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駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

オッサンの壁

2022年05月06日 | 
               

 佐藤千矢子さんの「オッサンの壁」講談社現代新書を読んだ。佐藤千矢子さんは毎日新聞の政治記者で政治部長を経て現在論説委員をされている。二十年以上典型的なオッサンが溢れる政治を取材しその周辺で働き、おっさんの壁を感じ、こんなことで良いのだろうかなんとかしたいと書かれた本だ。
 オッサンとは男性優位に設計された社会で、その居心地の良さに安住しその陰で生きづらさや不自由さや矛盾や悔しさを感じている少数派の人達の気持ちや環境に思いが至らない人達のことだ。勿論、オッサンでない男性も居るしオッサン的な女性も居る。
 佐藤千矢子さんが明かされるオッサンの生態は予想通りだった。時代が変化し、僅かにオッサンの壁が薄くなってはいるようだがまだまだ壁は厚い。この本を契機に壁を崩す動きが大きくなれば良いと応援したい。
 佐藤千矢子さんの意図と多少ずれるかもしれないが、一番歯がゆかったのはオッサンに凝り固まった権力志向の政治家が横行し日本の政治を牛耳っていることだ。それはオッサン追認で安住しようとする人達が背後に居るからでもある。オッサンのは壁は既得権擁護の壁でもあるのだ。
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シャーウッド・アンダーソン

2022年01月25日 | 
        

 余程の文学好きでなければワインズバーグ・オハイオは知らないだろう。アメリカ文学など、読んだことがあるのはマークツウェイン、スタインベック、フォークナー、トルーマンカポーティ、ハーパーリー、オーヘンリー位のもので、ネットでブログを書いていなければシャーウッド・アンダーソンを知ることはなかったと思う。風が吹けば桶屋が儲かるではないが、ブログを書き始め林哲夫さんのブログを見付けて、それが縁で山田稔の随筆を読んで、シャーウッドアンダーソンと大橋吉之輔を知った。
 ワインズバーグ・オハイオの何編かを読んだが、不思議な魅力は感じたが素晴らしい作品とは思わなかった。自分に文学的な才能というか感性が不十分なせいだろう。大橋吉之輔という人物にも奇妙に惹かれるものを感じいくつかエッセイを読んでみたのだが、「地名や人名には呪縛的な魅力があって考え始めると身動きができなくなるほど面白い」と書いてあるのを見付けて成る程だからこの人に興味を持ったのだと合点がいった。彼自身もワインズバーグの住人だったのだ。
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コロナ対策の費用対効果

2021年12月29日 | 
           

 もう二年になるのに、新型コロナ対策の多面的客観的な評価は殆どされていない。終息していないのに早過ぎるということはない。歩きながら考えることが大きな間違いを避ける良い方法だからだ。
 経済が専門の原田泰氏の書かれた「コロナ対策の費用対効果」ちくま新書、は幅広い視点から書かれた途中経過での得がたいコロナ対策総括になっている。総括は私の年代には懐かしい言葉だ。総括と言いながら十分な包括をしなかったので学生運動は花を咲かせず実を結ばなかった側面があるとほろ苦く思い出す。
 それはさておき、責めるために責め守るために守ることになりがちな政治的な評価から離れて新型コロナ対策を評価分析しているこの本は貴重で重要だ。与野党マスコミの人は熟読し反省再検討軌道修正をしていただきたい。
 PCR検査のスンナ派とシーヤ派はセンスのある表現で的確にその意味結果を分析してある。スンナ派の頭隠して尻隠さずは日本のお家芸のようで、頭を隠すと問題が見えにくくなるので問題が解決したような気になってしまう危うさ、安心でなく安心感のために過大な費用を使ってしまう不合理が表や図を駆使してわかりやすく論理的に示されている。断定的でなく偏りも少なく新型コロナを考えるに必須の本と思った。
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今年読んだ本

2021年12月23日 | 
              

 年末になると今年のベストテンとか収穫と言った企画で、本や映画の作品が取り上げられる。今年も映画館へ一度も行かなかった。本の方は三十冊くらい読み、七十冊くらいに目を通したと思う。
 「憲法で読むアメリカ史」「日本の歴史をよみなおす」「イメージを読む」「現代経済学の直感的方法」「同調圧力」「日本再生のためのプランB」「利他とは何か」「悲しみとともにどう生きるか」「喫茶店の時代」「垂直の記憶」「財務三票一体理解法」・・他に、梯久美子さんのエッセイ旅行記、黒木亮さんのエッセイ小説、内田幹樹の小説、藤本和子さんのエッセイ「父を撃った十二の銃弾」「嫌われた監督」「アウシュビッツの地獄を生きて」など、全部は思い出せない、趣味理系の本は省いた。プリアサバランのように読んだ本で成程こういう人かと断じられては敵わないが、傾向は出ているだろう。さんを付けた著者はエッセイを読んだせいもあるが近しく感じる人達で機会があればお会いしたいと願っている。
 これ以外にも以前に挙げた何度も読む著者があり、今年も寝しなや合間に何度も読んできた。活字で知ることのできる世界は人生を豊かにしてくれる。
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嫌われた監督

2021年11月18日 | 
             

  久しぶりに凄い本を読んだ。落合博満のことは以前ブログにも書いたことがあり、密かに高く評価していたのだが、鈴木忠平の「嫌われた監督、落合博満は中日をどう変えたのか」を読んでますます落合に魅力を感じるようになった。
 鈴木忠平氏は素晴らしい書き手でこの本はベストセラーになると思うが、面白いだけでなく深みがあり価値あるロングセラーにもなるだろう。
 落合監督下の中日の選手や球団関係者の目を通して落合がどのような監督でどのように采配を振るったかが、まるで体験しているように活写されており一気に読まされてしまう。落合という不思議な魅力ある人物を描いているだけでなく落合を嫌う日本社会の特質も浮かび上がらせている。国民の必読書などと妙なことを口走りたくなる本で自信を持って一読をお勧めする。
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