平安夢柔話

いらっしゃいませ(^^)
管理人えりかの趣味のページ。歴史・平安文学・旅行記・音楽、日常などについて書いています。

内親王ものがたり

2006-12-10 09:26:14 | 図書室1
 今回は、「尊子内親王」「選子内親王」を書く上でお世話になったこの本を紹介します。

☆内親王ものがたり
 著者・岩佐美代子 発行・岩波書店 税込み価格・3045円

☆本の内容紹介
 選ばれた最愛の姫君にして、最高貴の女性―内親王。神に捧げられ、和歌や物語と深いかかわりをもった内親王たちを軸にして、千二百年の歴史を描く。運命を甘受しつつも、けなげに美しく生きた人々の面影をうかびあがらせる。

[目次]
1 激動の斎宮
 一 斎宮とは
 二 二上山を仰ぐ斎宮―大伯内親王
 三 竜になった皇后―井上内親王
 四 夢かうつつかー恬子内親王
 五 黄金のおしどりー雅子内親王 

2 文雅の斎院
 一 斎院とは
 二 幽貞の漢詩人―有智子内親王
 三 絵本を見る尼姫宮―尊子内親王
 四 貫禄の大斎院ー選子内親王
 五 神垣の朝顔ー(示某)子内親王

3 政治と愛のはざまに
 一 院政期以後の内親王達
 二 ただ四の宮を―篤子内親王
 三 大器「春宮姉」―子内親王
 四 我のみ知りてー式子内親王
 五 心の底よ思はれずなれー南北朝期の内親王
 六 御いやさまの降嫁ー親子内親王

終章 


 この本は、伊勢斎宮、賀茂斎院として神に仕えた内親王たちを中心に、飛鳥時代から幕末に至るまでの皇室の歴史と、文学史を綴ったものです。

 取り上げられている内親王も、謀反の罪を着せられて殺された弟、大津皇子を想う哀切な歌を詠んだことで知られる大伯内親王、斎宮退下後に白壁王の妃となり、その白壁王が思いがけず光仁天皇となったことで皇后に立てられるものの、謀反の罪を着せられて廃后され、非業の最期を遂げる井上内親王、在原業平との秘められた恋で知られる恬子内親王、相思相愛の恋人と引き離されて斎宮に卜定され、斎宮退下後は別の男性の妻にならざるを得なかった雅子内親王、激動の時代の中で、数々の情熱的な恋の歌を詠んだ式子内親王、公武合体の名のもと、京から江戸の将軍家に降嫁した親子内親王など、バラエティーに富んでいます。一般的にはあまり知られていない南北朝期の内親王にも触れられているところも嬉しいです。また、彼女たちの著作や、関わった文学作品なども紹介されています。

 この本を読んで思ったことは、著者である岩佐美代子先生の、内親王一人一人に対する敬意と暖かい愛情が感じられたことです。
 神に仕えたり、政略結婚をさせられた内親王を、ただ可哀想…ととらえるのではなく、彼女たちが与えられたそれぞれの運命を受け入れ、精一杯生きていたのだなということが、この本を読むことでしみじみと理解できると思います。そしてそこには、彼女たちを見守る人たちの姿もかいま見られ、心が温まります。

 この本で取り上げられている内親王たちの喜びや悲しみは、現代に生きる私たちとも通じるものがあるような気がしました。歴史というものは遠い世界のものではなく、現代ともしっかりつながっているような気がします。そんな彼女たちの生涯を、この本でしみじみと味わってみて下さい。お薦めです。


最新の画像もっと見る