新・徒然煙草の咄嗟日記

つれづれなるまゝに日くらしPCにむかひて心に移りゆくよしなし事をそこはかとなく紫煙に託せばあやしうこそものぐるほしけれ

2021年春のドライブ旅行記 #2-2

2021-05-19 20:47:08 | 旅行記/美術館・博物館・アート

新潟日帰り遠征記を書き終えたところで、「2021年春のドライブ旅行記 #2-1」のつづき、「テオ・ヤンセン展」@山梨県立美術館の見聞録です。

以前から「なんとなく」程度ではあるけれど気になる存在だったテオ・ヤンセン「風で歩く物体」、初めて「現物」にお目にかかれるというわけで、ワクワクドキドキ でした。

フライヤーからテオ・ヤンセンのご紹介を転記してしまいましょう。

オランダ出身のテオ・ヤンセンは大学で物理学を学んだ後、画家に転向し、その後1990年よりストランド・ビースト(オランダ語で「砂浜の生命体」)の制作を開始しました。ストランド・ビーストは、プラスチック・チューブやペットボトル、粘着テープといった身近な材料を組み合わせ、物理学による計算に基づいて形作られた、風力で砂浜の上を歩く生命体です。
ヤンセンの制作をとおして、生物同様に様々な進化を経ることで色々な種類が生みだされ、自然との共生、芸術と科学の接点など、さまざまなことを私たちに伝えてくれます。

まず拝見したのはこちら (この展覧会は撮影でした)

右にあるクランク軸時計回りに回すと、左下にある「脚先」が持ち上がり、前方(右側)に移動し、着地すると真後ろ(左方向)に移動する、という「歩く仕組み」です。

そして、この機構の基本となるのが、「ホーリーナンバー(聖なる数)」だそうで、

ビーストの脚を構成するために、チューブの長さと位置関係を割り出す13個の基本となる数字。ヤンセンはコンピュータ上で幾通りもの組み合わせを試し、数ヶ月かけて理想とする動きにたどり着いた。ホーリーナンバーを用いたの各部が往復運動円運動をすることでビーストは歩き出す。特に重要なのが脚先の軌跡である。脚先が前に出る時に描く上方向に膨らみながら回転する軌跡が、生き物らしい滑らかな動きを生みだしている。

と説明板にありましたが、チューブ10本長さと、クランク円直径と、、あと2個の数字はどこにあるんでしょ?????

   

さてさて、最初に拝見したビーストは、セレブラム期(2006-08)「アニマリス・ペルシピエーレ・プリムス」(2006)

かなりデカい 体長 7.5mだそうです。

パッと見右方向(長辺方向)に動きそうですが、脚部を良く見ると

アニマリス・ペルシピエーレ・プリムスの脚部

回転軸固定の車輪がついていて、短辺方向に動くことが察せられます。
館内では動画を観られるようになっていて、さらに、スマホ用に動画サイトにリンクしたQRコードが表示されていました。
で、(アニマリス・ペルシピエーレ・プリムス)はこんな風に動きます。

ワサワサっと動き、上部の背びれみたいなのがヒラヒラと動き、ホントに生命体みたいです

説明板によれば、

セレブラム期に生まれたペルシピエーレ族の最初のビースト。
「知覚する」という意味を持つ「ペルシピエーレ」のことばが示すとおり、特定の対象を感知するためのホースがたれている。前方にある扇状の構造物は、圧縮空気を溜めるための予備のペットボトルで構成され、風にとばされないようおもりの役割を果たす。

だそうです。
ここに「感知」「圧縮空気」二つのキーワードが出てきます。
まず「感知」について、公式ガイドブックに載ったヤンセンのことばに、

水の感触器は、地面に垂れたホースでできている。通常、それは空気を吸入する。しかし水を吸入した場合、抵抗が増加し、ビーストはそれを感知する。
そして神経細胞方向転換を指示し、ストランドビーストは向きを変えるのである。

とあります。
また「圧縮空気」は、と共にビーストの動力源になるのですが、ビーストのスゴいところは、を受けた羽根ピストンを動かして、ペットボトルに空気を貯めることができるということ
エレクトロニクス完全に排除したメカニズム

   

ここで公式ガイドブックからビーストの進化を整理してみましょ。

前グルトン期(~1990):コンピュータ内の仮想生物
グルトン期(1990):自立も歩行もできずに仰向けで脚を動かすだけ
コルダ期(1991-93):塩ビ管+結束バンドで歩行可能
カリダム期(1993-94):風力で自力歩行が可能に
タピディーム期(1994-97):塩ビ管のパーツを規格化(遺伝子化)
リグナタム期(1997-2001):木材や鉄板の身体を得て巨大化
ヴァポラム期(2001-06):動力源が自然風から貯め込んだ圧縮空気
セレブラム期(2006-08):神経細胞を獲得
スシディーム期(2009-11):より少ない圧縮空気で効率よく走ることを実現
アスペルソリウム期(2012):自発的に尾を振ることが可能に
アウルム期(2013-15):微風でも歩くための大きな帆を装着
ブルハム期(2016-):脚を持たない新系統「キャタピラ型」誕生

まさしく「進化」としかよべないこの過程で、脇道に逸れた感のあるのがリグタナム期ですな。
今回の展覧会では同期のビーストは1頭も展示されていませんでしたが、公式ガイドブック付録のDVDを観ると、「アニマリス・リノセロス・トランスポルト」動きスゴい 私は、「20世紀少年」ロボットを連想してしまいました。
YouTubeを探したところ、彼を見つけました
画質が悪くかつ風の音がデカいことはご愛敬ということで…

どうしてもテオ・ヤンセンのストランド・ビーストは、「塩ビ管の骨格をむき出しにして自律歩行する生命体」のイメージが強くて、リグタナム期パネルの「皮膚」を持ったビーストには違和感を持ってしまいます。

と、まだ展覧会のほんのさわりしか書いていませんが、「#2-3」につづきます。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 新潟まで日帰り遠征してきた ... | トップ | 仙台遠征で思ったこと »

コメントを投稿

旅行記/美術館・博物館・アート」カテゴリの最新記事