漢方薬剤師の日々・自然の恵みと共に

漢方家ファインエンドー薬局(千葉県)
http://kampo.no.coocan.jp/

ロブ・ダン著「家は生態系」あなたは20万種の生き物と暮らしている

2022-04-30 | 

原題は「NEVER HOME ALONE」あなたは一人で暮らしてはいない

生物多様性が、健康に生きるために大切だということを膨大な検証から実証した物語です。

これでも実証実験は始まったばかりだとか。

2021年2月発行

生物多様性が低下すると、アレルギー、喘息、炎症性慢性疾患は増える

慢性的な自己免疫疾患は過度に清潔で衛生的な生活と関連がある

人は生まれつき生物多様性を好み、それが不足すると情緒的健康が損なわれる

多種多様な生物にさらされることで集中力の維持時間が長くなる

殺虫剤をまくと「天敵不在空間」が生み出され、例えばチャバネゴキブリは家の中のほうが生きやすくなっている

害虫の天敵がわんさかいる家をつくること

干渉型競争:住み着いている菌が多いほど外部からの菌が侵入しづらい

デコロナイゼーション(抗生物質で猛攻すること):もっとも質の悪い薬剤耐性菌がもっぱら病院に住み着くのは、他の菌との競争がないから。薬剤耐性菌は外では弱者である。

中庸こそが万能薬:排除するのではなく生物多様性の恩恵を受けながら病原菌を寄せ付けない生活

手味、テロワール:キムチやパンを作る人の手や家に定着している菌たちが、旨味を作り出し、外部の不用な菌を排除している

以上のような事柄を証明した生物学者たちの気の遠くなる単純で膨大なコツコツ積み重ねる検証実験の努力に心から敬意を表したい。

私たちは「気持ち悪い、薬剤を使って殺したい」という考え方を改めなければならないでしょう。

たくさんの生き物たちの群れをいつも纏うことで守られているのだから。

 


ポール・ナース著「生命とは何か」すべての命はつながりあっている

2021-12-06 | 

著者ポール・ナースは2001年ノーベル生理学・医学賞受賞を受賞しています。

翻訳(竹内薫)がうまくてフレンドリーな文章で、話しかけられているような気分になります。2021年3月発行 

生命体ってどうやって生きてるんだろう。それを知るときっと、頭でっかちな妄想で自分を孤立させることがなくなるでしょう。

私たちの体は強固な構造の遺伝システムによる情報によって、驚きべき機能を化学的物理的にこなす精密機械である。

そして「生命体は依存しあっている。ヒトもヒトとヒト以外の多くの細胞が混ざりあってできたひとつの生態系だ。われわれの30兆個の細胞など、この生態系からすれば微々たるものだ。われわれに依存したり、われわれの内側で生きている多様な細菌、古細菌、真菌、単細胞真核生物などの共同構成員の数は天井知らずなのだから。さらにわれわれが食べる一口ごとの食べ物は、他の生き物によって作り出されている。」 

われわれは、他のすべての生命と深い絆で結ばれている」 

「自然淘汰が効果的に機能するには、生物は死ななければならない。競争上強みのある遺伝的変異を持っている可能性がある次の世代が、古い世代にとってかわることができるからだ。」

生命はすべて、こんなに素晴らしいのだけれど、そのことを知っているのはおそらく人間だけだ。

だから人間は地球のすべての生き物を守らなければならないと結んでいます。


ディーリア・オーエンス著「ザリガニの鳴くところ」

2021-11-25 | 

女性動物学者が書いた殺人ミステリーです。

おおよそ人間は、神に近い特別な存在だと考えがちですが、著者は人間のあらゆる行動を、野に住む動物と同じ目線でとらえ描いています。

たとえば、差別や集団いじめは七面鳥の群れの行動で例えたり、着飾ったり、派手な車やボートに乗る男たちは繁殖期の雄に過ぎないようです。

主人公の少女カイアは、幼いころから湿地に一人取り残され暮らし、その豊かな自然は、彼女を湿地の生物学者に育てあげ、感情豊かな詩人にもしたのでが、しかし同時にその思考は動物的で、雄の求愛行動、雌の雄を利用する様々な形は、一見残酷なようでも自然の法則の中ではごく当たり前のことだったのでしょう。

派手なオスの典型であるチェイスは、カイアから贈られた貝のペンダントをいつもしていたなんて、実はカイアを愛していたのかもしれなあ。

結末は驚く展開でしたが、法律など人間の物差しに収まらない、カイアの本能に偽らない行動を見たような気がしました。

ホタルのメスは、仲間のオスを呼ぶ光り方と変えて別種のオスを呼ぶ光り方をしてそのオスを食らい、カマキリのメスは、交尾しながらそのオスを食らう。自然界のメスは強いのです。

物語に登場した鳥たち

オオアオサギ、七面鳥、シラサギ、セグロカモメ、カラス、ハチドリ、ガチョウ、ネッタイチョウ、ハクトウワシ、ハクチョウ、ムクドリモドキ、アメリカワシミミズク、アオカケス、クーパーハイタカ、カッショクペリカン、アカオノスリ、コウノトリ、マガモ、ハクガン

2021年本屋大賞翻訳小説部門第1位


自然の素晴らしさに驚く心・レイチェルカーソン著「センス・オブ・ワンダー」

2021-10-25 | 

感動する本に出合いました。

レイチェル・カーソンは、人間の環境破壊(農薬など化学物質による)に警告を発して世界的ロングセラーとなった「沈黙の春」の女性作家であり生物学者です。
農薬を使いすぎて、春になっても鳥の声もしない沈黙の春・・・

相変わらず環境破壊は進んで、すでに野鳥の数は激減しています。おそらく数年後には地球のデリケートな均衡は保てなくなり、地球環境がどっと崩れるのではないかさえと言われています。

「センス・オブ・ワンダー」は「沈黙の春」を書き終えた(1962年)後に書かれた作品で、その時彼女はすでにガンに侵されていて2年後に亡くなられ、彼女の最後の作品です。

写真の文庫本は、今年(2021年9月)に発刊されました。この中の彼女の文章は、大きめの字の文庫本サイズで70数ページにしかすぎません。しかしその中に、あふれるほどたくさんの「センス・オブ・ワンダー」が素直で美しく優しい言葉で表されているのです。

「センス・オブ・ワンダー」とは「神秘さや不思議さに目を見はる感性」と訳されています。この感性は子供にはあるが年齢とともに失われる。だがセンスオブワンダーの記憶は、消えることがなく、

「やがて大人になるとやってくる倦怠感と幻滅、私たちが自然という力の源泉から遠ざかること、つまらない人工的なものに夢中になることなどに対する、かわらぬ解毒剤になるのです。」

だから子供たちに、自然に接する機会をたくさん与えてほしいと訴えています。

作品の中のあるセンスオブワンダーを抜粋します

「風のないおだやかな十月の夜、車の音が届かない静かな場所に子供たちをつれていき、じっとして頭上にひろがっている暗い空の高みに意識を集中させて、耳を澄ましてみましょう。やがて、あなたの耳はかすかな音をとらえます。鋭いチッチッという音や、シュッシュッというすれ合うような音、鳥の低い鳴き声です。

それは広い空に散って飛びながら、なかま同士がはぐれてしまわないようによびかわす渡り鳥の声なのです。

わたしは、その声をきくたびに、さまざまな気持ちのいりまじった感動の波におそわれずにはいられません。わたしは、彼らの長い旅路の孤独を思い、自分の意思ではどうにもならない大きな力に支配され導かれている鳥たちに、たまらないいとおしさを感じます。また、人間の知識ではいまだに説明できない方角や道すじを知る本能に対して、湧きあがる驚異の気持ちを押さえることができません。」

 

 


東山彰良著「どの口が愛を語るんだ」・悩みが軽くなるかも

2021-07-24 | 

もう題名からして東山ワールドを感じます。

4つの短編それぞれが、どこまで行っても混沌としている「愛」に関連する作品です。

宗教のような破滅的な愛、人をダメにする愛より、勘違いでも依存に過ぎなくても偽善でも、それを愛と思ってとりあえず生きるのでもいいんじゃない?って感じでしょうか。

すごく悲劇的で、どうにもならない場面にいくつも遭遇する人生でも結局、人はなんとかなっていく。

東山さんは、文章が軽快で濃厚でますますうま味が増し、読みだすと止まらなかった。

悲劇のヒローみたいに物語にうずもれない、ちょっと達観した感じが好きだなあ。


澤田瞳子著「星落ちて、なお」分かり合えない苦しさ

2021-07-13 | 

画鬼と呼ばれた河鍋暁斎の娘とよ(河鍋暁翠)を主人公に

鬼才画家の後を生きる苦しみを描いた作品。

そもそも家族ましては異母兄弟、それぞれの思いなんて分かり合えるはずがない

誰も自分のことで精いっぱいだから。

そうとわかっていても、日々、人の言葉に悩まされる。

「そうじゃない、わかってほしい」と願ってしまう。「なんでこんなに辛いんだ」と嘆いてしまう。

気持ちが通じないと急にその人が遠のいた気がして恨みたくなったりする。

澤田さんの物語の中には、そんな日々をするすると描いてくれている。

結局、ジタバタしながら生きていくんだなあ。

 


劉滋欣著「三体」宇宙的視野をもつ

2021-07-09 | 

Ⅰ、Ⅱ、Ⅲとやっと読み終えた「三体」

洪水のように知識が渦巻く劉さんの脳内で溺れそうになりながらも楽しく遊んだって感じです。

SFとはspace fantasy、宇宙の幻想。

劉さんは誰も見たことがないことをどんどん描き、私の空想できる範囲をはるかに乗り越えて物語は展開します。

三体Ⅰで、どうにもこうにも頭の中がごちゃごちゃになります。

三体Ⅱに入ると、彼の中に中国5千年の歴史があることを感じました。侵略の戦いに耐え続けてきた大陸的強さでしょうか。宇宙とはいえ安易に隣人と仲良くしようなんて甘いのです。

そしてⅢ、感動的な宇宙の姿(二次元に飲み込まれる太陽系)と、地球人の愚かさと、そんな小さな存在でもきっと宇宙の一部なのだということを感じました。

島国日本で暮らす私は、視野が狭くなりがちですが、こうしてSFによって宇宙的視野にさらされると、日々の問題を一歩引いた目線で考えられそう。いやいや島国根性はなかなか治りそうもありませんけどね。

あれだけくじけそうになりながら苦労して読んだのに、今は「三体」ロスです。

 


梨木香歩著・僕はそして僕たちはどう生きるか

2021-02-26 | 

この青臭い題名ゆえに、避け続けていた本です。

梨木さんらしい攻め方で、多感な十代に向けて、

戦争や経済社会などの人間の「群れ」に束縛されず、自分の意志を持とうと訴えています。

人は群れとして生きる生き物だけど、ゆるやかに迎えいれてくれる群れがほしい

しかし、

それは「個で生きられる」背景が備わっていなければ無理だと思う

豊かな自然を所有していて自給自足できるとか、どこからかうまい具合に支援をうけられるとか・・・

そんな余裕がなければ、いやでも「群れ」に隷属しなければ生きられない人のほうが多いと思う

それが、戦争の片棒を担ぐことになったりするのは、悲しいことだけど。

そんなことをまじめに考えてしまったところは、この本が良書といえるのでしょうね。


劉慈欣著「三体」想像を超える宇宙SF

2021-02-06 | 

作者の劉さんはエンジニアで、物理学的な知識でどんどん想像を膨らますものだから、それについていくのが大変でした。

人間の将来に失望した人々が、この地球の人間たちをどうにかしてくれと異星人に頼んじゃったのです。

当然、異星人は地球を救おうなどとは考えず侵略方法を練るわけです。

異星人が地球に到着するのは、なんと450年後!

時間や空間の概念を覆し、あちらとこちらの事情が交錯して混乱し二度読みしました。

相当ぶっ飛んだSFです。

まだまだ物語は続いていて、これは序盤に過ぎません。いったいどうなるんでしょう。


椋鳩十(むくはとじゅう)著「鷲の唄」・生き物として

2020-10-17 | 

梨木香歩さんの「不思議な羅針盤」を読み返していたら、椋鳩十という名がでてきて、だいぶ前に友人に教わった名前だったのを思い出した。さっそく図書館で借りてみた「鷲の唄」。

「山窩調」「鷲の唄」「夏の日抄」の3部からなり、1983年に発刊されたものだが、「山窩調」は昭和8年の作品。

山窩とは山を転々としながら暮らす無籍者。彼らの暮らしをショートストーリーで詞調につづる。

法律も何もない山の中で「生き物」として「素」で生きるのは、非情だったり残酷だったりするが、考えてみれば、今の他人との関係だったり国と国との取引も、これと大差がない。結局人間らしさなんてうわべのことで、人も生き物だということだろう。

これを読むと、今の、言葉を飾り理屈をこねた様々な本が、なんだが味気ないものにさえ思えてくるほど、後を引いた。

本を開いたら、30年前のしおりが褪せることなく折り目もなく挟まれていた。

今はカードでピッとやるだけ。返還日が書かれたレシートみたいなものを挟んでくれる。


上田早夕里著・深紅の碑文

2020-09-17 | 

破滅の王」以来、上田早夕里さんの作品にはまり、

「魚舟、獣舟」「華竜の宮」「リリエンタールの末裔」そして「深紅の碑文」まできました。

これらは内容がつながっていて「オーシャンクロニクルシリーズ」と呼ばれています

地球が異変を起こして海底が盛り上がり、海面が今よりも260mも上昇した25世紀。

陸地が減った人間は、海で生活できる人間を遺伝子操作で作っていた。

陸に生きる人間と海に生きる人間もどき。

そしてさらに数十年後には、「大異変」が起こるという予想が・・・

それはマグマが広範囲に吹き出しその後太陽が見えない暗闇と化し、一機に氷河期に入りほとんどの生き物が死滅するという。

少しでも生活物資を確保しようと焦る人々に争いが絶えない。

政府は人口を減らそうと考え、争いを抑えない、出産を制御する、悪質な生物兵器、殺戮AI・・・

企業を起こして人を救おうとする人、家族や仲間のために敵を殺しつくそうとする人、ノアの箱舟的な宇宙船を飛ばして未来に希望をつなごうとする人・・・

いろんな人々の思いが詳細に描かれ、長編です。

戦争、難民、救助団体、病気の蔓延、政府の思惑、兵器の開発、宗教支援、遺伝子操作、AI、

いつになってもそれらが人間という生き物の性みたいです。

SF愛好家たちに人気というのも納得です。


上田早夕里著「破滅の王」戦争と科学、人類の道は?圧巻の長編

2020-07-09 | 

世界中が戦争をしていた1930~40年代の物語。関東軍防疫給水部本部、細菌戦...
上海自然科学研究所の細菌学者に、軍の手がのびじわじわと戦争に巻き込まれる。

終わりの見えない戦争をどう終わらせるか?

ある細菌学者は、強毒性の細菌を見いだし、まんまと菌株を複数の外国に分けた。
きっと誰かが菌を撒く、抗菌対策がないままに敵味方なく感染死者が増えれば、世界は戦争を止めて協力するだろう、戦争を終わらせるための死人は、仕方のないことだと。

フィクションだが、登場する実在した人物たちが、上田早夕里さんの圧倒的な筆力を借りて物語りを紡ぐ。 
巻末の参考文献は、日中の戦争からナチス、細菌学まで6ページに及んでいた。

圧巻の長編でした。

そして驚くべきことに、細菌R2v(キング)はまだ世界にあって、
その感染者は、1943年に見いだされてからこの物語が書かれた2017年で6億人以上、死者は5億人以上、
いくつかの抗菌剤が開発されたが未だに対策はない。

戦争の暗部まで端折ることなく書き尽くす上田早夕里、きっと気持ちの熱い人だと思う。 

昔読んだパティスリーの物語も菓子知識と菓子職人の現場の厳しさが凄かった。


一條次郎著「レプリカたちの夜」人間もDNAをコピーし続けるレプリカ

2020-03-12 | 

動物のレプリカ工場に働く主人公は不可解な事件に巻き込まれ、

こりゃ死んだなと思ったら、次の章ではいつも通り暮らしていて、

前に何がおこったか記憶はあるがそのうち考えるのが面倒になって忘れてしまう。まわりの人々もそんな感じ。

いろんな事件事故が次々と押し寄せるが幾度もこれを繰り返す。

面白すぎて読むのが止まらないほどだが、いったいこの話はどこに着地するんだろうと不安になっていたら、

最後にわかった。

人を構成している細胞の新陳代謝はまさにこの物語だ。

「ぷるぷる音頭で震えながら人が溶けていく」描写は寿命が尽きた細胞が死滅する姿だ。

人間は自我や魂を持つ高等生物だと思いあがって一人で生きている気になっているが、

人間もDNAをコピーし続けているレプリカに過ぎないという衝撃的な物語。

生物学的な知識がすごい人だなと感心したら、巻末の参考文献がすごかった

稲垣さんの「生き物の死にざま」の後にこの本に巡り合うなんて運命だ!いやそう思うのも人間の思い上がりか。

どこにも行けない雨の日曜日は読書が進みます~


稲垣栄洋著「生き物の死にざま」

2020-03-11 | 

すべての生き物は遺伝子を伝えるべく最良の仕事をするために死へ向かっている

これは自明のことらしい

だから、なぜ生きるか、どう生きるか、なぜこんなに不幸なんだ、なんて悩まない

しかし死はいつも隣にあり、天寿を全うすることなんてめったにできない

自然を生きようとするものを邪魔するのは傲慢な人間か、はたまた人間をそうさせているのも自然の摂理か。

だけど、最後に稲垣さんは、死はただただ悲しいと述べておられ、胸が熱くなった

稲垣栄洋 1968年生まれ 農学博士 「身近な雑草のゆかいな生き方」など多数

やっと雨が上がり日差しがまぶしい今日、上を見上げたらコブシが満開だった。

 

 


上橋菜穂子著「風と行く者」なんと児童文学、民族間の根深い紛争にも解決の道

2019-10-17 | 

守り人シリーズの外伝として昨年11月に発表されたもの
本屋の中を探しても見つからないので店員さんに尋ねたら、なんと児童文学コーナーに!
確かに本を開くと、ことごとく漢字にルビが施されており、これまで読めない漢字は飛ばしていたので、正直とても助かる。


しかし内容は、政治的なやりとりやら人の生き方やら、相変わらず奥深くて、これを「児童」がどれだけ理解してくれるだろうか、と不安はあるが、それでもこのことを少しずつでも理解してくれたら、きっと読んだ子供は豊かな生き方ができるだろうと思う。

先の見えない民族同士の争いに昔、ひとりの賢者が相手国に出向いて結んだ和平同盟だったが、相手国で命を落とす。しかし和平実現のためにその死因は伏された。にもかかわらず数百年たった今、再び争いがぶり返そうとしている。
民族間の争いは根深く、戦いは恨みしか生まず、民の生活は豊かにならない。平和を維持するためにどのような政治的駆け引きをするか。
このあたりは上橋さんらしい広い視野で物語は展開する。

これを書いた時、上橋さんはお母さまを亡くされたそうで、物語の後半には、言葉で伝えられなかったことでも、その人に育てられたことによってすでに体の中にあって、ふとしたことで知ることができる、というような描写があり胸が熱くなった。