駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

オンライン診療 小感想

2020年10月16日 | 医療

                          

 

    新型コロナ対応で日本行政のデジタル化が遅れているのが露呈し、慌てて遅れを取り戻そうとデジタル庁なるものが作られる。庁を作るからには相当深い考え見通しがあるはずだが、どうも単にいろいろな手続きをデジタル化しようということが先行し、いったい何をどうしようとするのかがまだよくわからない。

 オンライン診療は二年半前から導入されていたが普及は進んでいなかった。そこに新型コロナが流行し、患者さんが医療機関での感染を恐れ受診抑制が起きた。そうなると、たとえば慢性疾患では不断の管理が必要なため、中断すると基礎疾患の憎悪や合併症の発生が起こりやすくなる。それを防ぐため、厚労省は直接医院を受診しなくても診療可能なオンライン診療を進めるように動き出した。

 黒船を持ち出すのは大げさかもしれないが、変化を嫌い今まで通りを好む日本人を動かすには外圧というか強いきっかけが必要で新型コロナが後押しする形になっている。

 さてオンライン診療というのはどういうものか、と言いながら電話再診以外はやったことがないので老医の感想を書いておこう。オンライン診療は医院を受診しての診療に比べると医師にとっては得られる情報が質量共に(触診聴診ができないし対面での感覚が欠如する)不十分になり不全感が残る。普段見ている患者さんで八割、初めての患者さんでは五割程度ではないかと思う。そのためにいわゆる見逃しが起きる心配がある。それを承知でオンライン診療を選択したということで医師ではなく患者さん側に責があることになっているようだ。医師会は初診患者のオンライン診療には難色を示していたが、画像があれば初診患者も可能ということで押し切られた。

 勿論、たとえば高血圧症でかかりつけの患者さんなどは自宅で血圧を測定し安定していればオンライン診療で問題ないと思う。ただそれでも、わずかな不全感は残ると申し上げておきたい。消えゆく老医の感傷だろうか?。

コメント
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