今日のひとネタ

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「ネオンサインと月光仮面 宣弘社・小林利雄の仕事」/佐々木 守

2022年11月21日 | ブックレビュー

 

 図書館で見つけた本ですが、タイトル見て「なんじゃ?」と思いました。宣弘社はわかりますし、月光仮面もわかりますが、ネオンサインはなんじゃろかと。

 それで読んでみたら話はわかりました。宣弘社というのは元々広告代理店で、戦後銀座のネオンサインというかあのきらびやかな電飾の広告看板を作ったところで、そこの社長が小林利雄さん。そして、「月光仮面」やら「光速エスパー」「シルバー仮面」「アイアンキング」などの番組制作をした宣弘社プロダクションもこの小林さんが社長で、番組プロディーサーまでやってたと知って驚きました。

 この人は昭和21年に復員し、父から宣弘社の仕事を受け継いでまずやったことは銀座四丁目の空をネオンサインで明るくすること。東京の復興を夢見ながら銀座の夜空を見上げて「暗すぎる。ここをまず明るくすることから始めよう。」と考えたそうです。

 私はネオン広告というと、広告代理店が企業をそそのかして広告料をせしめる材料だと思ってたのですが、戦後の復興のシンボルとして夜空を明るく飾るものであったと知って、ちょっと考えを改めました。

 その小林さんが海外も視察し、日本のみならず香港、台北、バンコクの空までネオンで照らした話は大変面白いですが、この本を書いたのが佐々木守先生であって、私としては佐々木先生がテレビ番組の台本を書き始めたあたりの話が凄く面白かったです。

 特にすごいのが「柔道一直線」の脚本を書いた時のこと。そもそもその時間帯には「妖術武芸帖」をやってて、四月開始なのが最初からどうも視聴率が上がらず早々に六月での打ち切りが決まったのだそうです。

 それでいきなりTBSのプロデューサーに呼び出されて漫画を2冊渡され、「お前ならこれをどう脚色する?」と。それが「柔道一直線」だったのですが、佐々木先生は「柔道とは二人で闘うスポーツだ」以上のことは何も知らなかったと。

 それでも、その原作本と柔道入門などの本を渡され「明日の朝までに二回分の台本を書け!」と言われたのだとか。これ以上ないほどの無茶ぶりですが、凄いのはちゃんと翌朝には二回分の台本を仕上げたということ。驚くべき仕事人ぶりです。

 この人はスポーツ全般疎いのですが、「男ドアホウ甲子園」の原作を書いた時のことも面白くて、水島新司先生には「今どき甲子園球場が大阪にあるなんて思っている人に初めて会いましたよ。」と笑われたそうです。何しろ主人公の家は甲子園球場の真ん前にあるのに、反対側の窓を開けると大阪城が見えるなんて当然のように書いていたということですし。

 この本には「月光仮面」の台本とか、「シルバー仮面」「アイアンキング」の初回の台本まで掲載されていて大変面白いです。実は図書館から借りてきたのですが、これは手元に置いておきたいと思ってネットで探したら、なんと今は新品では入手できず。中古は結構なお値段になってました。まあ近所の図書館にあっていつでも読めるからいいですけど。

 とにかく、宣弘社プロダクションの番組とか佐々木守先生のお仕事に興味がある方なら絶対面白いと思います。手に取る機会のある方はご覧下さい。