アブソリュート・エゴ・レビュー

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青空娘

2018-06-10 22:42:06 | 映画
『青空娘』 増村保造監督   ☆☆☆☆

 またしても若尾文子先生の映画を日本版DVDで鑑賞。もちろんヒロインの青空娘こと有子(ゆうこ)が若尾文子で、相手役は菅原謙二と川崎敬三のふたり。菅原謙二は『あなたと私の合言葉 さようなら、今日は』で若尾文子の婚約者を演じていた俳優さんである。

 まあそれにしても、昔の少女マンガみたいな映画だ。海辺の田舎ですくすくと育った少女、有子はおばあちゃんと二人暮らしで、なぜか両親と兄弟の住む東京の家から離されている。「なぜ私だけお父さん、お母さんと一緒に住めないのかしら? 私の健康のためと聞いたけど、病気ひとつしたことないのに」と独り言を言っていると、いきなりおばあちゃん危篤の知らせ。駆けつけた有子に向かって「東京にいるお前のお母さんは、お前の本当のお母さんじゃないんだよ、ハアハア」と息も絶え絶えに打ち明けるおばあちゃん。「えっ、それじゃ私の本当のお母さんは」「お前はお父さんと、お父さんの会社で働いていた女事務員の子供なんだよ、ハアハア。その人は満州に渡ったという噂だけど行方が分からないんだよ」直後、おばあちゃんは死ぬ。

 今となってはギャグとしか思えない、ものっすごくベタな始まり方である。東京の家を訪ねていくと、えらい立派なお屋敷。両親はお金持ちなのだった。が、有子は兄弟や母親から物置みたいな部屋をあてがわれ、女中扱いされる。「あなたは本当はこの家のお嬢様なのに」と憤慨する家政婦さん(ミヤコ蝶々)だけを味方に、ひがみもせず前向きに女中として働く有子。あまりにもけなげで健全な有子は、そのまっすぐな対応でまず小学生の弟と仲良くなる。次に、豪邸の庭で姉が男友達を集めて卓球パーティー(当時のハヤリだろうか?)をやっていると、女中として働く有子がなぜか大企業の御曹司・広岡(川崎敬三)の対戦相手として駆り出され、勝ってしまう。「君はうまいなあ」とニコニコする広岡。ふれくされるいじわるな姉。

 その後母親や姉のいじめが更にエスカレートしたため有子は家を出て、本当のお母さん探しをすることになる。その後は、母親探しと並行して有子の二見先生(菅原謙二)への恋心の顛末、広岡のプロポーズなどがメインとなって進んでいく。昔の少女マンガみたいなノリはずっと変わらず、たとえば有子の本当の母親が実は二見先生の職場で管理人をしていたなど、ベタベタな世界である。海に向かってあばよーとか、時代がかったノリも連発だ。が、話のテンポの良さと軽やかさ、そして有子のかわいらしさにいつしか魅了される。

 それからヒロインの女中扱い、継母のいじめ、求婚者(広岡)に靴を渡すなど、どうやら制作者はシンデレラを意識している。母親探しや二見先生とのエピソードなどはオリジナルなのでシンデレラそのまんまではないが、そのために、どこか現実離れした御伽噺のマジックがこの映画には漂っている。なかなか洒落ている。リアリズムではなく、魔法がかけられた世界なのである。

 さらに言えば、確かにベタなノリの連発なのだけれども、ところどころに紋切り型ではないハッとさせられる場面があって、それがこの映画をB級ではなく「本物」にしていると感じる。たとえばようやく母親と対面した有子が初めて母に抱かれ、自分は今初めておかあさんに抱かれていると呟くシーンや、病気で寝込んだ父親に意見をして、引き止められてもきっぱりさよならを言うシーンなど。二見先生に恋心を抱いていた有子が、それを振り捨てたことを一言も口に出さず表現する同窓会のシーンも秀逸だ。

 そしてそれよりも何よりも、初々しい若尾文子の魅力が全開である。とにかく美しく、可愛らしい。この和製シンデレラ=青空娘を溌剌と、これほどまでに瑞々しく演じることができるのはこの人以外いない。サポート役のミヤコ蝶々もいい味を出している。このところ若尾文子の映画を片っ端から絶賛しまくっているが、これまた若尾文子ファン必見の映画であると言っておきましょう。

 それにしても、自分も有子が好きだったのに彼女を諦め、広岡に譲った二見先生はなんともいじらしい。ええ奴っちゃなあ。
 

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