お化けマンション(その5)

 お化けマンションは小田急線鶴川駅から歩いて15分程のところにある。旧住宅公団鶴川団地の東側に位置しているが、おそらくはこのマンションが民間のものであったため、1967年(昭和42)の鶴川団地建設と同時期の建設と思われるにもかかわらず、相互に連絡する道路はなかったはずである。

 小田急線と書いてきたが、正確には小田急電鉄小田原線と言い、新宿・小田原間82.5Kmを結ぶ私鉄で1927年(昭和2)4月1日に営業を開始している。現在の社名「小田急電鉄」は開業当時の「小田原急行鉄道」を短くしたものであるが、この名前からも想像できるように東京と当時有数の観光地であった箱根の玄関口にあたる小田原を結ぶ言わばリゾート行きの電車であった。

 鶴川駅は小田急線開業と同時に設置されている。当時はまったくの寒村である鶴川村に出来た駅ではあったが、公団鶴川団地を始めとして周辺の宅地化が進み、現在では一日平均の乗降客数は約65,000人と、小田急全駅中17位、急行通過駅の中では乗降客数第1位で、湘南台、経堂、小田原に次ぐ規模にまでなっている。新宿から快速急行に乗り新百合ヶ丘で各駅停車に乗り換えると、最短28分で鶴川駅に着く。

 どうした加減か、駅周辺に大規模な商業施設が出来ることもなく典型的な郊外のベッドタウンとして発達してきた鶴川駅周辺である。公団鶴川団地は駅から見ると北西の山の上に広がっており、一般的にはバスの利用が必要になる。そんななかで件のマンションは駅から徒歩15分ほどの小高い丘の上にあり、竣工していれば資産価値の高い人気のマンションとなったのではないかと思われる。

 しかし、建設は中断、取り壊しを経て敷地は公園様に整備され現在に至っている。かなり条件の悪い場所であっても買い上げて一戸建てやマンションを建設したバブル期にあってさえもこの場所は見向きもされないまま現在に至っているようである。



 風化しつつあるコンクリート壁の向こうに見えているのが鶴川団地。

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