脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

続ー認知症に悪いのは、視力低下?聴力低下?

2018年07月03日 | 二段階方式って?

認知症の進行を助けるのは(助けて欲しいわけではないですが!)聴力低下という話をしました。先日相談を受けた時の話も追加しておきましょう。離れて住んでいて1ヶ月か2ヶ月に一回くらい会いに行っている娘さんからの、お母さん(80代後半)の相談でした。
写真は奈良、丹生川上神社 上社

私は、本人や家族の方がいろいろ訴えて来られる具体的な症状を聞きながら「その症状になるための脳機能の状態」を推理していきます。
今回のケースのように女性の方で「料理をしてもらっていません」と言われると中ボケレベル。脳機能の老化の加速が中ボケレベルになると、味がよくわからなくなるのです。
一番最初におかしくなるのは塩辛さの感受性のようで、家族の方は「とにかく塩辛すぎて食べられたものじゃないんです。どういう訳か本人はパクパク食べちゃうんですけどね」とよく言われます。
味噌の入ってない味噌汁とか、砂糖味がしないアンコとかもあるのですけれど。
青龍

中ボケレベルにまでなってしまっていた、このおばあちゃん。
老化が加速された直接的な原因は、4年程前から膝痛が始まって行動範囲も内容も極端に狭まってしまったことでした。それまでは自転車を乗りこなして、買い物や趣味の会など自由に生活を楽しんでいたのに…
悪いことに近所に住んでいた仲良しの妹さんも入院してしまい、楽しみにしていた姉妹のおしゃべり会やランチ会も難しくなってしまった…
こういう、どこの日常生活でも起きる些細なことから、認知症は始まっていきます
朱雀

家族の方が言われました。
「目が悪くなったことも関係あるかもしれません」
視力低下が認知症になるきっかけだということは、ほとんどありませんからよく話を聞いて見ました。
「一年ほど前なんですが、視力検査をしてビックリしました。ほとんど見えてないんです。0.1だったか、これじゃあ見えなくていろいろ困ったはずだとかわいそうでした。もちろんメガネをすぐ作ってあげたのですけど」
そこで私。「今も困ってるでしょ!せっかく作ったメガネを使ってますか?なくしちゃったんじゃないですか?」
小ボケレベルになっただけでメガネや補聴器をたびたび無くして大騒動はよくあることです。その前に使いこなせないことだってザラですし。
「実はそうなんです。何度も探し出してあげたんですけど、結局は使ってないんです。『これで困らない』っていうからそのままにしてますが、やっぱり悪い影響があったんじゃないかと思ったんです」
白虎

推理が始まります。
高齢者が、近くが見えなくなることは、よくわかります。
遠くが見えない?遠くが見えなくなるような目の病気が起きたのなら納得ですが、眼科受診は済んで眼科的な病気はないことがわかっています。
もう一つ大切なことは、1年前に見えなくなったことをあまり苦にしていないことそのものです。
今は中ボケレベルですから、その時は既に中ボケレベルに近づいていたのでしょう。
日常的な家庭生活にも支障が出る状態ですから、「見えにくい」状態が起きても特に支障はなかったことは容易に想像できます。
玄武

よくよく話を聞いてみたら、ビックリするようなことが明らかになりました。
3年前に白内障の手術を受けていたそうです。
手元に焦点を合わせたのでしょう。そうです。その時点から「遠くが見えない」状態が起きていたのですね。もちろん脳の老化を加速させてしまう影響はあったでしょうが、でもご本人にとっては格別の問題を感じていないというのが、脳機能の老化加速が起きることの怖さです。
また、面白い生活変化や生活実態を教えていただきました。
付録。友人のM笠T子さんが奉納した作品



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