漢方薬剤師の日々・自然の恵みと共に

漢方家ファインエンドー薬局(千葉県)
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湿邪に害されてひどくなった腰痛

2024-06-28 | 夏の養生法
昨晩、むしむししているものの外気温は下がってきていたので冷房をつけずに窓を少し開けて寝て、今朝は雨。すると6月初旬から久々に発症していた腰痛が、一層重く動かしづらい、膝もギスギスして痛む。頭ももやっと重い。今回は自分のことです。

するとそのうち便意を催して何度か軟便下痢に(全然つらくはない)。
これはきっと体の防衛反応だ。不要な停滞物はため込まずに出す方がよいのだ。すっきり排便できたおかげで体がだいぶ軽くなった。

状況を考察するに、湿邪に害されたなと、一応「勝湿顆粒」を1服飲むと、お腹がぽっと温かくなり手足も軽くなり、そのうえ気づけば、腰痛も膝の痛み忘れるほど軽くなった(驚)

この腰痛は、運動すれば軽くなりじっと座っていると固まって動くのがつらくなる痛みだった。
これからどの漢方薬を飲んで対策しようかといろいろ処方を考えていたが、難しく考えることはなかった。なによりまず湿邪をとる。これでよかったのかと驚いた。

勝湿顆粒の効能は「感冒、暑さによる食欲不振、急性胃腸炎、下痢、全身倦怠」で、腰痛や頭重は効能に入っていない。だが、体は全体でひとつであり、すべてが影響しあっている。これが西洋医学と異なるところで、だから西洋医学的効能の他にもその漢方が有効なことが多々ある(これは考え方が異なるのだから仕方がない)

わが薬局の漢方お馴染みさんたちは、天候に応じて「今日は勝湿顆粒かな」と入ってくることもある。そんな体調管理の仕方がもっと普及するとよいと思う。
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気象病:スマホ首の人は要注意・活血対策がおすすめ

2024-06-20 | 頭痛、めまい、目
気象病が騒がれる季節になりますね。
頭痛、めまい、イライラ、肩こり・・・
その原因は、気圧変動を感知した中耳の前庭神経が興奮し三叉神経を刺激することで、脳血管が急に拡張しその周りに炎症を起こすからなんだそうです。
また、自律神経の乱れにより、肌などの毛細血流は悪くなり、肌色がくすむんだとか。さらにこの頃は「スマホ首」の人が増え、前庭神経に向かっている血管が絶えず圧迫されているので、気象病の症状が現れやすいのだとか。(TV番組カズレーザーと学ぶより)

気象変動を感知する「能力」は、地球で暮らす生き物にとって防衛反応のひとつであり、多少だるさを感じてその日の行動をセーブするのは良いとしても、体調を崩してしまうのはいただけません。
気象病の症状にはほかに、血栓や心筋梗塞、脳出血など循環器系疾患や、古傷の痛みやリウマチ、神経痛などの悪化も知られています。
チュウサギ飛翔 鳥の首はしなやか

元気に過ごせるよう体調を整えておくことが大切ですね。
少なくともスマホやPCの見過ぎを避け、首のストレッチはやっておきましょう。

中医学的にこれらの症状を分析すると、瘀血痰湿そして気血両虚。
つまり、血流悪化、湿邪による代謝の停滞が直接的原因で、
そしてそれをコントロールできない体の力不足が体質的問題といったところでしょうか。それに目の使い過ぎは血虚を助長すると言われます。
体質虚弱の人は、一時しのぎの処方に甘んじることなく、普段から体質に合った漢方薬の服用で体力アップしておきましょう。よくご相談ください。
ネムノキ咲き始め
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湿邪の影響その2:胃もたれ下痢・舌苔でチェック

2024-06-15 | 夏の養生法
湿気の多い日は、口の中がベタベタしたり胃がムカムカすることがあります。
胃腸が張って胸苦しい 胃がぽちゃぽちゃする
手足が重だるい
食欲がない
口が渇く感じだが、水分を摂ろうとするとムカムカする
大便がすっきりでない。お腹を壊しているわけではないがベタベタしている
などの症状も現れやすいです。

食欲がないからダイエットできるかというとさにあらず。
口当たりの良い甘い飲み物や食べ物、冷たいもの、味の濃いものを摂りがちで、その結果むくみやすく、夏太りになりがちです。
カルガモとオシドリ

これらは湿邪がまとわりついている症状です。

手軽にチェックする方法は、舌につく苔です。
苔が厚くなっていたりベトベトしていたりします。むくみがあると舌が分厚く舌辺に歯型がついていたりすることもあります。
ふだんから舌苔をチェックする習慣をつけていると変化がわかりやすいです。
湿邪の特徴は、こびりつくと取れにくいこと。食養生や漢方薬で早めの対策をおすすめします。

食物繊維が多い食材がおすすめで、玄米、雑穀米、大麦、ハトムギ、粟など、
他に海藻類、緑豆、春雨、根菜類、青魚や貝類を、香りのあるスパイスや香草(シソ、ミョウガ、ショウガ、ネギ、パクチーなど)と一緒に摂るようにします。
甘いものや冷たいもの、脂っこいもの、味の濃いものは控えめに。

中国の湿気の多い地方では、カッ香正気散(商品名:勝湿顆粒)という漢方薬をよく飲むそうです。その配合生薬は、香りのあるもの(芳香)、水はけを促すもの(利湿)、お腹を温めるものなどの生薬類がバランスよく配合されていて、まさに梅雨時のおすすめサラダのような処方です。

漢方薬は、その時摂るべき食材で作った料理のようなものでもありますね。
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湿邪の影響その1:関節や腰の重痛

2024-06-11 | 夏の養生法
梅雨入間近。湿気で大気が重く感じますね。
湿気の影響(湿邪)を体のあちこちで受けてしまうことがあります。
そのひとつが関節痛や腰痛。雨が降る前に痛みがひどくなるという話を聞くこともあります。
コサギとゴイサギ
湿邪による痛みの特徴は「重痛」
ずんと重苦しい痛み方で、こわばって動かしづらかったりもします。
(部位が固定して刺すような痛みなら瘀血、締め付けるような痛みなら寒邪、場所が定まらない痛みなら気滞の可能性)
日本は概ね梅雨から真夏にかけて湿度が高いので、湿邪対策の養生は大切です。

・湿は停滞しやすく、筋肉が強張り易いので、体はこまめに動かす
・冷房に当たりすぎない
・扇風機に当たりすぎない
・食べ物は、冷たいもの、べたつくもの(脂っこいもの、味の濃いもの)を避ける
・食べ過ぎない
・水はけがよくなる食べ物は緑豆や海藻類だが、これらは体を冷やす作用を持つので、スパイス、ショウガやネギなどを使いほかの食材と合わせて料理する。
印旛沼あたり
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招かれた天敵・生物多様性が生んだ夢と罠:千葉聡著

2024-06-03 | 
ふと生物多様性ってなんだろう、新聞記事などを読むものの書く人の立場によって意味が異なるような気がする、と思って読んでみたこれ。

もう人知を超えた自然の複雑さ、とても人間の思い通りにはいかないと実感しました。

じゃんじゃん世界をプラントハンティングした時代の話題から、「沈黙の春」の反響により農薬使用が敵対視されて「自然にやさしい」伝統的生物的防除に向かい害虫への天敵昆虫の導入を迫られた昆虫学者たち。
しかしそれは害虫を駆除できないばかりか、在来種の絶滅を招き、破滅的失敗の連続だったのです。

農作物とその天敵、動物、昆虫、鳥、細菌、気候、そして化学農薬。そこには「自然のバランス」などという規則性は全くないと言っていいほど一筋縄ではいかない。

化学的防除と生物的防除のどちらが優れているか、という問いは無意味であるという著者。
日本を含む東アジアは温暖湿潤で害虫が発生しやすく、単純に農薬使用率を欧米と比較できない。病害虫に侵された農産物のほうが人体に有害な場合もあるという。

外来種導入、フェロモン、不妊化、密度依存など様々な検討がなされる一方、同時に予算、期限、政治、農民、民間会社の経済的意向などの圧力もある。

今後、増え続ける地球の人口を賄う農場は広大化し、一つ間違えば大きな不作を招きいっぺんに世界が飢饉に陥る恐れを含んでいる現在。問題は山積したままだった。

最後は、著者らが父島で奮闘したカタマイマイ類など固有種を外来種ヤリガタリウウズムシから守る死闘は手に汗握るものだった。その結果は失敗。父島のカタツムリ類はほぼ絶滅したらしい。


昨日の散歩道でゴイサギ
チュウサギ 抱卵を終えたのか数羽戻ってきた
モズの子たち
いつもの初夏の風景に、感謝するばかりです。

#招かれた天敵 #生物多様性が生んだ夢と罠 2023年3月第1刷 5月第2刷
#千葉聡 著 1960年生まれ東北大学東北アジア研究センター教授 東北大学院生命科学研究科教授兼任