駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

真実十路

2008年05月12日 | 診療
 緊急の処置が必要な急性疾患、例えば心筋梗塞や腸捻転などでは、95%医師の指示通り治療が行われる。患者さんは苦しいから受診したので、病名を告げられて、なるほどでは死んでもいいので治療しませんと言う人は経験していない。100%でないのは、数%の患者さんは家族知人などの勧めでもっと良い?医療機関への転院を希望されるからだ。
 ところが自覚症状がなく、むしろ飯が旨くて疲れを知らない健康感のある人に高血圧や糖尿病が見つかった場合はなかなか一直線には行かない。たまたま風邪で受診された患者さんで血圧が高かったり、尿糖が陽性だったりした時は、一通り家庭血圧測定や血液での再検査をお勧めする。一通りというのは医師の義務というか心得としてとゆう意味。というのは風邪を診て貰いにきたのに余計なことを、私を病気にしようというのですかといった反応のこともあるので、自然さりげなく言うようになってしまった。過不足なく医者の言葉を受け取り、反応される方は残念ながら多くはない。これが初診でなく、掛かり付けの患者さんの場合は素直に聞いて頂けることが多く、血圧計を貸し出したり、血糖検査に再受診して頂いたり出来ている。健康診断で異常を指摘されて受診された場合も、うまく治療に入っていけることが多い。非常に希だがお貸しした血圧計が患者さんと共に行方不明になることがある。ま、いいか、そびれるということは誰にも時にあることだからとあきらめている。
 高血圧や糖尿病は生活習慣の是正が治療の第一歩なので、必ず指導している。原則として薬は出さない、重症や病歴が明らかな場合は別。これでどれくらい良くなるか、どれくらい頑張れるか(通院を続けられるか)を慎重に見届けないと、治療に失敗する。失敗するというのは通院されなくなってしまうということ。もちろん他の医院で治療を続けられればそれでいいのだが、そういう人はそうではなくて日常の忙しさ?にかまけてサボってしまうのだと睨んでいる。
 これがよいかどうかわからないが当院は来る者は拒まず去る者は追わずという方針なので、いつの間にか来院されなくなった患者さんに受診するように連絡していない。ただし、通院中の患者さんに検査などで異常値を認めた場合は直ぐ連絡している。
 反応を見極めて必要な場合、薬を出すのだが、ここでまた飲み出すと止められないから薬を飲むのは嫌だという人(ほとんど女性)が出てくる。なんとも不思議な理由なのだが、こう言われる患者さんは結構多い。それでは弱い薬で始めしょう、体重を減らせたり運動を続けて止められることもありますからなどと説明して、なんとか飲んでもらう。
 これは様々な対応の枝分かれを一部紹介したに過ぎない。町医者はどうしてもその人なりに対応して行かざるを得ない、そしてそれはそれぞれに真実と言えるわけで、どうも山本有三のようには行かない。「コブちゃん、おわかりかな」と言ってみたくなる。
コメント
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