アブソリュート・エゴ・レビュー

書籍、映画、音楽、その他もろもろの極私的レビュー。未見の人の参考になればいいなあ。

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親密すぎるうちあけ話

2008-08-28 13:47:01 | 映画
『親密すぎるうちあけ話』 パトリス・ルコント監督   ☆☆☆★

 日本版DVDで鑑賞。久し振りにルコント監督の映画を観たが、なかなか良かった。『髪結いの亭主』や『タンゴ』ほどの鮮烈さはないが、ゆったりと円熟したタッチで、不安と官能をかき混ぜたような独特のムードを愉しむことができた。

 女が精神分析医の部屋と間違えて税理士の部屋に入り、プライヴェートな問題を打ち明ける。この発想が面白い。冒頭の薄暗くてメランコリックなムードもいい。無口でカタブツっぽい税理士のウィリアムもいい味出している。ウィリアムは誤解を解こうとするがうまくいかない。二、三回会ったところでバレる。女は怒って飛び出し、その後また戻ってきて謝罪し、また会う約束をする。ここで一旦、テンションが下がってしまう。虚構と誤解の上に成り立ったはずの二人の関係が普通の話相手になってしまうからだ。人違いのままストーリーを進めていくのはさすがにキツかったのだろうが、個人的にはリアリティを犠牲にしてでももうちょっと引っ張って欲しかった。これはどうせおとぎ話なのだから。

 このまま二人の対話が平坦に続いていくのかと落胆していると、本物のセラピストの「彼女には本当に夫がいるのか? 彼女は本当に部屋を間違えたのか?」という問題提起でまた興味をかきたてられる。何が本当で何が嘘か分からない、という私の好きなパターンだ。しかしこのアイデアもあまり掘り下げられることなく、すぐに夫その人が登場し、今度は風変わりな三角関係へと発展していく。なかなかはぐらかしが多くて先が読めないが、意外にサスペンスフルな展開で飽きさせない。

 妻を愛していながら触れることができず、嫉妬しながらも愛人を持てと迫る夫や、精神分析医の真似事をしながらいつの間にかモニエ先生(本物の精神分析医)の診療を受けているウィリアムなど、ルコント独特の奇妙なよじれ感は愉しい。全体のムードは比較的シリアスだが、ウィリアムが踊るシーンなど多少のコミカルさもある。私が笑ったのはモニエ先生の所に通っているエレベーターに乗れない男と、アパートの女が見ているテレビのメロドラマである(神父と浮気してる人妻の話だが、この女は神父がゲイだと知ってショックのあまり自殺を図る)。
 
 話が進むに連れて映像が明るく、アンナの服装が軽やかになっていくのが印象的だ。ウィリアムの部屋の中で大部分の物語が進行したあと、終盤で映し出される南仏の映像の開放感と美しさはたまらない。姿を消したアンナがバレエを教えているのも、大人のおとぎ話らしくていい感じだ。

 アンナ役のサンドリーヌ・ボネールは『仕立て屋の恋』の主演女優。もうかなりの歳だと思うが魅力的なヒロインを演じている。ルコント監督の最上の作とは言わないが、フランス映画らしい美しい映像と情感は充分に味わえる。
 

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