漢方薬剤師の日々・自然の恵みと共に

漢方家ファインエンドー薬局(千葉県)
http://kampo.no.coocan.jp/

夜型生活者に多い陰虚:睡眠は陰の充電

2023-05-31 | 気持ち・眠り
陰虚とは、体の「潤い」が不足していること。
それは体を満たしている液状の栄養分みたいなもの(津液、血、精)でしょうか。
なので水を飲んでも解消されません。

朝は睡眠によって充電されているのですが、夕方から夜になると消耗して、頬がほてったり、手足が煩わしく熱く感じたりしがちです。
いわゆる「空焚き」のような症状ですが、陰虚の人はこの症状が強く現れます。

・陰虚で現れやすい症状
皮膚が乾燥しやすい
のどや口が渇く、唇が荒れやすい、鼻が乾く、目が乾燥する
ほてり、熱っぽさを感じる
尿量が少ない
寝汗をよくかく
月経周期が短め
夜、手足の裏がほてる
不眠
高尾山で見つけたイナモリソウ。緑深い山道を行くのは陰を補うのに最適ですね。疲れたら山がおすすめ。

・対策:睡眠を十分にとる
夜は陰の時間なので、この時にしっかり寝て充電するのが一番です。
夕方からはのんびり過ごし、早寝早起き生活をします
辛いものは避けたほうが良いでしょう

夜型生活の人は、無意識のうちに陰虚に陥りその結果、不眠、煩躁(じっとしていられない、胸が騒いで、手足に熱がこもる)、じっとしていられないのでよく動くわりにすぐ疲れる、などの悪循環に陥っていることがあります。

ずっと昔から夜型生活だ!という方は無理やり夜寝ることもないかもしれませんが、疲労をため込まないよう時間に余裕のある時はがっちり寝てください。

先日いらした方のこと。
不眠と不安緊張感が強いということで、漢方対策で症状は軽減していたのですが、さらにこの4月から朝は5時前に起きなければならない生活に変わり、おかげで夜はぐっすり眠れるようになったそうで、気持ちも落ち着いてきました。


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水の摂り方・曇天時悪化(気象病)タイプは。

2023-05-27 | むくみ
冷え性でむくむというお悩みを持つ女性は多いですね。
それは、体内の水を処理する力が足りないからです。
それなのに、水は2リットル以上飲まなきゃならないとか、水を飲むときれいになるとか思っている人、多いです。

このタイプの人は、疲れやすく、無駄に汗をかきやすかったり、頻尿、おりものが多いなどの症状もあったりします。外気の湿度が高くなるとますます体内の無駄な水が掃けないので、天気が悪いと体調が悪化し、むかむかしたり、頭が重かったり、いわゆる気象病と呼ばれる症状が出ます。
元気よく鳴いてホロ打ちするキジ♂

口寂しいから水を飲むのではなくて、口が少し乾いたなと思ったらちびりちびりと白湯でも飲んでください。冷たいものは厳禁です。

座りっぱなし立ちっぱなしはよくありません。
マメに動いて足腰を使い、循環改善をしましょう。

漢方対策では、補気しながら去湿、活血します。

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症状がなかなか治らない原因のひとつは老化「腎虚」

2023-05-24 | 老化・血流
「若い頃はすぐ治ったのに」とか、「何をやっても治らない・・・」
なかなか治らない一つの要因は「治す力が足りない」から。
治癒力が低下する原因のひとつは「腎虚」です。

中医学でいう「腎」の働きを西洋医学的に言えば、
・内分泌系全般の機能。
・腎臓での水分ろ過と再吸収。
・成長や発育および知能、知覚、運動系の発達と維持。
つまり生命を維持する力全般で、免疫力、治癒力そのものでもあります。
やっと名前を覚えたナガミヒナゲシ

腎虚の特徴的な症状
足腰がだるい痛い、疲れやすい、疲労の回復が遅い、だるい、動作が緩慢
骨や歯がもろい、背中がまがる、髪が抜ける
耳鳴り、難聴、めまい、白内障、夜間頻尿
生殖系の発育がおそい、不妊
物忘れ、認知症

対策1:ちょこまかよく動いてお腹をすかせる
「この年齢になるとお腹はすかないけど食べなきゃ」と無理やり食べている人もいますが、それはかえって体に負担になります。
食べるためには体を動かしてお腹を空かせることです。
激しい運動は難しくとも、日々の生活をまめにこなして体を動かし代謝を上げ、お腹がすいたらおいしく食べてください。

対策2:ドキドキワクワクする楽しさを味わう
良い感情の高ぶりは、体が活性化します。
楽しいことを探して、元気に過ごしてください。

対策3:睡眠をしっかりとる、セックスはほどほどに
睡眠は体内の老廃物の解毒とエネルギーを充電する要です。
疲れたら十分休んでください。
過度のセックスは「腎」を消耗する筆頭と言われ命を削ってしまいます。

対策4:漢方の「補腎剤」を活用する
漢方の本場中国では、中高年になるとだれでも補腎剤を服用するそうです。
「年をとる=腎虚」の概念が浸透しているからです。
そのため中医学では体質によって補腎剤が様々あります。
日々の補腎で、体の消耗を回復しいつまでも元気で長生き、病気に打ち勝つ体を保ってください。

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なかなか治らない原因のひとつ:胃腸が弱い「脾気虚」

2023-05-20 | 胃腸
「なかなか治らないから漢方でも飲んでみよう」と訪れる人は多い。
なかなか治らない一つの要因は「治す力が足りない」から。
概ね、病が治るのは、薬の手を借りながらも、それを足掛かりに自分の治癒力が活躍しているからなのです。
例えば抗生物質は菌を殺すだけで、炎症を元に戻したり薬の副作用を防止するのは治癒力が担っています。
病気になった時は、体に良いものを食べしっかり休養をとろうと思うのではないでしょうか。それは治癒力を養う行為です。

中学的に「治癒力」を高めるにはどうするか。
その一つは「脾気虚」をフォローすること。
「脾気虚」つまり胃腸がこなす力が弱いと、少しずつしか食べられないし、食べたものをエネルギーに変える力も弱いので、毎日エネルギー不足で病気を治す力は足りず、疲れやすい。
ヤマウコギの花が咲いていた:ウコギ科の植物にはタラノキ、ウドなど山菜として食べられるものやオタネニンジン、エゾウコギなど胃腸の元気をつける生薬もある

・脾虚の特徴的な症状
お腹がすかない、たくさん食べられない、食べると腹が張る
腹部の不快感や鈍痛
下痢や泥状便、またはスッキリ出ない便秘
手足がだるい、疲れがたまりやすい
手のひらに汗をかきやすい

対策1:冷たいものを食べない
胃腸の働きが悪いのに、冷たいものを入れるとさらに動きが悪くなります。
これから暑くなる時期は要注意です。
漢方薬もお湯で飲むのがおすすめです。

対策2:お腹がすいたら食べる
胃腸が弱いからと言って食べることを休むわけにはいきません。元気を充電するためにしっかり食べて欲しいのですが、そうするとお腹が張って疲れてしまう厄介なタイプです。
よく噛んで、ゆっくり食べます。間食はやめましょう。

対策3:じっくり養生を続ける
というわけで、しっかり食べて充分なエネルギーをつくれる体にするには時間がかかります。
脾気虚タイプは、味の好き嫌いも多いようです。「食べている」と言いながら好きなものしか食べていなかったりします。中には、漢方薬の味さえ受け付けなかったりする人もいます。その場合は少量から始め、少しずつ量を増やしていきます。
とてもデリケートな体質です。普段の食事でもいろんな味にトライして食べられるようになりましょう。

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手汗が気になるというご相談

2023-05-16 | 肌トラブル・アトピー・美容
葦原で夏鳥のオオヨシキリがにぎやかに鳴くようになりました。
ギョギョシギョギョシと鳴くので「行行子」(ぎょうぎょうし)という別名があり夏の季語になっています。


さて、汗をかく時期になってお問い合わせがしばしばあるのが手汗。
たとえば、
手汗が気になるという十代女性。
肌はかさつくのに、手は汗でベタベタして気持ち悪い。
特に強いストレスや緊張があるわけでもない。
スマホなどを見ている時間が長く、外へ出て体を動かすことが少ない。

この状況で考えられることは、
・脾系が弱いと手足に症状が現れやすいと言われる「脾気虚」
・目を酷使すると「血を消耗する」といわれ、そして血不足で末端に栄養が届かないので肌はかさつき肌機能は衰えがち。
・汗をかく習慣がないので汗腺の機能は低下し、肌はかさつき、暑くなって発汗で体温調節しようにも全身から上手に汗をかけず、汗をかける部分に発汗が集中する。それは手や脇など。

対策
・スマホ類の見過ぎない(特に夜)
・戸外で積極的に体を動かし汗をかく練習をする
・体を動かして新陳代謝を上げる(気虚の改善)
・血虚対策の漢方薬で体質改善し肌機能をアップする
(この女性のお母さまが婦宝当帰膠を服用しているので、母娘一緒にこれを飲んでみることにしました)

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高齢者の夜間頻尿・やっぱり補腎活血

2023-05-11 | 老化・血流
昨日は薬剤師会の研修会で「夜間頻尿の診断と治療~高齢者を含めて」というテーマを学びました。
夜間頻尿はなぜ起こる?
睡眠障害、パーキンソン病や、心不全、腎不全などの疾患、過活動膀胱も原因としてあるのですが、最も多いのが加齢による夜間頻尿です。

加齢による夜間頻尿の原因は、動脈硬化による膀胱萎縮硬化と、脳の血流量低下、つまりかくれ脳梗塞が多いそうです。これは放置するとやがて認知症の危険性も高まります。

逆に言えば、夜間の排尿回数が増えたと思ったら、体内のあちこちの血流が悪くなっている、循環器系疾患や認知症の危険度も高まっていると考えたほうがいいのです。
ホオノキの花が咲いていた。この樹皮が生薬「厚朴」

西洋医学の治療薬は末梢での対策薬しかない(おしっこを出にくくする)のですが、中医学で改善対策を考察すれば、活血の漢方薬で脳の血流量改善データもあるし、老化はそもそも腎の弱りと考えられているので、補腎剤で、ホルモン系、腎臓、膀胱などの老化にも対応できそうです。
一時しのぎだけでなく、根本的に体に良いことはしておくべきですね。

もちろん、よく体を動かし、ストレス解消して気持ちに余裕を持つ時間を確保し、元気に毎日を過ごすことも老化予防には大切です。

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鳴神山の絶滅危惧種・カッコソウ、ヒイラギソウ

2023-05-08 | 植物&動物
友人が「花の百名山」の本で見つけて誘いを受け、何気に行った鳴神山(群馬県桐生市)。
素晴らしい植物の宝庫でした。
カッコソウ(勝紅草)、群馬県のこのあたりにしかない絶滅危惧種
サクラソウ科サクラソウ属
ヒイラギソウは関東北西部の一部にしかないこれも絶滅危惧種です。
小さな花のように見えますが、思いのほか大振りの植物でした。
葉っぱがヒイラギに似ています。シソ科キランソウ属。
ヒメイワカガミ。花が白い

ルイヨウボタン(類葉牡丹)メギ科ルイヨウボタン属。
花びらのように見えるのはガク片。
ヤマツツジが満開。
オオルリ、ミソサザイ、キビタキなどの声が降り注ぎます。
こちらはミツバツツジ
登山口ではフジが満開で、

下山後、赤城神社手前の覚満淵まで車で登れば、アカヤシオに会えました
アカヤシオ

鳴神山では貴重な植物をネットを張って守っています。
守る会の人々に話を伺えば、温暖化で雪解けが早くなり、生まれた鹿がすべて育ってしまうので鹿が増えすぎ、それが下草や木の幹を食べつくしてしまうのだそうです。
手前には点々とカッコソウが咲いていますが、ネットの向こう側の下草はなくなっています。