駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

巡り来た師走

2008年12月05日 | 世の中
 いつの間にか十二月になった。本当に時の経つのは速い。ブレーキが効くものなら、サイドブレーキをぐっと引きたいところだ。
 十二月は子供の頃から好きな月だ。それは一つにはクリスマスがあってプレゼントが貰えたから、もう一つは何となく慌ただしく忙しない師走の特別な雰囲気が好きだからだ。
 世界各国の年末がどんなか知らないが、日本の師走のような感じがあるのだろうか。北半球のキリスト教国は冬の訪れとクリスマスが重なるので、澄んだ冷気と宗教的な雰囲気で独特な美しさが漂うらしい。写真はパリ在住の友人が送ってくれた今のシャンゼリゼ通りのイルミネーションだ。幾何学的で静的な美しさがある。
 日本の、大晦日に紅白歌合戦を見て除夜の鐘と共に年を送ってしまう習慣の中には、過ぎたよしなしごとを全て水に流して、新しい再出発を迎えることができるようにする知恵が隠れているような気がする。日本人は毎年、小さく生まれ変わることができるシステムを持っていると言えるかもしれない。
 いつまでも、と日本人には感じられる、戦前の記憶を今に顕わにする国々とは感覚が少し違う。忘れようとしない裏の権謀術数に健忘症状で対応しているわけではないだろうが、水に流すのは傷を深くしない知恵かもしれない。こうしたことの功罪を論ずるのはどことなくあざとい感じがして、真っ当でない気がする。長い年月をかけて、しかも共感が生まれなければ消化できない事柄だろう。
 子供心というのは不思議なもので、大晦日とかお正月が来ると大人が忙しなくしていると、自分は何の助けにもならないのだが、なんとか役に立って迎え撃たなきゃというような気がして、どこか緊張していたのを思い出す。そのくせ「もうすぐ除夜の鐘が鳴るわよ」と母に言われて頑張っていても、いつも鳴り始める前に寝てしまったものだ。
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