唐松林の中に小屋を建て、晴れた日には畑を耕し雨の日にはセロを弾いて暮したい、そんな郷秋の気ままな独り言。
郷秋<Gauche>の独り言
ニコンに提案 ―FXのノンレフレックスを作りましょう―
カメラ好きの間では、このところ、ソニーがフルフレームのNEXを出すのではないかとの噂でもちきりである。果たしてフルフレームのNEXが登場するや否や、ポイントはNEX用のEマウントでフルフレームのイメージサークルを確保できるかと云う事である。
Eマウントの口径は46.1mm(一部に58.9mmと報じられているが、キヤノンのEFマウントでさえ54mmだから58.9mmは明らかな誤り。58.9mmはマウント基部の外径かもしれない)で、ニコンFマウントの44mmよりも大きいから、マウントの口径からはフルサイズのイメージセンサーも可能なように思われるが、問題は18mmしかないフランジバックの方だろう。
一眼レフの場合にはレンズの後ろ玉とイメージセンサーの間にミラーボックスがあるからノンレフレックスの3倍近い45mm程度のフランジバックが必要となる。ノンレフレックスの場合、おそらくは20mm程度のフランジバックでフルサイズセンサーのための十分なイメージサークルを確保できるレンズを設計しないとならないことになるが、SLR以前のレンジファインダー時代のレンズ設計をそのままデジタル方式に応用できるものなのか、レンズの設計者に是非ともお聞きしたいものである。
家電メーカーが作るカメラにはまったくと云って良い程興味が無い郷秋<Gauche>だが、先の「ソニーがフルフレームのNEXを出す?」には食指が動いた。別にソニーのカメラを買おうと云うのではない。興味を持ったのは、ニコンがフルフレーム(ニコン云うところのFXフォーマット)のノンレフレックスを作ったらどうなるかなぁと思ったからである。
ニコンが作るとなれば、マウントはもちろん伝統の「F」である。今となってはSLR用としては最小のFマウントであり、これがためにレンズ設計者は随分と苦労して来たこととは思うけれど、ノンレフレックス用にFマウントを使用するとなれば今度はその小ささが生きて来るはず。つまり、フルフレームセンサーながら、より大きなEF(M)マウントを使用したキヤノンEOS Mよりも更にコンパクトなノンレフレックスボディを作ることが出来る可能性があるからだ。
フランジバックはSLR用の46.5mmに対してノンレフレックスなら20mmもあれば十分か。現行NIKKORレンズの為に厚み26.6mmのマウントアダプタを最初から織り込み、マウントアダプタ使用時も完全互換を保証する。ノンレフレックス用にはコンパクトなボディを生かせるスナップなどに適したパンケーキの広角~標準レンズを3本程度(24mm、35mm、50mm辺りか)と、マウントアダプタ兼用のテレコンバータ(×1.4と×2)を用意する。それ以外のレンズは現行のNIKKORレンズを使用する。
ご承知の通りNikon(ニコン)は既に「1」と呼ばれるノンレフレックスシステムを展開しているが、ソニーやキヤノンのAPS-Cセンサーを用いたもの、あるいはマイクロフォーサーズと比較するとイメージセンサーが小さいゆえのハンディは如何ともしがたい。しかし、小さいなら小さいなりの発展性はある訳で、「1」はその小ささを生かした開発を更に進める。
それと同時に、ニコンにとっては新しいカテゴリとなるフルサイズイメージセンサーを使ったノンレフレックスシステムを展開することになる訳だが、これが現実のものとなれば現行D一桁、D三桁シリーズのサブ機として、またスナップに使えるフルサイズ機として新たなマーケットを開拓することになる。コンパクトタイプのビギナーからプロまで、あらゆるニーズに対応できるニコンフルラインナップの完成である。
以上、暑くて眠れぬ「夏の夜の」、郷秋<Gauche>の夢である。くれぐれも真に受けないように。
用語解説
SLR: Single Lens Reflex camera、つまり一眼レフカメラの略語。頭にDigitalのDを付けてDSLRをすると、デジタル方式一眼レフカメラとなるが、実用品としての一眼レフが事実上すべてデジタル方式となった現在、郷秋<Gauche>は特に必要な場合を除き、デジタル方式であってもSLRを表記している。
ノンレフレックス:一般的に「ミラーレス一眼」と呼ばれることが多いカテゴリに対して、CIPA(一般社団法人カメラ映像機器工業会)が2012年から使いだした呼称。2月9日に同会代表理事会長の木村眞琴氏が「『ノンレフレックス』には、いわゆる『ミラーレス』、『コンパクトシステムカメラ』、レンズ交換式のレンジファインダーカメラ、カメラユニット交換式などを計上する。」ことを発表していることから、「コンパクトタイプ」が「ノンレフレックス」に含まれるとの誤解が一部にあるようだが、それまで「レンズ交換式」と「レンズ一体型」しかなかった分類から、「レンズ交換式」は、「一眼レフ」と「ノンレフレックス」に分けて調査結果が発表されるものであって、正しくは、所謂「コンデジ」は「ノンレフレックス」には含まれていない。
マウント:正確には「レンズマウント」。カメラボディ(本体)とレンズの接合機構。フォーサーズ及びマイクロフォーサーズ以外は、メーカーが独自にその規格を決めているためにマウントの互換性はない。かつては機械的は結合だけであったが、オートフォーカス化以降は電気的結合が不可欠になっている。ニコンのボディにキヤノンのレンズを装着することはできないので、最初にレンズ交換式カメラを購入する時にはカメラメーカーの選択(つまりはレンズマウントの選択)に熟慮を要する。使いたいカメラではなく、使いたいレンズによる選択が後悔しないマウント(メーカー)選びだと断言できる。
フランジバック:レンズマウントのマウント面からイメージセンサー(フィルム)までの距離。SLRの場合にはレンズとイメージセンサーの間にミラーボックス(レフレックス機構)が存在するから45mm程度(ライカ版の場合)必要だが、ノンレフレックスの場合にはその名の通りミラーボックスが存在しないので16~20mm程度である。
フォーカスバック:フランジバックと混同されることがあるが、フォーカスバックはレンズの後ろ玉からイメージセンサーまでの距離の事である。SLR普及前のレンジファインダーカメラにはミラーボックスが存在しないから、レンズマウント面からカメラボディ側にレンズが大きく突き出したレンズが多数存在した。この形式のレンズはレンズマウントの外側部分(カメラに装着した際に見えている部分)を小型にできる特徴がある。