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久しぶりに見た「小椋佳の世界」はかなり凄い世界でした

2021年09月16日 22時22分11秒 | TV番組レビュー
 
 先月NHKBSで再放送してたのがNHK特集「小椋佳の世界」。1970年代半ばにレコードは大ヒットしてるものの、メディアには一切登場しなかったのが小椋佳さん。それを関係各方面が本人をその気にさせて、一度だけコンサートに引っ張り出したのが1976年10月。

 この番組はそのコンサートに臨む本人の取材と、コンサートのダイジェストで構成されたもの。コンサートのちょっとあとにこれが放送され、当時はこれとは別にコンサート本編の放送もありました。当時私は中1で、普段演歌しか聞かないような父や、たまたま家に来ていた叔母、兄も一緒に見てたと記憶してるので、世間の注目も高かったのでしょう。

 当時は「ふ~ん」と思って見てたのですが、今あらためて見ると凄い世界です。レコーディングの場数は踏んでるとはいえ、ほとんど人前で歌ったことのない人が初のコンサートをNHKホールでやって、しかも一流ミュージシャンとオーケストラをバックに20曲くらいやるということで。

 この特集の冒頭では、当時勤務していた第一勧銀での仕事中の様子もあったのですが、これがコンサートの10日前。初のステージリハの日ですが、上司との「これからNHKなので、今日はこれで上がらせて貰います。」「仕事の段取りは大丈夫ですか?」「ええ、それは無事に。」とかいうやりとりもあって、「げっ、初めてリハやるのにこの人は午後まで普通に仕事してたんか。」というのがまず衝撃でした。私だったら朝から休んで必死で歌詞を覚えることでしょう。

 その事前のリハーサルは何回やったのかはわかりませんが、ステージでの打ち合わせでは「ここは禁煙ですか。吸っちゃダメ?」とか「飲み物はコーラがいいです。」とかそんなリラックスした様子もありました。

 さらに曲が終わってからおじぎをするのにマイクスタンドはちょっとずらした方がいいのかとスタッフに確認したり、「自分の手元には色々置いて欲しい。」とか要望を出したり。「とにかく落ち着かないので、浪花節の人がやるように前に台が置いてあるといい」という話でしたが、実際の本番では椅子に座った右手に小さいテーブルがあって、そこに水差しがあるという感じでした。

 番組中盤からはコンサートのダイジェストでしたが、本番のステージではMCは訥々としてるものの「とにかく顔を出したくないので今日は色の付いた眼鏡をしてますが、本当は覆面を被りたかった。」とか「歌手の人がやるように盛り上がるところでタ~と手を挙げるようなことをやりたいのですが、そういうのはできないので皆さんは目を閉じてそうやってるように想像して下さい。」とか、結構笑わせてたのも凄いです。

 実際の歌声は、レコードと遜色ないというか初ステージでよくあれだけ落ち着いて歌えるものだなあと本当に驚いてしまいました。自分としては、当時は何を見ていたのだろうとも思うのですが、大人になって色々世の中の事情を知ると見えてくるものがあります。曲の構成を覚えるのも大変だろうし、生バンドをバックにしてモニターの具合を確認するのも初めてだろうし、照明が凄いとか、カメラがあるけどどこを向いて歌ったらいいとか、細かいところを考えるとゾッとします。

 あとは、椅子をずらしてスタンドからマイクを取って立ち上がったり、アンコールの弾き語りでギターを持つときも全部本人が一人でやってたのもびっくり。そういう時って、脇からスタッフが飛んできて椅子をはけたりケーブルを捌いたりするもんだというイメージがあったので。普通の芸能人とは違うからマネージャーというのはいないでしょうし、番組スタッフとミュージシャンがいたとはいえああいう太平洋ひとりぼっち状態で、ステージを最後までこなすのは本当に大変だっただろうと思います。

 このコンサートの様子は翌月11月15日に「遠ざかる風景」というタイトルで2枚組ライブ盤として発売され大ヒットしました。(当然オリコン1位) コンサートが10月7日だったので、収録から発売までが随分早いですね。修正箇所が少なかったのか無かったのか、それだけ当日のクオリティが高かったのでしょうけど。

 なお、当日のミュージシャンはWikipediaによると以下の通り。

ボーカル:小椋佳 
ドラム:村上秀一
ベース:岡沢章
ギター:椎名和夫
アコースティック・ギター:笛吹利明、安田裕美
キーボード:渋井博。大原繁仁
ラテン・パーカッション:川原直美、ラリー寿永
パーカッション:生見慶二、山本直美
フルート:西沢幸彦、衛藤幸雄
オーボエ:坂宏之
サクソフォーン:村上健
コーラス:シンガーズ・スリー

 ストリングスセクションもいたと思うのですが、そこは記載がないです。当時は小椋佳さんの右後ろにいた長髪でひげのギターの人がすごく印象的だったのですが、どうみても安田裕美さんですね。あとは、今回ストラトを持ったギタリストがちらっと見えたのですが、あれが椎名和夫さんなのですね。当時はテレビも小さかったし、ステージのこまごましたものはほとんど見えなかったので、今回は新しい発見もありました。ちなみにトップの画像はステージリハの様子で、指揮をしてるのが編曲の星勝さん、ギターが安田裕美さんです。当日は小野崎孝輔さんもいたので、指揮は星さんと小野崎で分担してたのでしょうか。

 なにしろ当時私は甲斐バンドとかアリスとかが好きだったので、「小椋佳か。流行ってるから一応見ておくか。」と思っただけですが、そりゃまあ中1男子が「小椋佳最高!」と言って部屋にポスター貼ってたりしたら、かえって「お前大丈夫か?」と言われた事でしょう、それでも今もこの番組は鮮明な記憶として残ってたので、とにかくクオリティが高いものだったのでしょうね。

 なお、酒井政利さんの「プロデューサー」という本には寺山修司さんが主宰してた劇団「天井桟敷」の勉強会を見に行った時のことがあります。寺山さんの提案で歌作りが始まり、劇団員や研究生に一つずつ好きな言葉を挙げさせ、それを繋いでできた詞に「神田、ちょっと曲をつけてみろ。」とある男性に指示。この神田紘爾さんがのちの小椋佳さんなのだそうです。もしかして劇団では音楽担当だけで、お芝居に出てた事はないのかもしれませんが、あのNHKホールのステージでの落ち着いた様子の背景には色んな経験が隠れているのでしょう。

 ちなみにこの時のライブは、私はごく最近Spotifyで聞いたのですが結構気に入ってます。大人になるとわかるというものがあるのでしょう。関心を持った方は是非どうぞ。
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