秋生のEtude

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『アンナ・カレーニナ』 2/25 (土) マチネ

2006年02月25日 23時44分25秒 | 舞台
やっと、観てきました。明日は東京公演千秋楽、という今日。

2006.2.25(土) 12:30 ル テアトル銀座

アンナ・カレーニナ         一路真輝
アレクシス・ヴロンスキー      井上芳雄
コンスタンティン・レイヴィン    葛山信吾
スティーバ・オブロンスキー     小市慢太郎
キティ・シチェルバツカヤ      新谷真弓
プリンセス・ベッツィー       春風ひとみ
ニコライ・カレーニン        山路和弘


・・・雪降りしきる駅に行きかう人々。モスクワに帰る汽車に乗り合わせた、美貌の人妻・アンナと、若き将校・ヴロンスキー。
出会ってしまった二人・・・運命の恋の歯車が回り始める・・・!!

年上の夫とどこかすれ違ってしまい、満たされない思いのアンナ。
そこへ、ジャストタイミングで、紳士的に情熱的に、周りの噂も吹き飛ばすほどの、若さゆえのひたむきさで自分に向かってくるヴロンスキー。
貞淑な妻のはずのアンナが・・・
最愛の息子・セリョージャを置いてまで、ヴロンスキーの元へ走ってしまうアンナ。
そして、ヴロンスキーの子を宿し、夫・カレーニンに“別れて”と切り出すアンナ。

カレーニン、アンナ、ヴロンスキー。
三人三様に「もう無理だ、続けられない」とアンナはヴロンスキーの元へ。ただし、カレーニンはセリョージャを渡しはしない、と。
ヴロンスキーとの愛を貫き、産まれた娘と幸せなはずのアンナ・・・なのにモルヒネに頼らずにはいられないほどの不安定な毎日。
愛する息子に会えない寂しさは、いつかヴロンスキーとの間にも小さないらだちと、亀裂を生んでいく。

セリョージャの誕生日に、我慢できず息子に会いに行くアンナ。だが、怒りと嫉妬に打ち震えるカレーニンは、息子には「母は死んだ」と言ってある、と告げる。セリョージャの母親への尊厳を壊すな、と。
それでも、あらん限りのやさしさで「帰ってくるなら受け入れよう」と提案するが、アンナは・・・

もう会えない息子への思いを、胸いっぱいに抱いてアンナが選んだ道は・・・



哀しく、そして美しいです。
恋に翻弄される二人、いえ、三人。
人妻との恋。・・・言葉にすれば不倫、なのですが不倫と呼ぶにはきれい過ぎる恋、という印象。


一路アンナは、・・・とにかくお美しい。
あまりに『エリザ』を観すぎたせいか、シシィとかぶるところがなかったかといえば、うそですが、私はむしろ、このアンナのほうが似合っていると思いました。
「SERYOZHA」の時は、子を思う母の気持ちにどっぷり感情移入してしまい、涙があふれました。

井上ヴロンスキーは・・・人妻であるアンナを強引に誘惑したようには見えなかったのです。人目もはばからず会いにくるヴロンスキーは、確かに恋のとりこなのだけれど・・・う~~ん、なんだか官能的でないんだな~
私の中のイメージではもっと、人妻を誘惑・・・う~ん、もっと強烈なものを想像していたらしく・・・??
・・・井上くんの役不足、というわけでは決してありません。
現に、目の前で「We were dancing」♪僕の魂すべてを捧げよう~と歌われた時は、僕のこの気持ちをわかってと、すがるような目をした、井上ヴロンスキー、あまりに素敵過ぎて・・・こんなシチュエーションで、こんなステキな青年から求愛されたら・・・落ちない女はいないだろうと。・・・この私でさえも?あやうく理性なんぞ吹っ飛びそうでした
冒頭の汽車の事故で、「未亡人にだ」とさっとお金を渡してしまう、ヴロンスキーの正義感、恋をしても紳士であろうとする元々のお育ちの良さ?
それにも増して、きっと、井上くんの持っている清潔感や、誠実なイメージが“不倫”を、“純愛”に変えてしまっている?のかもしれない。
(私の中の“誘惑”ってもっと、エロチックな・・・そう内野トートが基準だからかしら・・・あわわわ)

山路カレーニン・・・あの1幕での冷静な、心まで冷たく見えたカレーニン、なのに後半、妻に言いよる男の出現に、妻への愛を確信していく夫の、いまさらの感情が炸裂。うっそ~!かっこ良過ぎる。そして、なんといっても、渋いです。
アンナに「子供が生まれるの」と告げられたあとの「・・・神よ」・・・同情します。
あんなに、低く冷たい声で話していたカレーニンがアンナに去られ♪夜だけおまえが恋しい・・・と歌うお声は、あまりにも優しすぎて・・・そのギャップがもうたまらない。
・・・しかも、放っておくのかと思われた息子への愛も、派手さはないけど父親ならではの形となって・・・「おいで」とセリョージャを抱きしめる場面では涙が・・・。


三人がそれぞれの立場、思いで熱唱する「THIS CAN'T GO ON」(続けられない)
3列目から聴く三人の歌声は、心の絶唱という感じ、迫力のこもった思いがびんびんと伝わってきました。



この恋は世の中から見れば“不倫”なのかもしれないけど、ヴロンスキーはたまたま美しい人妻に恋をしてしまい、若さに任せて、その情熱でアンナを求め、アンナは年上の夫と、まるでボタンを掛け違うようにしてすれ違ってしまい、自分の愛の行き先がわからなくなる。アンナにとって、ヴロンスキーは恋の相手というよりは、夫への愛の行き場がなくなり、すべてを賭けた場所だったような・・・子供を置いてまで駆け落ちしたのだから、と自分自身に言いきかせるような恋・・・
カレーニンは、そこにアンナがいつもいるもの、と安心しきっていて、妻が他の男に奪われて、はじめて妻への思いに気がつく。(ああ、遅すぎるよ)
うう~ん、不幸へ向かって列車がひた走る時って、誰もがその理由なんてわからないものなのよね。あとで「なぜあんなことを」って思う時はあっても、その時には・・・


そしてもうひとつ、すれ違い続ける恋、アンナの兄・スティーバの妻の妹・キティと、そのキティにメロメロのレイヴィン。
意を決して、でも控えめすぎる(わけが わからん)プロポーズをしたものの、振られた、と思い込んで田舎に帰るレイヴィン。
ヴロンスキーに冷たくされて、自分の心が誰にあるか、気がつくキティ。

葛山レイヴィン。彼女を忘れるために、と勉強し、身体を鍛え、キティを頭の中から追い出そうとするレイヴィン。恋する男の気持ちが、純情が、かわいい。・・・同じ恋なのにね。
落ち込んでみたり、いじけてみたり、自信のないところが、ヴロンスキーとは完全に真逆。でも、とってもステキな方でした。

一方新谷キティ。あの不思議なキャラは・・・???
最初は理解できなかったの。何で、このシリアスな舞台に???
でも、ヴロンスキーとの恋の結果、すべてを失って孤立したアンナを、訪ねてきて慰めるキティの「毎日いらしていただかなくては」の一言に、・・・泣きました。
すぐに落ち込むレイヴィンを勇気付けるキティの明るさもグー。
この、暗い内容の舞台の救い、でしょうか。
ただ、・・・ごめんなさい。お歌になると・・・ああぁ~(ため息)

同じように、???なアンナの兄・小市スティーバ。
面白すぎ!!飄々としていて、人生を楽しんでいて、そしていい事も悪い事も“仕方ないよ、人生にはいろいろあるさ”って感じで受け止めて生きてる。う~ん、ある意味、この舞台の中で一番人生を悟っている人かもしれない。
最後の場面で、戦地に赴くヴロンスキーに「早く戻って来い」と声をかけるスティーバ・・・ヴロンスキーの失意を慰め、こっちの世界へ精一杯帰って来い、と希望の光を与えてます。

春風ベッツィー・・・ぴったり!!ですね。
アンナとヴロンスキーのスキャンダラスな恋の噂を、楽しんでいる世間そのもの。でも、ヴロンスキーの従姉でもあるベッツィーは、ヴロンスキーに「結婚している女性のために全てを賭けるのは究極のロマンスよ。ただし、真剣にのめり込んでしまわない限りね」と、核心に触れた忠告をするのですが・・・


『アンナ・カレーニナ』・・・恋によって運命が動かされていく、哀しく美しい舞台でした・・・。
一路さんは、その細身に心の色を映し出すようなドレス姿が、本当にお美しかったです。
井上くんは・・・はあぁ~美しすぎです
ファンには軍服マニアならずとも、あの精悍なお姿には腰が砕けそうでした・・・
個人的には、カチッと着た軍服にマントをひるがえす登場シーンと、胸もはだけるフェンシングの時の白いブラウスのひらひらが好みですが・・・(おいおい

母と子に見えないだろうか?と心配だったお二人のラブシーンは・・・美しい一枚の絵を見るようで・・・禁じられた恋に突き進む二人の止まらない胸の鼓動が聞こえてくるようでした・・・

『アンナ・カレーニナ』一度しか観ないのが残念な舞台。
ああ~もう一度、観たかったな・・・




 
コメント (6)
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