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平安夢柔話

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藤原氏千年

2008-09-22 10:42:17 | 図書室1
 今回は、藤原氏の歴史をコンパクトにまとめた本を紹介します。

☆藤原氏千年
 著者=朧谷 寿 発行=講談社・講談社現代新書 価格=756円

本の内容
 始祖・鎌足から不比等、良房らをへて道長に至り、ついに満天に輝く望月となった藤原一族。権謀、栄華、零落、風雅、伝統…。今に伝わるその足跡をたどる。

[目次]
プロローグ
第1章 草創と権力奪取の時代―鎌足・不比等と藤原四家
第2章 躍進する藤原氏―三家の衰退と北家の進出
第3章 栄華への道―骨肉の争い
第4章 望月の人―道長と摂関絶頂期
第5章 欠けゆく望月―院政期の藤原諸流
第6章 家意識の確立―中・近世の公家
エピローグ

*画像は、私が所持している旧版の表紙です。現在では表紙のデザインが変わっています。本の内容は同じです。


 本の内容紹介や目次でおわかりのように、藤原氏の千数百年にわたる歴史を綴った歴史評論です。藤原鎌足が中大兄皇子とともに起こした大化の改新から始まり、二代目不比等の登場、藤原四家の成立、北家の躍進、他氏排斥、藤原北家内での骨肉の争い、道長の栄華、院政の始まりによって摂関家が衰退、五摂家の成立、更にはその後の戦国・江戸・明治の藤原氏についてまでをコンパクトにまとめた本です。

 私がこの本を初めて読んだのは6年ほど前のことですが、平安時代に関する専門書をほとんど読んでいなかった頃にもかかわらず、楽しく読むことができたのを思い出します。つまり、2008年8月15日に紹介した「平安王朝」と同じく、初心者にも親しみやすく読める本だと思います。平安時代に多くのスペースを割いていますので、「平安王朝」と合わせて読めば、平安時代により親しみを増すこと、間違いなしです。

 圧巻なのは「第3章 栄華への道」です。実頼と師輔の性格の違いの書き分けが面白く、安和の変が興味深く描かれていました。しかし、最も面白かったのは、兼通・兼家兄弟の対立を、兼通の立場で書いてあった部分でした。兼通は兼家に比べると器量がなかったため、陰謀を働かせるしか道がなかったようなのです。そのため、安子中宮に「摂関は兄弟の順に」という誓約書を書いてもらったりしたとか。その結果、兼通は、兼家の摂関を阻止したわけなのですよね。

 第4章の道長の話も面白かったです。この章で多く引用されていたのはやはり「小右記」。実資さんが存在感ありました。それと、若い頃に道長の側近として彰子の中宮冊立などに力を尽くし、道長と同日に世を去った藤原行成について、「つきあいのいい男」などと書かれていて、まじめな歴史評論なのにくすっと笑ってしまいました。

 更に忘れてはならないのが第6章とエピローグ。鎌倉時代以降の藤原氏がスポットを当てられることって、あまりないですよね。この本では、五摂家の成立はもちろん、風流人・三条西実隆や、地方に流れていった一条兼良など、室町・戦国時代の藤原氏の人たちが紹介されています。更には明治時代、公家が京都から東京に移ったあと、京都での留守居役を命じられた冷泉家(藤原定家の子孫)についての記述も興味深いです。伝統を守り続けている冷泉家についての記述は、藤原氏が現代でもしっかりと生き続けていることを再認識させられます。

 このように、藤原氏を追いながら、飛鳥時代から近現代までの歴史をたどることもできる1冊です。藤原氏の変化に富んだ歴史、ぜひ堪能してみて下さい。


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