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やっと読みました>「上を向いて歩こう」佐藤剛

2022年11月27日 | ブックレビュー

 

 前から読もう読もうと思ってた本を、秋の夜長に読み始めたら止まらなくなってしまいました。ちょっと前に入手してたものの、約330ページのボリュームに躊躇してましたが、実際は面白くて読み始めたら一気です。

 これはタイトルの通り、坂本九さんのヒット曲「上を向いて歩こう」についての本。この曲がいかにして生まれ、どういう経緯で海を渡って全米No.1ヒットにまでなったかというのを、佐藤剛さんが膨大な資料の精査と当時の関係者への綿密な取材により解き明かしたものです。

 実際にこの本の「はじめに」でも、「実際に『上を向いて歩こう』の資料や参考文献に当たってみてわかったのは、確かなことが何一つないという、意外な事実だった。」「肝心要なところが、いずれも伝聞や憶測に基づいたもので、事実は曖昧だった。」と書かれています。

 この曲は私が生まれる前にリリースされ、全米で大ヒットした時にもまだ生まれていなかったので、当時の取り上げられ方は知りません。アメリカでは「SUKIYAKI」というタイトルだったのは知ってましたが、恥ずかしながらあちらでは英語の歌詞にしてリリースしたと思ってたくらい。「うちに帰ってスキヤキ食べよう。」という歌詞にしてあるというのをどこかで聞いたのですが、あれは完全にガセ情報でした。どこで聞いたのやら…。

 それがこの本を読んで、坂本九さんのレコードをたまたま入手したアメリカのラジオDJが気に入ってオンエアしてみたら問い合わせが殺到し、その後大手のレコード会社からリリースされたという経緯を知って、一種サクセスストーリーを見るようでその流れが一番ワクワクしました。

 ただ、その経緯も諸説あり、ワシントン州のローカルラジオ局で数回オンエアされて話題になったからといって、日本語の曲を大手のキャピトルレコードがすぐリリースしてくれるとは通常考えにくいということがあります。

 それがどうだったかというと、実際事実だったというのは佐藤剛さんが突き止めたのですが、その経緯とキャピトルレコードのキーマンが誰だったかというのもこの本に記されています。面白いエピソードとしては、その人は坂本九さんの歌声を女性だと思っていたとか、あらためてレコーディングしたのではなく日本のレコード盤をマスター音源として利用したとかいうのがあるのですが、そのあたりは実際にお読みいただくのがよろしいかと。

 何気なく聞いていた曲ですが、中村八大さんのメロディーはもちろん、坂本九さんのあの裏声を交えた「ウォ ウォ ウォ ウォ」という唱法、イントロや間奏で見られる構成など、ヒットするには様々な要素があったことがわかって、そこに中村八大さんの音楽人生、坂本九さんの生い立ち、作詞の永六輔さんの思いと、当時のレコード会社や芸能プロダクションの事情までわかって本当に読みごたえ十分でした。これは10年以上前の本ですが、もっと早く読んでおけばよかったとしみじみ思います。反省にも近い感じで。

 音楽とは、ヒット曲とは、歌手とはなんだろうとか色々考えさせられますね。それにしても凄い本です。今では電子書籍でも読めますので、この記事を読んでいただいたすべての方々にお勧めします。どーですか、お客さん。