診療報酬改定は年度末ぎりぎりに発表されるため、医療機関は対応に追われ、その内容を吟味批判するタイミングを失ってしまう。それはお役所の狙いなのかもしれない。
診療報酬改定の大筋には異論はないが、末梢の具体的な手続き変更には理解しがたいものがいくつかある。例えば、往診に行く理由と行った時間を記録提出するように求められているが、要請や必要性がなく往診に行くわけがない。往診の時間をなぜ記載させるのか。当院は午後の一時間を往診に充てている。一時間に四軒が限界で、しかもこれは看護師が患家と交渉して同じ地域を回れるように工夫しているからで、方向がバラバラでは一時間では回りきれない。臨時の往診が入った時には昼休みを短くして早めに出かけている。年に平均六枚の死亡診断書を書き、胃瘻チューブ、気管カニューレ交換や膀胱洗浄なども行ってきた。往診料が高いか安いかは知らないが、まともにできる限りのことはしている。高々数十秒といっても診療以外のことに頭を使わせ、なぜ事務仕事を増やすのか。医師の診療を事務仕事で圧迫しないで頂きたい。しかもこうした要請は診療意欲を高めるものではない。
診療報酬改定の説明会では業者と結託して往診斡旋を受けている医療機関があるからということであったがそれは極く一部の不心得医療機関のことで、そのためにまともに仕事をしている医療機関を巻き込まないで頂きたい。
適正な診療は情報公開と患者教育によるのが本筋で、診療報酬請求法の技巧を凝らして事務量を増やすのはお役所思考と申し上げたい。それはいたちごっこになり、手続きを複雑化させてゆくばかりだ。