「機能訓練教室で、かなひろいテストを実施しました」というお知らせがありました。成績一覧です。
これだけの情報で、どのくらい個々人の状態が把握できるかを見てみましょう。
NO1
備考によるともう20年も前から車いすの生活を続けていらっしゃいます。良く維持されてきたというのが第一印象です。
かなひろいテストは、スピードも注意分配力もOKですが、内容把握が不十分です。
立方体模写が不合格ですが、どの程度なのでしょうか?
立体視はできているのかどうか?今、描けなくなり始めているのかどうか?
そのまえに、事故によって手指の運動機能に問題は残らなかったのかどうか?
事故以来、この正常ではありますがちょっと落ち気味という脳機能レベルで継続してきたのかどうか。そこが一番大切な視点です。
20年頑張って生活してきたにもかかわらず、最近脳機能の老化を加速するような生活上の変化が起きてはいないかどうかをやはり確認する必要がありますね。
そのためにはMMSを実施しなくては、踏み込んだ生活指導ができません。
事故直後から脳機能検査が行われてきていると、比較がたやすいのですが・・・
(花高40センチも)
NO2
たまたまNO1の方と年齢が同じなので、かなひろいテストの成績比較がやりやすいですね。
この方のかなひろいテストの特徴は、誤答の多出現。正答数<見落とし数。正答数はわずかNO1の方の1/5。
内容把握は問題ありません。
総合的に見て、思い込みが強く対応に苦慮することが多いのではないかと思われますがどうでしょうか?
30年以上も杖歩行の生活ですから、行動範囲も生活実態も限定されるでしょう。にもかかわらず、現時点の成績を保っていらっしゃるという見方もできるのですが、もちろんこの方も、この脳機能状態が最近の変化であるかどうかが一番の問題点になります。
オンシジュームの長い花穂(花長1メートルも)
NO3
16年間義足でどのような生活をなさって来られたのでしょうか?
かなひろいテストがとても難しかったことがうかがえますね。これは最近急に変化したことなのでしょうか?
もう少し生活状態が具体的にわかると、いいのですが。
NO4
筋ジス発症してから、そろそろもう40年ですよ!
頭が下がります。
ご本人の不撓不屈の精神と努力にも。
ご家族の励ましにも。
手工芸を楽しまれているからこそ、立方体模写が可なのでしょうね。これからも4番さんらしく生活なさいますように祈ります。
NO5 NO8 NO9の方々は、脳卒中がどちら側の脳に起こったのかが不明です。
右麻痺ならば、左脳が障害されたことを意味しますから、いつも失語症はないのかどうかを考えてあげる必要があります。
失語症があれば、かなひろいテストはとても難しくなります。
ところが、いわゆる認知機能を脳の高次機能という言い方がありますが、それならば「前頭葉機能は、最高次機能」なのです。
右脳が障害された場合でも、かなひろいテストをはじめとする前頭葉機能に影響を受ける場合が、臨床的にはよく見受けられることも知っておいてください。
NO6
この方は右片麻痺があるということです。障害された部位は左脳ということですから、失語症の有無がまず問題になります。
かなひろいテストができないことは、単に失語症の影響だけなのかどうか?
それなら立方体模写がなぜできないのか?
右麻痺の影響で、細かい作業が不得手だけなのかどうか?
発病はいつだったのか?最近の生活には変化がないのかどうか?
S輔君5歳の力作(磁石)
NO7
この方のかなひろいテスト不合格は、前述の「右脳障害でも、最高次機能であるかなひろいテスト成績には影響がでる」という実例かもわかりません。
あるいは、脳卒中後にそのまま生活が単調になってしまって脳の老化が加速された状態かもわかりません。
もちろん、脳卒中とその後遺症にもめげず、生活を工夫しがんばってこられたのに、新しく脳の老化を加速させる要因が勃発して、その影響を受け始めているところかもわかりません。
二段階方式の力は、あくまでも個別生活指導にありますが、そのためには前提条件として個別の脳機能検査が必須ということがよくわかりますね。