脳機能からみた認知症

エイジングライフ研究所が蓄積してきた、脳機能という物差しからアルツハイマー型認知症を理解し、予防する!

認知症の専門医の方々、失語症に気を付けて下さい。

2018年03月22日 | 左脳の働き・失語症

保健師さんからの質問です。
「時の見当識もちょっと採点しにくいし、なんだか本人や家族の訴えとドクターの診断に違和感があります」
エイジングライフ研究所の二段階方式では、脳機能と生活実態と直近の生活歴に整合性がない場合(それぞれが意味することが一致しない場合)には、生活指導の対象としている「脳の老化が加速された、ごく普通のアルツハイマー型認知症」と考えずに、専門医受診ということが鉄則です。

もちろん、脳機能は正しく測定できている、生活実態は正しく把握できているということが前提ですよ。
脳機能に比べて、生活実態がよすぎる場合はまず失語症を疑います。大雑把な説明ですが、外国で生活している状態を想像してみてください。言葉に関しての意思疎通は難しいですが、生活そのものはほとんど問題なくこなせると思いませんか?
脳機能の検査は主に言葉を使って行いますから、言葉能力に問題があれば、結果は悪くでることになります。でも生活には問題がない。

ついでに説明しておくと、脳機能がいいにもかかわらず、生活上に様々な問題が勃発するときには精神的な問題を考慮することになります。
例えば、脳機能が少ししか落ちていないのに、妄想のような思い込みが強くて周囲を振り回すような場合です。

さて相談事例です。
脳機能検査から問題が発生しています。検査実施日平成30年2月21日です。
「今日の日付は?」という質問に他する答えが「平成28年2月20日」。普通に脳機能の老化が加速されている場合には、2月と答えられる時には、平成何年かは正答できるものなのですが…
「季節は?」には「春」
この場所はむしろ寒いエリアですから、2月中は「冬」でしょう。
このような時には「わからない」のではなく「言えない」可能性を思いつかないといけませんね。
他の下位項目の低下順には特に問題はない。と言いたいところですが
「文を書く」の課題に対して「おすわりしてテスト中」文になっていないこと以前に、60歳の男性が書く文章でしょうか?
保健師さんたちは、よりよく採点してしまう傾向がありますが、脳機能検査の目的はむしろ「できないところを明確にする」ところにあることを忘れてはいけません。
この方の検査結果です。

MMSの得点や時の見当識の得点からは、あたかも中ボケレベルの低下のようですが、上図を見て、あまりにも整った図形に注目してほしいと思います。特に立方体透視図のみごとなことに。右脳の構成能力に問題はないことを伝えてくれています。
「時の見当識」「文を書く」のできなさと実に対比的でしょう。
つまりこの方には、「適切な言葉が出てこない」という言葉の問題があると結論付けられます。

生活実態はどうだったでしょうか。
妻の申告だと、30項目問診票で小ボケレベルに4個丸がついています。これは生活実態は前頭葉機能がやや低下しているということを意味し、MMSに反映される能力にはまだ低下が見られないと、妻は思っているのです。
つまり、脳機能に対し生活実態がよすぎるケース。
もう少し具体的に聞き取ってありました。
・毎日散歩している
・毎日ゴミ出しをしている
・家のこまごましたことは、むしろ好きなことなので続けている
・料理好きでおいしい料理が作れる
・庭・植木の手入れ、池の掃除などは率先してやる
60歳の男性ですよ!どう見ても生活にトラブルが出始める中ボケではないですね。

MMSの下位項目低下順に、老化が加速された時とずれがある。そして脳機能検査≠生活実態(生活実態の方が良好)。この条件から、言葉の障害があるという結論が示唆されるのです。
生活歴を聞く以前にこのようなケースは専門医受診です。
実はこのケースは、既に受診していました。
「妻が気にした本人の物忘れ」を主訴に平成27年受診したかかりつけ医は「軽度認知症」と診断し投薬が始まったそうです。この時57歳です!
次に、平成29年12月の受診した専門医はMRI、CT検査して「脳萎縮がある」という指摘と「車の運転はやめた方がいい」と言われたとのことでした。
どこにも失語症の診断がない!
保健師さんたちは、お医者さんではありませんから診断や病名を言うことはできません・・・
もう一度、専門のドクターに
「言葉の問題あり=流ちょうに話せているがキーワードが出ない」
「脳機能検査の模写を見ると、左脳右脳の機能差が示唆される」
「生活実態と脳機能が一致しない」というように左脳の問題(失語症?)とアピールすることだけしかできません。ちょっと悔しい。

 

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