されたトレーラーが住宅地に落ちた。落ちたトレーラーの下敷きになり少女が圧死した。
読谷飛行場は米軍がパラシュート訓練をする飛行場であった。学校に行く途中に読谷飛行場を一望できる箇所があり、飛行機から次々とパラシュートが開いていく様子は映画を見ているようだった。パラシュートは風に流されやすい、降下場所から大きく外れる時がある。そのせいでトレーラーのパラシュートは大きく外れて少女の住む親志に落下したのだ。

隆子ちゃん事件(1965/読谷村)-トレーラー投下による少女圧殺
 1965(昭和40)年6月、棚原隆子ちゃん(10歳)が米軍機から投下されたトレーラーの下敷きになり死亡しました。
 1960年から、読谷飛行場をターゲットエリアとした米軍空挺訓練(パラシュートによる物資投下訓練)が実施されるようになり、それにともなって基地被害が続発し、ついに死者を出したのです。
 投下されたパラシュートは、度々ターゲットを外れ、民間地域の住宅や庭先、道路、畑などに落下し、多くの被害を出していましたが、自宅近くで隆子ちゃんが圧殺された事件は、県民に大きな衝撃を与え、村民を中心に激しい抗議が行われました。
           読谷村資料館
 私は隆子ちゃんの死は事故であり、隆子ちゃんの死を理由に米軍を非難する気はなかった。パラシュート訓練を中止させるべきという考えはなかった。

 キューバ危機以後、なぜ戦争をするのか、核戦争は本当に起こるのかについて考えるようになっていた。高校生の時、沖縄の米軍はベトナム戦争をやっていた。だから、パラシュート訓練をやるのは当然であると考えていた。隆子ちゃんの死は事故であるから米軍は事故をなくす努力をするべきであって訓練を止める必要はないというのが私の考えだった。
 喜納小学校で全島抗議集会があった。抗議集会にはクラスで参加することを決めていたので隆子ちゃんの死への抗議集会に参加した。参加はしたが集会の演説には賛同しなかった。
 集会の帰りに歩いていると琉大生が私に近づいて隆子ちゃんを圧殺した米軍を批判し、米軍は沖縄から撤去するべきであると話した。私は彼の話に頷くことはできなかった。沖縄問題の根源は米軍にあり、祖国復帰して全ての米軍基地を撤去すれば沖縄は幸せになるというのが琉大生の主張であった。彼は得意満面に私を納得させようと話し続けた。私は琉大生の認識の浅さに呆れていた。こういう連中が米軍基地撤去、祖国復帰を高らかに主張している。アホらしいと思っていた。

 北朝鮮VS南朝鮮、中国VS台湾は緊張状態であり、戦争危機が続いていた。フィリピンもゲリラが政府と戦争していた。アジアのほとんどの政権は軍事政権であった。民主主義国家は日本以外はひとつもなかった。米軍だけが民主主義国家の軍隊であった。もし、沖縄から米軍が撤去すれば沖縄はアジアの軍事政権の国に襲われる可能性がある。
 ベトナム戦争で米軍が敗北した時にベトコンは撤退した米軍を沖縄まで追ってきて沖縄が戦場になるかどうかを考えたこともあった私である。多分、沖縄までは追ってくることはないだろうというのが結論だった。

 毛沢東軍に敗北した蒋介石が台湾に逃げて、台湾の原住民を弾圧し蒋介石軍が支配した。米軍が駐留していなければ、沖縄はアジアの武装したゲリラに侵略されて台湾のようになる可能性がある。100人くらいの武装したゲリラであれば非武装の沖縄を支配することはできる。

「米軍が居なくなったらアジアから軍隊が侵略して沖縄は支配される」
と私は琉大生に言った。平和憲法の日本に復帰することを強調していたのが祖国復帰運動であった。憲法は軍隊を否定している、自衛隊は軍隊であるから廃止するべきであると主張していたのが祖国復帰運動だった。でも琉大生は自衛隊で守ると言った。高校生だから何も知らないだろうと私をバカにしているのかと思いながら、
「自衛隊は軍隊であるし、日本の憲法は自衛隊を認めていないだろう」と言った。意外な私の反論に困った琉大生であった。少しの間黙っていたが、苦し紛れに、
「人民解放軍で守る」と言った。
「人民解放軍も軍隊だ」というと、琉大生は軍隊ではないと言った。
「解放軍は自衛隊とは違う。軍隊ではない」と琉大生は言い張った。解放軍は軍隊なのかでないのかで平行線になったまま琉大生とは別れた。
 
 共産党は米国を資本主義国家という。絶対に議会制民主主義国家とは言わない。自民党が政権を握っている日本も資本主義国家という。労働者を搾取するのが資本家であり資本主義国家とは労働者を搾取する国家であるというのが共産党、左翼の理論である。だから軍隊は労働者を搾取するために存在している。それが琉大生のいう軍隊である。
人民解放軍は資本家の搾取から労働者を解放する軍隊である。資本主義の軍隊とは違う。琉大生は「資本主義の軍隊ではない」と言うべきことを「軍隊ではない」と言ったのである。米軍も人民解放軍も軍隊であることに違いはない。琉大生の人民解放軍論は屁理屈でしかない。

 隆子ちゃんの事故死を米軍基地撤去、祖国復帰運動に利用する連中を私は受け入れることができなかった。彼らは少女の死を全然悲しんでいない。自分たちの政治運動に利用しているだけだと私は思った。

 祖国復帰すれば生活が豊かになるというのも祖国復帰運動で強調していたことである。でも、大ヒットした歌謡曲「ガード下の靴磨き」は貧しさを歌っている。戦後の日本の貧しさを描いた歌や映画は多かった。日本の現実を隠して本土はユートピアてあるように話すのが祖国復帰運動家であると私は思った。

 母に戦前の生活の様子を何度も聞いた。父の兄弟の長男は子供の時に死んだという。母の二人の兄も死んだという。戦前は生活も医療も貧しく多くの子供が死んだということを知った。
 「女は学校を出てもなにも役に立たない」と言って祖父は母を学校に通わさないで畑仕事を手伝わしたという。戦後生まれの私には信じられない話だった。
 私たちは幼稚園は公民館に通い。小学一年生から中学までは義務教育として学校に通った。小学生の卒業写真を見て驚くのは制服を着ていることである。小学校の時は私服で通っていたが卒業式だけは制服を着けていたのである。中学生になると制服だった。
 沖縄には高校はあるし、琉球大学、沖縄大学、国際大学もあった。本土と同じ沖縄だから祖国復帰しても学校に大きな変化があるとは思えなかった。祖国復帰しても生活、学校などが大きく発展することはないと私は考えていた。

戦争の多いアジァの現実を見れば祖国復帰しても米軍基地が撤去されることはないと私は思っていた。だから、祖国復帰しても大きな変化はないし、祖国復帰運動が強調するほどに豊かになることはないと思っていた。
 祖国復帰運動はアジア、沖縄のシビアな現実を見るのではなく、バラ色の祖国復帰を頭で描いている。復帰運動は観念の夢を描くのが好きな人たちの想像であり、宗教のようなものであると私は思っていた。

 沖縄が祖国復帰した原因はベトナム戦争にある。ベトナム戦争で米政府は莫大な予算を使った。ベトナム戦争に予算を使えなくなったので米国はベトナム戦争から撤退したのである。米国はベトナム戦争だけでなく沖縄の米軍基地を維持することもできなくなった。米国はカデナ飛行場などの主要な基地以外は撤去する計画を立てた。米国の計画に困ったのが日本政府だった。ソ連・中国と対峙している日本にとって沖縄の米軍基地の撤退は困る。日本政府は米軍基地を撤退させないために維持費を肩代わりすることにした。日本の維持費肩代わりによる米軍基地維持を米国は合意した。日米の合意で沖縄を祖国復帰させたのである。米軍の従業員や維持費を払っているのは日本政府である。これが祖国復帰の真相である。
このことは新聞に詳しく掲載されていた。1972年の祖国復帰に祖国復帰運動は全然貢献していない。祖国復帰の真実を故意に隠しているのが復帰運動を推進してきた連中である。
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