崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

婦女売買

2013年03月30日 04時11分57秒 | エッセイ
 キャンバス内の桜が満開していても寂しい。花冷えが長く花見の気持ちになれず、また一本だけの桜は寂しい。桜は群花である。
 同僚の山本達夫准教授が主宰する「西日本ドイツ現代史学会」で専修大学の日暮美奈子氏の発表「婦女売買の作られ方」が印象的あった。1920年代のドイツブレーメン港における婦女売買をめぐって植民地、越境、プロテスタントの伝道などの問題点から警察の記録を分析した内容であった。私はサハリン日本警察の朝鮮人調書などを分析したこともあって特に関心があった。この発表を聞きながら刺激を受け、もう一度私もその警察文書に戻って研究したくなった。
 「女中」ということなどをもって人権的な意識を持っている一般市民の「通報」と警察の「確認」の対応関係の分析が行われた。私には大いに勉強になった。婦女売買を扱う論文でありながら性的暴力、売春などの性的モラルについての言及はほぼないのはどうしてだろうと質問し議論した。一般市民の「通報」というのは一般的に多く性的、あるいは職業差別的な性モラルや人権を意識するはずであるが、警察側は性行為や女中などよりは犯罪性に注目して「確認」するところの視野が異なることがわかって納得した。これが論点になって欲しい。