崔吉城との対話

日々考えていること、感じていることを書きます。

孫基禎

2013年03月02日 02時44分19秒 | エッセイ
 昨日、3月1日は韓国の国慶日の一つであった。日本植民地の統治に反抗した記念日である。数年前までは民団の記念式には呼ばれて参席したことがあるが、昨日はなにも連絡がなかった。民団がその記念行事をしなかったのか、民団の存在が希薄になったのだろうか。リーフェンシュタールの映画『オリンピア』を鑑賞した。1936年ベルリン五輪マラソンで 韓国人の孫基禎が金、南昇竜が銅メダルを取った生き生きした記録が映っていた。当時は日本植民地時代であり、日本国の選手として称賛された。しかし東亜日報は8月25日孫基禎のシャツに貼り付けられていた日の丸を消して報道し、日本政府は東亜日報の記者8人を懲戒とし、9ヵ月間停刊措置をした。孫基禎は朝鮮半島の北部生まれであり、戦後韓国と北朝鮮が国籍復帰運動を起こした。しかしIOCは当時の記録は歴史なので変更できないといった。
 またベルリン五輪の当時はナチス党政権下にあって、リーフェンシュタールがナチス党を正当化したのではないかとして罪に問われた。彼女は「ありのままを撮った」という。映像美によってナチス党の強大さが伝えられていると評価された当時、多くのドイツ人がヒトラーに熱狂したように彼女もそれによって罪に問われることはあってもそれ以上問われることはなかった。政治家や思想家でもなかった映画監督がその罪に問われたことは世俗的な世間の視線によるものである。ただ彼女の作品は美しく光っている。これもプロパガンダであろうか、現在作られている多くの映像もプロパガンダ的であるものは多い。いま映像を通じてそれについて考えている。