漢方薬剤師の日々・自然の恵みと共に

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東山彰良著「流」「ジョニー・ザ・ラビット」:面白い作家発見

2015-08-25 | 
面白い作家発見、と言っても今回の直木賞に輝いた人なのですでに超メジャーだ。

「流」(りゅう)

中国と日本に板挟みにされた複雑な政治背景に翻弄されながらも、荒っぽく生き抜く台湾の人々の話。
どっちの党に属するかなんて、たまたま食べ物をもらったか助けられたかで決めてしまうのが巷の民。

きれいごと抜きの本音の生きざまを書きまくっている、って感じ。
「あの頃の戦争はガキの喧嘩みたいなもんだった」
歴史教科書に書かれた文章の、裏の現実はきっとこうなんだろうと思う。
後半の祖父を殺した犯人を追求するストーリーに入ってからは勢いがつく。
戦後70年、私は戦争のことにさっぱり興味を持たなかったけど、リアルに知った気になった。

結構感動して、東山さんの作品をさらに探して出会ったのが「ジョニー・ザ・ラビット」
おそらくこっちの方が、東山さんはノリノリで書いている感じがする。

人間に飼われていた兎は、野兎なら欲しがりもしない「愛」なんてものを渇望するもんだから、人間のいざこざに巻き込まれて、悲しい運命をたどる。
そのいざこざというのがマフィアがからむ原発の利権争いおまけに原発が設計上危ういときて、この人の物語はまったく内容が濃い。
登場人物と登場兎が多いので、メモしとくのがおすすめ。

人間の愚かさがジョニーを通して心にキュンキュン染み入る。
兎の人生が人の十分の一と短い分だけ、愚かさが一層愛おしくて切なくなる。

東山彰良:(本名:王 震緒) 1968年台湾生まれ


「火花」の人気がすごくて、わざと遠回りしている感じだ。



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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
お久しぶりです (mi~ya)
2015-09-10 23:08:40
「流」ちょうど読んだところです。
私は全然知らない作家でしたが、すごく面白かったです。重い話を軽いノリの語り口で書いているのが気に入りました。
主人公が中国のことを「大きいものはとてつもなく…小さいものはあきれるほど…台湾や日本のような平均化を拒絶する、図太いうねりを感じた」という言葉にすごく納得しました。
「ジョニー・ザ・ラビット」も面白そうですね。読んでみます。
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mi~yaさんへ (やく)
2015-09-11 10:07:37
コメントありがとうございます。
東山さんの文章は、前後関係がわかりにくいところがありますが、
ストーリーはとても躍動感があり心が躍りますね。
それにしばしば、はっとするほどいいこと言ってくれます。
ジョニー・ザ・ラビッドは二度読みしてさらに切なくなりましたよ。

超スローペースの読書ですが、秋になって集中力がでてきたところです。
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