脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

友人がお世話していたのは小ボケの方だった

2018年07月11日 | 正常から認知症への移り変わり

久しぶりの友人とおしゃべり。
私「先日伺ったけどお留守だったでしょ。ご主人が『お年寄りのお世話に行ってるんだよ』っておっしゃったけど」
友「そうなの。88歳なんだけど、お一人暮らしなのでね。いくらしっかりされてるといっても、お歳だし。それに足が弱くて自由に動けないから、週一回だけどお風呂のお世話をしてあげてるの」
私「ウーン。素人で入浴介助はちょっと難しいかも」
友「とっても広いお風呂場で、浴槽も広いからやれるんだけど。と言っても伊豆石なので滑るのよね。お父さんからはやめたほうがいいって言われてるんだけどね…もう長いお付き合いだから」
ハワイ島マウナケアの日の出。雲海と手前には薄く冠雪が。山頂には人影が。

友「もともとはG県の人なんだけど、ここの別荘に住み始めた姪御さんに勧められて75歳の時に引っ越してきたの。その姪御さんは週5日はここの別荘に来てるんだけど、ご主人が反対するとかでお世話は全然してくれない。息子さんもいるけど、遠いやら関係が悪いやらで年に一度くらいしか来てくれないみたいだし。
たまたま紹介してくれる人があってお近づきになったのね。車の運転をしない方だから、銀行や郵便局、それからお買い物にも連れて行ってあげる習慣になったわけ」
キラウエア火山

88歳の方のお世話(特に入浴介助)を、70歳の素人の方がするという状況はちょっと問題があります。
私「デイサービスの利用をお勧めしたら?介護保険の申請はしてあるのかしら」
友「要支援2ですって。デイサービスは週2回くらい利用できるんだけど、それがね、しっかりした方だからとても無理。一言のもとに拒否されちゃうの。この前ケアマネさんというの?一緒にお話しした時にも『お風呂に入るために、というおつもりでデイサービスを利用されたらどうですか』と言われたんだけど、『わたくし、ほかの方とご一緒だなんてしたこともございませんから。それに家の風呂で十分でございます』そういわれると、ケアマネさんもすぐに引き下がるのよ。お玄関で実際には介助がないと入れないってささやいたけど、さあ、どこまでわかってくださったか」
さあ日の出!環太平洋で一番高い場所からの日の出!

私「一見、立派に話せることと、脳が元気なことはちょっと違うのよね」
友「足がほんとに弱くなって、階段だと這っちゃうの。去年は1回転んだし、おととしは2回転んだのよ。それでも家ではそこそこ元気に動かれていたんだけど…
そうだ!去年の秋、歯が痛くなって娘さんのところで2~3か月暮らしたのよ。普段ないもしないから、きっと上げ膳据え膳だっと思う。帰ってきたら極端に足が弱くなっていたもの。
それまでは、家の中は普通に動いて洗濯も掃除もしていたし、炊事だってちゃんとやってたの。『たくさん作ったから取りにいらして』と声がかかっていたもの」
私「足が弱ったのはすぐわかってもらえるけど、その上げ膳据え膳で何もしない生活は脳も弱くさせてしまうことはなかなか気づいてもらえない。脳の働きは小ボケのレベルになってしまってるでしょうねぇ(娘のところで同居、上げ膳据え膳の生活という、従来の生活が変わるきっかけがあって、その後も自分でがんばって一人暮らしを続けるというもともとの生活に戻ることがなかった。そのために脳の老化が加速された)」
左からスバル(日本)ケックⅠ・Ⅱ(米)赤外線望遠鏡施設(NASA)

私「脳が小ボケレベルの働きだと、例えばね、おんなじこと言うでしょ」
友「そうそう!今言ったばかりのことを普通の顔してまた言うの。しばらくしてからまた言うし。お父さんから『よく聞いてあげられるねえ』って感心されちゃうほどよ。ほかには?」
私「そうね、おしゃれでなくなる」
友「あ、大丈夫!出かけるとなったら着替えるし、お化粧もばっちりだし」
私「そうなの。お洒落さんなのね。でもそのうちちょっと変になるから。ご飯炊いてるとしたら、多く炊きすぎて、あちこちにお冷がある」
友「そうそう!不思議なほど次々にご飯を炊くのよ」
私「お買い物を自分でしている人は、同じものをいくつもかってくるようになるから、冷蔵庫開けるとお豆腐や牛乳がいっぱいだったりするのよ」
友「冷蔵庫というとね、もともと冷蔵庫が嫌いであんまり使わない人だったんだけど、一昨日お惣菜を少し持って行ってあげて、今日さっき行ってみたらそのままテーブルの上にあるの。この暑さでしょ。『冷蔵庫に入ってないみたいだから、持って帰りますね』って声を掛けたら『あら、昨日いただいたのだから大丈夫よ。後でいただくわ』と普通の顔で言ったの」
私「言ってるることを聞いたら、何も困ってないみたいでしょう。これだけお世話してもらってるのにね。
たんすの引き出しは見ないかもしれないけど、そろそろグチャグチャ。整理してあげても次見たときはまたグチャグチャ」
友「引き出しは知らないけど、言われてみたらお部屋がね。もともとはきちんとした方だったんだけど、洗濯物がスーパーの買い物袋に入れてあって、それもいくつもあるの。出かけるときの洋服を探すのだって、ちょっと大変。あれこれの袋を探ってね」
私「家事援助は?たぶんいやとおっしゃるでしょうけどね」
友「そうなの。人が入ってくるのは嫌と一言」
NASAの施設が朝日を浴びてあまりにもきれい。

私「お金の管理ができなくなる段階だから、そこはちょっと気を付けなくっちゃあ」
友「偶数月に年金が出るから、それをいただきに郵便局へ連れて行ってあげてるの。立ち上がりにくいから、ご本人は座らせてあげておいて結局は私が受け取ってる。ちゃんと数えて、財布に入れてあげて、バッグに入れてあげるようにしてるけど」
私「それがね、ゴチャゴチャになってしまうのよ。お部屋の洗濯物を見たらわかるでしょ。早晩お金が無くなって騒動が起きるから。事情が分かる人は、まさかあなたがとは思わないけど、ご本人が例の調子でいろいろ訴えると、10回に1回はいやな思いをすることにもなるのよ。これがとりこし苦労に終わるといいけど」
友「なるべくお金は触らないようにしてるけど、スーパーに連れて行ってあげるでしょ、レジで『あなた払っておいて』ってお財布を渡されるの。待たせると周りにも迷惑だから、このごろは私が支払ってあげてるけど…」
私「支払いを自分でされてた頃、お財布がパンパンになってたでしょ?上手にお札や硬貨を組み合わせることができなくて、大きなお札で支払ってしまうのね。そうするとやたらとおつりが多くなって、結果お財布はパンパン」
友「そういえば、そうだった!」
やっぱりスバル天文台(ケックの影が)

これから先の高齢社会を支える一つの手立ては、昔のような密な近隣の関係だと思っています。お互いに気にしあうような関係。からだの問題については、支えることは割合に簡単です。とくにこれからは様々な介護機器が導入されてくるでしょうから、体のハンディキャップに関しては展望が開けていくと思います。
でも、脳がうまく機能していない状態になってしまったとしたら。
今回のケースは、88歳で日常生活もままならないような脚力不足の状態で、友人に入浴介助を頼むという「判断」が、私はおかしいと思うのです。しかもデイサービスでお風呂にはいれるという情報もあるにもかかわらず、です。
「自立して、健康で長生きしましょう」というスローガンは当然の希望ですが、そこに「脳の健康」という考え方は入っているのでしょうか?小ボケレベルに落ちただけでも、これほどの生活実態になるのですけど。小ボケレベルだと家庭生活は可能でも社会生活はトラブルが出てくると、私たちは言いますが、細かく見ると家庭生活にもほころびが出てきていますね。
自分の置かれている状況を理解し、できることはする、できないことは助力を頼む、家族だけでなく、友人やソーシャルサービスも上手に利用する。これが自立の条件です。
つまり不可欠なのは「自分の置かれている状況を理解する」前頭葉の機能です。

 

 


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