脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

豊後大野市ーみんなの力をあわせてボケ予防

2008年02月24日 | 各地の認知症予防活動

Map_bohno_2 大分県豊後大野(ぶんごおおの)市。大分市から熊本市を結ぶ豊肥(ほうひ)線の始発の大分駅から数えて6番目の犬飼駅から11番目の朝地駅まで、7町村が合併してできた町です。
千歳村・三重町が二段階方式を導入していた経緯があって、豊後大野市とも契約が結ばれました。
そして昨年、実務研修会を豊後大野市に出向いて実施しました。これは初めての試みでしたが、保健師さんたちのレベルを同時に高めたいという要望に沿ったものでした。
合併したところでは、「足並みをそろえたい」という希望はとても強いのですが、保健師さんの共通理解にいたるまでが結構大変です。豊後大野市では関係する保健師さんたち全員が一度に研修したのですから、ボケ予防活動がスムーズに展開しているかどうか気になっていました。
今回は緒方地区・犬飼地区の2ヶ所の講演会でした。
P1000004 日本のナイアガラといわれている緒方にある「原尻の滝」です。

阿蘇山の噴火のときの溶岩がここにたまって形成されたそうですが、見上げる滝ではなく、見下ろす滝というところがユニーク。緒方地区は滝の上に豊かな平野が開けていました。

さて講演会は丘の上の中学校の講堂が会場でした。
P1000009 300人の予定が、「472人まで数えました」ということでしたが、超満員。
私たちの講演会にはだいたい予想の1.5倍から2倍の方が参加されるのです。
ボケになりたくないという声が聞こえるような気持ちになります。

ステージの間際まで追加の椅子を出し、通路にまで座っています。
それなのに、会場の寒かったこと・・・
P1000008 豊後大野市では「いきいきスマイル教室」と銘打った認知症予防教室を各地で立ち上げました。
それと同時にボランティアさん(介護予防リーダーさん)の養成も始まり、当日もこうして舞台で「きよしのズンドコ節」をベースにした豊後大野市介護予防体操「みんなのぶんドコ節」を披露してくれました。
会場と一体になって楽しい時間がもて                     

                       ました。
P1000010_2 講演後、ホールでお話した川原さん。
笑いながら「われわれは危険なんです。自分は公務員、妻は校長先生だったんですから」
続いた言葉がうれしかったですねえ。
「小さな地域ですから、みんなに眼を配って、100年後もみんな幸せでいるように、と思ってこれからも世話役がんばります。妻も、あれやこれや趣味やお世話に忙しくしています」

翌日は犬飼地区。
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緒方地区と同様の流れで講演会が進行していく様子を見ながら、やはり一斉に動き始めることができたのは、全員参加の実務研修会の成果だと思いました。
ただ、なにかが微妙に違います。
それは、それぞれの地区の持つ地域性や住民性、保健師さんのかかわり方の違いなどから生じてくる当然の差なのでしょう。
みんなどこも同じにする必要はありません。その差を大切にしながら、ボケ予防活動を進めていってほしいものと感じました。
特筆すべきことがありました。
会場左前部の一団の反応が格別よかったことなのです。文字通り「打てば響く」という様子が私の講演に力を足してくれました。
「ボランティアは、ボケ予防の実際を知ることができ自分のためでもあります。
豊後大野市の介護予防リーダーさんたちは、この活動をして脳がとてもいきいきされた方が多かったそうですよ。犬飼地区のリーダーさんは?」という問いかけに、その一団の皆さんが手を挙げながら「ホントにそう!元気になった」といわれました。
P1000015 昼食をご一緒した、豊後大野市在住の先輩保健師さん。左から亀井・加峰・加藤さんの3かトリオです。
緒方にいらした加峰さんの発言。
「できるだけ早く、回覧板をまわすのよ。
会場が狭かった点と寒かったことをお詫びしなさい。そして、ボケの相談窓口があることも書き添えて・・・あらぁ、ついつい言い過ぎちゃうわねえ」
いいえ、なんて的確な指摘でしょう。
3かトリオは、集団かなひろいテスト実施後の合格者に対する生活指導を受け持ってくださっているのです。
長い経験があるのですから、まさに適任。
自分の町が持っている人材を、ボケ予防活動に取り込んでいくことは一石二鳥以上の効果が期待されます。

豊後大野市では教室の前後での脳機能検査は、どこの教室でも実施されました。管理ソフトエイジングを使用しての教室評価が始まっていました。
中間のまとめを見ると、全国データと比較してやや低下群が多いように思います。もちろん、別人のように改善した方はどの教室にもいますし、千歳地区では、すばらしい改善を見せた方が続出していました。
テスト実施法には問題が無かったのか、カリキュラムの問題も検討の余地があるでしょう。

前提条件として、テストは生活指導の入り口ということを再確認してください。
今回、昨秋脳梗塞を発症された方の生活指導をしました。
テスト結果から、後遺症は無いこと、このまま自信をなくして引っ込み思案な生活を続けていくと、脳の老化が加速されてしまうことをお話したら、笑顔で「がんばります」といってくれました。
生活歴が聞き取れないという方にもお会いしました。
テスト結果を基にして、脳が老化を加速し始めたタイミングを説明しただけで、生活を振り返って自分でターニングポイントを見つけられました。
「教室に行くと気が晴れて、意欲的になれた」といううれしい感想も言われました。
テストがボケ予防活動の武器になるように、もう一踏ん張りしましょう。