『ショパン 孤高の創造者』 [著]ジム・サムスン
「ピアノの詩人」と呼ばれる作曲家の生涯は、その音楽よろしく、ロマンチックな装飾を加えて語られがちだ。
本書は信頼できる資料を手がかりに、想像力による脚色をていねいにはぎとり、人間ショパンの実像に迫る。恋人ジョルジュ・サンドやその家族、ドラクロワやリストといった友人との関係性は、実に微妙な距離感の中で成立していた。楽譜出版社と交渉する際の抜けめなさは、だれの商人顔負けだ。
年代別に並べた楽曲分析が、生涯と音楽的成熟の関連をわかりやすく示す。ショパンの死後、その音楽がどう受容されていったかに触れた部分は、彼の「伝説」がどのように作られていったかを知る手がかりになる。
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大久保賢訳、春秋社・3675円 2012-03