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漢方薬剤師の日々・自然の恵みと共に

漢方家ファインエンドー薬局(千葉県)
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篠原悠希著「後宮に月は満ちる」金椛国春秋

2018-08-23 | 
金椛国春秋シリーズ第二話
逃亡の身である遊圭は女官に扮装してとうとう皇太后の娘、麗華の体調管理役となる。

麗華は母皇太后の愛情を受けられず卑下して引きこもりとなり過食に走り、
そのためPMSや生理痛がひどい。
医師試験に合格して経験の浅いしかも男である遊圭が、
血の道症に戸惑いながらも薬膳や漢方対策をする姿が面白い

「油で揚げた甘い菓子を食べすぎてはいけない」
と、物語の中でなんども諫言する
麗華付の女官たちも皆、菓子の食べ過ぎで吹き出物など肌荒れがひどいのだ

遊圭を手助けする明々(ミンミン)が疲労がたまっているところへ、果物をつぶして化粧パックする
遊圭に、初めて使うものは腕の内側で試さないと、と言われるが、案の定、顔が真っ赤に腫れあがる

スリル満点の状況の中、こんな漢方の知恵話が面白い
金椛国春秋シリーズ第一話・後宮に月は宿る

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8/13、8/14薬局休業 篠原悠希著「後宮に星は宿る」

2018-08-11 | 
漢方家ファインエンドー薬局のお盆休みは、
8/13(月)、8/14(火)です。
まだ猛暑が続くようですので、どうかご自愛くださいまして、元気にお過ごしください


中国あたり(?)の後宮の物語。
喘息もちの虚弱な男の子が主人公で、女子の格好をして後宮に紛れ込む
薬草や漢方薬の名前も出てきて面白かった。
続編は「後宮に月は満ちる」
読まねば。

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永井隆著「この子を残して」長崎原爆の日に

2018-08-09 | 
長崎の原爆で被爆し白血病となり、自分の子供を残して死んでゆく悔しさを静々と語った作品

この本は、小学生の頃に読んだ
子供ながらに泣きながら読んだ

そのころの我が家は、祖母祖父とまだ独身の叔父が暮らす家の隣にあって、
祖母が本棚からそっけなく「永井先生の本、読んでみる?」と私にくれたもの。
自宅で母にこの本を見せると「永井先生の本ね~」と言っただけだった。

今ではなぜ我が家では、永井「先生」と呼ぶのか、解らずじまいになってしまった。
祖母は「おじいちゃんはゲンバクだから医療費がタダよ」とのんきに言っていたのを覚えている
祖父も祖母もそれなりに天寿を全うしたと思うが。

原爆の時、母の家族は、長崎に住んでいた。
やはり、語るのはつらかったのかと、思う。

藤岡陽子著「手のひらの音符」子供の毎日が積み重なって今がある

2018-07-30 | 
地味な表紙に地味な題名、本屋さんのおすすめがなければ(新潮文庫の100冊)素通りしていた。
良い作品に出会えたと思う。
後半、自然に涙が流れた。


物語は子供の頃と40代の今が行き来するが、主人公たちの生きざまが丁寧に描かれているので、
それぞれの時間がほんとうに愛おしい。うまいと思う。

戦後、バブル崩壊、貧困、競輪、中小企業、転勤族、就職、進学、
病気、発達障害、精神病、家族、先生、学友、仕事仲間・・・
子供時代の毎日が大切に積み重ねられて、今を頑張って生きる大人になる
だれもが、つまらない大人でも、くだらない人生でも、なく。

自分もいろんな人の言葉にしばしば支えられ、そして何をしたいか考え
そうやってなんとか生きてきたなあ、と思った。
読み終わると、ちょっとした自信と希望を与えられていた。

朝井まかて著「雲上雲下」・物語のない現代を憂いて語る日本昔話

2018-06-14 | 
朝井まかてさんだからこそできた作品だと思う

深い森を抜けでた小さな草むらで、子狐にせがまれて常緑の草(草どん)が昔話を語る。
次々とお馴染みの登場人物でなつかしさがあふれる
日本の言葉の美しさに心洗われる

ああ、こんな話だったかなあと、この頃すっかり物語に遠ざかっている自分に驚く
たぶん今の子らは、こんな話を知らないんじゃないかという不安が膨らむ


案の定というべきか物語の後半、現代の余裕のない耳障りな言葉が、
神々も住む物語の世界を消していくのです。
なんという展開。

大人が読むべき昔話の本 子供に何を伝えなければならないかを学ぶ本

朝井まかて 1959年 大阪府生まれ

新田次郎著「アラスカ物語」すごい日本人とアラスカの自然

2018-05-30 | 
行ってみたい所のひとつ、アラスカ。冒険なんてできない体力だけど。

めくるめくオーロラ、広がる氷原、死と隣り合わせの気候、冬は太陽が登らず、夏は太陽が沈まない
そそり立つ山脈とその谷に広がる湿原
太陽の恵みで勢いよく目覚める植物、大移動する動物たち、それらの色彩・・・

北極圏の沿岸エスキモーたちと暮らすようになった日本人フランク安田は明治時代の実在した人物。
白人たちの海洋生物乱獲により、暮らせなくなった沿岸エスキモーたちのすみかを内陸に大移動させた日本人。


表紙の写真は星野道夫さんのもの

フランク安田さんの献身的な精神は驚嘆する
それにアラスカの自然のすごさ。新田さんの描写力でのめり込んだ。

新田次郎:本名、藤原 寛人(ふじわら ひろと)1912年6月6日長野県 - 1980年2月15日)山岳小説家、気象学者
「アラスカ物語」は1974年

辻村深月著「ツナグ」この世に残された人の心の問題

2018-05-23 | 
2018年本屋大賞(カガミの孤城)を受賞した辻村深月さん 実はこれまで読んだことがない

死んだ人に一度だけ面会できる。ただしその人が会うことを了解すれば・・・
どちらかというと無宗教の私にとってそんな設定どうかと思う。
だけど、読み進むにつれ、使者(ツナグ)に面会を申し込む人のそれまでの事情が興味深い
そして面会後の人の気持ちの変化も深い

そして、
あの世とか、成仏できないとか、死んだ人に魂があるのかとか、
そんな宗教的な話を乗り越えようとしているのに好感がもてる。

この世に残っている記憶みたいなものがかき集められて、
死んだ人が像を結ぶのではないかと考える使者(ツナグ)の少年

すべては、残された人の気持ちなのだ

それでもリアルに逢えたら、その後の人生はどうなるんだろう
そんなことを考察した作品
予想外に面白かった

辻村 深月(つじむら みづき) 1980年 山梨県出身

吉村昭著「破獄」脱獄は罪とか正義とかと別次元みたい

2018-05-05 | 
網走、秋田などの刑務所を脱獄した佐久間清太郎とそれに関わった刑事や刑務所職員の物語


時代は戦前戦中から終戦直後
戦況が悪化して日本中が食糧難に陥る中、刑務所の入所者は職員より多くの食事を供されたそうだ
それに、寒い刑務所で作業する入所者より、同じ場所でじっと監視する職員のほうがずっと寒い

やせ細り体力が落ち、脱獄ストレスが大きく、賃金も安い職員たち
そんな気も知らず、佐久間はちょっとでも嫌いな職員が見張っている日に脱獄をやらかす。
その方法は超人的で、長い時間をかけて職員をマインドコントロールさえしている。

ぼーっと暮らしている私には、その心理は到底理解できないが、刑務所にいると妙な次元に入り込んでしまうようです

淡々と出来事を書き綴っているだけに等しいのに、読みだすと止まらない。
吉村昭 東京生まれ(1927年-2006年)

カズオ・イシグロ著「私を離さないで」・クローンの猿に思う

2018-01-25 | 
臓器提供を目的として造りだされた(?)クローンの子どもたちの物語
彼らは施設内でいわば隔離状態で大事に育てられるのだけど、
「提供」する使命を持っている、子どもは産めない、将来を考えないなどを
当たり前のこととして教え込まれる
もちろんイシグロさんの想像の物語だけど、
そんなことになったら・・・と思うととても後味の悪い印象だった
(Never Let Me Go)


2018/01/25読売新聞より


そこへ今日のニュース
人間の難病を研究するためには、ヒトに近い動物が必要
理屈ではわかるけど気持ちは複雑

ヒツジはよくて、サルはダメ?
クジラやイルカはダメ?
人はいろんなものを食しているけど(たぶんサルも食べてる)
どこかで線を引けるものでもなさそう
ヒトって本当に貪欲だなあ

米澤穂信著「満願」昔の名作のようななまめかしさ

2017-11-01 | 
無駄なく嫌みなく、流れるような文章ですが、
行間に湿度があるというか、昔の日本の名作を読んでいるようななまめかしさを感じました
途中なにげに、ほんのわずか引っかかる描写。それが後になって効いてきます

これにどろどろした情念みたいなものが入ってきたりして
(たとえば沼田まほかるさんの作品みたいな)
思わず悔し泣きするようになったらすごいと思う
そこらへんの、まだあっさりしているのは、米澤さんが若いからかまたは男性だからかな
6つのミステリー短編が入っています

米澤穂信 1978年生まれ 岐阜県

追伸:沼田まほかる作品「彼女がその名を知らない鳥たち
この「すごい」恋愛小説が映画になりましたね。
十和子に蒼井優 陣次に阿部サダヲ このキャストはいけてると思います。

ボストン・テラン著「その犬の歩むところ」アメリカの心の痛みと犬の力

2017-08-31 | 
その犬の名はギヴGIV 傷だらけなのです
もうそれだけで、犬好きには避けて通れない小説です

だけどこの物語は、アメリカという国に暮らす人々の心の痛みをたっぷり描いています

戦争で家族を失った女
傲慢な父親とその子供 兄弟の諍い
9・11で姉を失い志願して戦争に向かい仲間を失った男
超大型ハリケーンのカトリーナの中、隣人のペットを探して命を落とした少女
大規模の山火事に巻き込まれた子供 などなど

愚かな争いに自らを傷つける人間たちに寄り添うことを選んだ犬
虐待も受けたのに、人間をあきらめない 生きることをあきらめない

神は世界を、人間とそのほかの生き物に分けたそうだが、
その時に犬は、人間側に飛び移ったのだとか

心に強く残る作品でした
原題は「The Story of a dog and America」


ボストン・テラン(Boston Teran)本名・生年非公表 作家としての活動は1999年から
アメリカ合衆国のイタリア系アメリカ人作家。ニューヨーク市サウス・ブロンクス生まれ
覆面作家ですが、女性ではないかということです

宮下奈都著「神さまたちの遊ぶ庭」自然を素直に驚き受け入れる

2017-08-15 | 
「羊と鋼の森」の宮下奈都の家族が新得町のトムラウシに山村留学した時の日記型エッセイ

トムラウシ山は大雪山系のひとつで「神々の遊ぶ庭」(カムイミンタラ)としてあがめられてきた山なのだそう。
その麓にいきなり三人の子供を連れて夫婦で移住した宮下家

買い出しは何十キロも車を運転しなければならないし、冬の気温は桁違いに低い
子供たちは、先生の方が多いくらいの少人数の学校へ入り
日々、独立心と協調性を育んでいき、大人の発想をはるかに超えた受け入れ方と成長ぶりに感動する

移住と永住じゃ心構えが全然違うだろうけど、
豊かで厳しい自然を、素直に驚き、楽しんでいる彼らに(もちろん虫が気持ち悪いなんて言わない)
うれしくて幸せな気分になる。


宮下奈都 1967年生まれ 福井県出身 
     「羊と鋼の森」で第154回直木賞第13回本屋大賞受賞

荻原浩著「二千七百の夏と冬」2700年前のこの人たちがいて私たちがいる

2017-08-12 | 
物語の主人公は縄文人の男と弥生人の女。
こう表現すると、今の自分たちと関係のない存在に思ってしまいますが、
登場する人々にはすべて、名前があり、血縁があり、性格があり、社会的な役割があり
知恵があり、熱い感情があって、2700年前の彼らの日々の出来事が
とてもリアルに感じられ、心揺さぶられました。



今との違いは、その時代の日本には、アスファルトの道なんてない、橋もない、
鬱蒼とした植物に覆われ、草木の香りで満ち、鹿や熊や猿や諸々の動物が行きかっているということ

身の危険も多く、生き延びるのも容易でない中での、
自然を熟知した生活の仕方、たくましさ、そしてを離れ道なき道を行くさまは一世一代の冒険家

狩りをする場面で、
動物が最後の一瞬「お前に食われるために生きてきたのか」という表情をする
という表現に、人間以外の生き物にも濃厚な生きざまがあることを思い知らされる。

狩猟民族の方が残酷だと思っていたけど、稲作文化の方が土地と人手の必要から
他地域に争いをしかけるようになったという皮肉も知る。

この人たちがいて私たちがいるということを実感する作品。

荻原 浩 1956年 埼玉県出身

東山彰良著「僕が殺した人と僕を殺した人」刺激的でキュンと切ない

2017-05-26 | 
やっぱり東山さんはすごい。「流」で直木賞をとった作家です。
そして「流」を超えているかもしれないと思うほど刺激的な展開。

舞台は、複雑な歴史を抱えて渦巻く、濃厚な料理の匂いが路地にも渦巻いている台湾。
中学生の悪がき三人と一人の弟。
両親の人生に巻き込まれて少しずつ、子供のちょっとした行き過ぎからほんの少しずつ
運命が狂い、後戻りできない結末となる
登場人物に根っからのワルはいない
どんな親も子を思い、子も親を慕っているのに、健やかに生きていくことが難しい。

しょっちゅうケンカしてぶつかり合いながら成長していくこの時代の子供たちは、
陰湿なイジメに覆われた今の日本の現状より律儀で健康的に見える。
それでも心に負ったキズは大人になっても癒えることはない。

僕の心を殺したのはだれか、僕が殺してしまったのはだれか、そして僕はだれか。
読み終わって、この題名が心に深く突き刺さり、切ない気持ちになる


「流」に登場した人物もちらとでてくる。
東山彰良:(本名:王 震緒) 1968年台湾生まれ
「流」「ジョニー・ザ・ラビット」
「ライフ・ゴーズ・オン」

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上橋菜穂子著「炎路を行く者」・十代のころ熱い気持ち

2017-05-25 | 
「漆黒の天に、銀砂をまいたように、星が散らばっている。」
出だしの一行で、守り人の世界にすっと入り込んでしまいます。

タルシュ帝国の密偵ヒュウゴの、密偵となるきっかけとなった十代のころの事件と、
バルサも十代のころの養父ジグロとの胸が熱くなるかかわり合いの二つの物語。

上級武官の息子として暮らしてきたこれまでを全面否定された若いヒュウゴの挫折と、
国を超えた広い視野で動向を見てみようと決心するまでの、
大切な大人たちとの出会いと気づきに、ヒュウゴがあたかもわが子のように愛おしさが増す。
上橋さんの描く人々には愛があるなあ。

上橋さんの描写は無駄がなく、なのに細部までまるでその場にいるがごとく広がる映像
久しぶりの守り人作品集ですが、やっぱり上橋さんはすごい。

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