漢方薬剤師の日々・自然の恵みと共に

漢方家ファインエンドー薬局(千葉県)
http://kampo.no.coocan.jp/

体の十年周期と五臓

2022-11-28 | 老化・血流
10代 よく走る
20代 速く歩く
30代 歩き方が力強く、体がしっかりしている
40代 座りたがるようになり、肌のシワやシミ、白髪が出始める
50代 視力低下 老眼が気になる
60代 眠ることを好み、憂鬱になりやすい
70代 皮膚が乾燥する
80代 声が弱弱しく、話しにくくなる
90代 体全体が弱くなる

このような変化を知っていると、年齢を重ねて多少の不具合が現れても養生法がわかるので、むやみに心配しなくてもよくなりますね。反対に成長期は、速く走り力強く歩ける体にするために、積極的に運動することが必要です。

40代からまず気血津液が不足気味になるので、ストレス解消を心がけ、休息も十分にとるようにします。
50代になると「肝」の働きが低下し精血も不足しがちなので、無理を重ねないようにします。睡眠時間を確保することです。
60代では「心」の働きが低下すると言われ精神的に弱くなりがちで、不眠を訴えることも多くなります。運動や趣味などで気分転換を心がけるようにします。
70代では「脾胃」の機能が弱るので、火を通したものをよく噛んで食べるようにします。
80代になると「肺」の機能が落ち免疫力が低下します。食材では白いもの粘りのあるものが肺によいといわれます。
90代は「腎」の弱りが顕著になります。脾胃(胃腸)を健康に保ち、少量ずつ美味しいものを楽しみ、心地よく過ごすことです。
会話、笑い、趣味、散歩で気分よく過ごします。
昨日の谷津干潟、カワウの群れがたくさんやってきました

慢性耳鳴りの漢方対策 気持ちを和らげ補腎する

2022-11-22 | 老化・血流

耳鳴りは腎虚症状の一つです。50代以上の慢性化している耳鳴りの場合、心を鎮める対策と補腎が必要かと思います。

心を鎮めるとは、耳鳴りを気にしすぎてイライラしている気持ちを和らげることです。
人の脳は、気している音は強く聞こえて、ほかの音はあまり意識せずにいます。なので、リラックスするだけで耳鳴りの音があまり気にならなくなるのです。

(滋腎通耳湯は興奮している気持ちを和らげる生薬も配合されている)
補腎には、主に地黄丸類(六味丸を基礎とする処方類)です。
「耳鳴り」という効能が入っていない商品も多いので困るのですが、「腎は耳に開竅す」の理に則って地黄丸類を併用して体調を整えていただくとやはり経過がいいなあと実感します。

附)よく新聞やテレビで宣伝している耳鳴り漢方は当帰芍薬散で、これは血虚、脾虚湿滞タイプに用いる漢方薬です。顔色が良くない、胃腸が弱い、むくみやすい、生理前後に体調不良を起こしやすいなどの症状をもつ人の耳鳴りには良いかもしれません。

よくご相談になり、ぜひ耳鳴りから脱却してください

耳を傾けてる?イソヒヨドリ(上)とモズ(下)






流産を減らすために・種を植える前に畑を耕す

2022-11-16 | 子宝・妊娠体質つくり

流産はめったにない事のように思われているかもしれませんが、年齢とともに増え、40歳を超えると半数近くは流産するというのが現実です。

妊娠12週までの初期流産の多くは受精卵の染色体異常が原因で、つくづくヒトになるむずかしさを感じます。
完璧な遺伝子をパートナー双方が持ち寄ることが必要なのです。
しかし、年齢と共に遺伝子の正常分割ができにくくなり、40代になると受精卵の染色体異常割合は90%を超えると言われます。「卵子の老化」と言われますが、男性も同じように染色体異常は多くなります。

そして、一般に胎盤が完成する16週からは安定期と呼ばれ流産の危険性が少なくなるのですが、最近のデータによれば、妊婦が40代では20週前後でも胎児の成長が止まり流産することがあり、その原因はまだ明らかではないのですが、免疫的な問題や骨盤内の血流量の不足などが言われています。

ちなみに30代半ばからは血流量は半減しているとさえ言われています。
脅かすばかりで不安になりますが、一般のデータではこのような結果です。

その割には漢方服用で妊娠された方はとても流産率が少ないように思います。
なによりも、種を植える前に畑を耕す体づくりが必要ってことではないでしょうか。

先日は、流産が続いて精神的にも落ち込んでいた3人目希望の女性が、漢方で体質改善して無事に妊娠後期まで育ちました。ご主人とともに、補腎と補血活血や免疫的な安定化などを主に対策しました。


たくさんの実をつけたマユミです

これは山繭かな?先日の散歩道にて。

冬は漢方「補腎剤」で養生する

2022-11-10 | 冬の養生法
冬は「腎」を養う季節。
「腎」=「生命力」、冬を上手に過ごすことは生涯において大切なことです。
腎が弱っていることを「腎虚」といい、生命力、免疫力、自然治癒力が低下し、精力減退、足腰のだるさ、疲れやすい、病気になりやすい、骨や歯がもろい、健忘、耳鳴り、難聴などの症状が気になるようになります。

腎を補う漢方薬(補腎剤)で日本でポピュラーなものは、六味丸とそれに加味した八味地黄丸、杞菊地黄丸、麦味地黄丸(八仙丸)、知柏地黄丸(瀉火補腎丸)があります。

目立った症状がなくても、特に壮年老年代の人は、冬だけでも漢方薬「補腎剤」を活用して養生するとよいでしょう。

どれを飲むかについては、体質が大まかに2つ(陽虚、陰虚)あるので、
自身がどちらのタイプか知っておくといいですね。
陽虚:(温める力が不足している)冷え、寒がり、むくみ、夜間頻尿
陰虚:(潤いが不足して熱がこもりやすい)手足のほてり、のぼせ、寝汗、イライラ、不眠、目が渇く

ただし、年齢とともに腎精は不足気味になるので、動物薬も欲しいのですが、

筆頭は、スッポンと鹿の角です。なかなか食事で補うのが難しいところです。

立冬、冬の養生は「補腎」

2022-11-07 | 冬の養生法
今日は立冬。そして11月7日は「いい鍋」の日なんだとか。
温かいものを食べたいですね。鍋の中身をどうするか?
冬は「腎」を養生する季節です。そこで腎に良いといわれる食材を加えてみてはいかがでしょう。

腎に良いといわれるもの、
クルミ、黒ゴマ、黒豆、黒米などタネ類、できれば黒いものの方がよい
黒きくらげ、黒砂糖、牛肉、羊肉、鹿肉、
エビ、アワビ、牡蠣、うなぎなど海のもの、
長芋、ほうれん草、玄米茶、ほうじ茶、黒茶、プーアール茶など

そして温まるものは、
羊肉、牛肉、うなぎ、鹿肉、シナモン、ナツメ、ショウガなど

『腎は精を蔵し、成長、発育、生殖を主(つかさど)る』
「腎」は「生きる司令塔」ともいえる部分。
これをあえて西洋医学的に表現すれば、視床下部から脳下垂体そして各部のホルモン的な連絡網、さらに骨髄の血液や免疫細胞をもコントロールしているところといえるでしょう。
だから「腎」がしっかりしている人は、スクスク育ち、若々しく生殖能力も優れ、そして壮年老年期の不快症状も少ないのです

印旛沼にやってきたヨシガモはまだエクリプス
タゲリの群れが飛んでいきます。
冬鳥がどんどんやってくる印旛沼です。

早起きで不眠解消、早寝で脳の働き正常化・セロトニン、メラトニンの話

2022-11-02 | 気持ち・眠り
自分のことですが、年とともに?中途覚醒するようになり、たまには朝までぐっすり眠てみたいと、試しに「酸棗仁湯」を飲んでみたら、あっさり朝まで眠れて、漢方ってすごい!といまさらながら感心しました。
早めに漢方で微調整すれば、不眠の泥沼にはまらずに済みそうですよ。


さて、睡眠に関しては、寝る時間が短いと脳内にアミロイドβが溜まり認知症を発症しやすくなるのではないかという論文があります。
そして中医学では「睡眠は天然の補腎剤」と言われます。
「腎」とは生命力、つまりは老化予防の要。脳の働きにも関連しています。

不眠は解消しておきたいですね。

中医学的不眠のタイプはいくつかありますので、よくご相談ください。

ついでに、メラトニン、セロトニンというホルモンの話。
昼のホルモン「セロトニン」は幸せホルモンともいわれ、気持ちの安定をもたらし、日中を活動的過ごさせてくれます。朝日に当ったり、リズム運動などによっても分泌が増えるそうです。
一方、夜のホルモン「メラトニン」は睡眠を充実させたり、体のあちこちに存在して抗酸化の働きを担っているのですが、これはセロトニンを原料としています。

ということは、1日を元気に過ごす第一歩は、朝早く起きて陽ざしを感じることですね。
早寝早起きは三文の徳、とはよく言ったものです。