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駅前糸脈

町医者をしながら世の中最前線の動きを感知、駅前から所見を発信。

ロシア的人生

2023年04月08日 | 

            

 

 小野寺健先生にイギリス的人生という本がある。味わい深くああそうなんだと目を開かされる名著で、文学を通してイギリス的人生を解き明かされている。先生には読みやすく手頃な心に残る言葉というベストセラーがあるが、短い言葉では表し切れない中身がこの本には詰まっている。勿論、文学だけが人間性を明らかにする創作手立てではないだろうが、文学でなければ辿り着けない広がり深みがあると思う。

 そこで読みたいのがロシア的人生である。沼野氏や亀山氏に類書はあると思うが読めていない。何となくちょっと重苦しく小野寺先生のような手触りではない感じがするからだ。それもロシア的ということかもしれない。しかし、プーチンとロシア国民のしでかすことをよりよく理解するには文学者によるロシア的人生が必須のように思う。

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我が国に迫る危機 日本銀行

2023年04月03日 | 

            

 

 医学書を読む時間が少しづつ減ってきて、様々な本を読むようになった。唯、漫画は読まない。三十くらいまでは結構読んだのだが今は読めない。「日本銀行 我が国に迫る危機」 河村小百合 講談社現代新書をもうすぐ読み終わる。驚くべきことが詳細緻密論理的に書いてある。専門的な知識がある程度必要で一般の人には難しいかもしれないが、できるだけ多くの人に読んでもらいたい。黒田日銀が何とも不合理不可思議なことを推し進めてきたのかがよく分かる。背景には安倍政権の後押しとまやかし言い募る政治手法があった。日本を取り戻すのではなく、日本に目覚めて欲しい。

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ハラリVSトッド

2023年04月01日 | 

             

 

 ユヴァル・ノア・ハラリとエマニュエル・トッドの本はちゃんと読んだのが一冊ずつ、目を通したのが一冊ずつで、しかもどちらも十分に理解できたかは怪しい。それでもどちらの著書からも目から鱗の思いの刺激を受けた。

 ハラリは歴史学者トッドは人類学者(人口学者)という違いはあるが、どちらも人類の現在を読み解こうとしている点では共通している。ハラリは全世界的に読まれているのに対しトッドは日本での読者が多いところはちょっと違う、考え方もかなり違う。

 私にはとても二人の本を解説する能力はないが、人間の行動原理がどこから来るのかを理解するのに役に立った気がしている。物事というのは一言では表現したり捉えたりすることはできない。ハラリやトッドの言説の要約は難しく、どうしても一冊丸ごと読まないと人類の有り様への理解は深まらない。

 複雑なことを理解するには文庫本一冊程度の言葉数が必要で、反射的な雑言をぶつけ合っても憎しみや親しみは残るけれども、理解にはなかなか繋がらない。ネット社会になり誰もが発信するようになったのはよいが、反射的な言葉の投げ合いが多く、立ち止まって考える機会が減っていると思う。ネットのコメントは八百字以上優先にしたら何かが変わるかも知れない?。

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きちんと叱れるのは

2023年03月07日 | 

            

 

 きちんと叱れるのは大切な能力で人類が生き延びてゆくのに欠かせない資質だ。そうした能力のある人物を見極めることは実は平凡な並の人間にも可能だと考える。

 まあ叱るというといわゆる上から目線と言われる傾きを感じる人も居るかもしれないが、それは平等の理解が不消化のためと思う。それに現代カタストロフ論の著者らにおそらく叱るという感覚はなく警鐘を鳴らし科学的に対応を模索しようと提言する気持ちがあるだけと思う。

 著者らは前書きで今はカタストロフと呼ばれる予測と異なる大きな構造的な変化の時期を迎えつつある。そしてカタストロフの時期では危機が起きてもじっとしていれば大丈夫。格差や歪みが生まれて止まらなくなり行くところまでいかないとよくならない。そして繰り返しながら変わってゆくことを否定し同じことを繰り返せばよいという三つの誤った認識から脱成長論が生まれ、長期衰退という最悪の道を辿る。と警告し、最悪を避ける道筋を論じている。

 「現代カタストロフ論」岩波新書は今読まれるべき智慧の詰まった本だ。

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Where the Crawdads Sing 読了

2023年02月14日 | 

            

 

 Where the Crawdads Sing 「ザリガニの鳴くところ」を読んだ。ノースカロライナの海岸線の湿地帯がどんなところか、行ったことはなく想像するしかないが、その場所がこの小説の背景になるだけでなくこの小説を生み出したと言っても過言ではないだろう。

 幼くして母に去られ飲んだくれの父もやがて去り、一人の少女がたった独りでザリガニの鳴く湿地帯で僅かな理解者の手助けを受けて生き成長してゆく。周囲の人の眼には湿地帯に住む風変わりな少女と映り理解されないが、彼女の魂を理解し惹かれる少年やがて青年も現れる。事件が起きミステリーが展開されるのだが、見捨てられ湿地帯の多様な生物と共に生きてきた少女の魂がこの物語の核心と思う。

 なぜこの年になって小説を読むか、それはたぶん本の虫だった母と愛読書と愛読著者の影響だろう。小野寺健先生のイギリス的人生を読み返し、藤本和子さんのどこにいても、誰といてもを手に取り、小説や物語りでしか知ることのできない世界を歩いている。

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