新潟日帰り遠征記を書き終えたところで、「2021年春のドライブ旅行記 #2-1」のつづき、「テオ・ヤンセン展」@山梨県立美術館の見聞録です。
以前から「なんとなく」程度ではあるけれど気になる存在だったテオ・ヤンセンの「風で歩く物体」、初めて「現物」にお目にかかれるというわけで、ワクワクドキドキ でした。
フライヤーからテオ・ヤンセンのご紹介を転記してしまいましょう。
オランダ出身のテオ・ヤンセンは大学で物理学を学んだ後、画家に転向し、その後1990年よりストランド・ビースト(オランダ語で「砂浜の生命体」)の制作を開始しました。ストランド・ビーストは、プラスチック・チューブやペットボトル、粘着テープといった身近な材料を組み合わせ、物理学による計算に基づいて形作られた、風力で砂浜の上を歩く生命体です。
ヤンセンの制作をとおして、生物同様に様々な進化を経ることで色々な種類が生みだされ、自然との共生、芸術と科学の接点など、さまざまなことを私たちに伝えてくれます。
まず拝見したのはこちら (この展覧会は撮影可でした)
右にあるクランク軸を時計回りに回すと、左下にある「脚先」が持ち上がり、前方(右側)に移動し、着地すると真後ろ(左方向)に移動する、という「歩く仕組み」です。
そして、この機構の基本となるのが、「ホーリーナンバー(聖なる数)」だそうで、
ビーストの脚を構成するために、チューブの長さと位置関係を割り出す13個の基本となる数字。ヤンセンはコンピュータ上で幾通りもの組み合わせを試し、数ヶ月かけて理想とする動きにたどり着いた。ホーリーナンバーを用いた脚の各部が往復運動や円運動をすることでビーストは歩き出す。特に重要なのが脚先の軌跡である。脚先が前に出る時に描く上方向に膨らみながら回転する軌跡が、生き物らしい滑らかな動きを生みだしている。
と説明板にありましたが、チューブ10本の長さと、クランク円の直径と、、あと2個の数字はどこにあるんでしょ?????
さてさて、最初に拝見したビーストは、セレブラム期(2006-08)の「アニマリス・ペルシピエーレ・プリムス」(2006)。
かなりデカい 体長 7.5mだそうです。
パッと見、右方向(長辺方向)に動きそうですが、脚部を良く見ると、
回転軸固定の車輪がついていて、短辺方向に動くことが察せられます。
館内では動画を観られるようになっていて、さらに、スマホ用に動画サイトにリンクしたQRコードが表示されていました。
で、彼(アニマリス・ペルシピエーレ・プリムス)はこんな風に動きます。
ワサワサっと動き、上部の背びれみたいなのがヒラヒラと動き、ホントに生命体みたいです
説明板によれば、
セレブラム期に生まれたペルシピエーレ族の最初のビースト。
「知覚する」という意味を持つ「ペルシピエーレ」のことばが示すとおり、特定の対象を感知するためのホースがたれている。前方にある扇状の構造物は、圧縮空気を溜めるための予備のペットボトルで構成され、風にとばされないようおもりの役割を果たす。
だそうです。
ここに「感知」と「圧縮空気」の二つのキーワードが出てきます。
まず「感知」について、公式ガイドブックに載ったヤンセンのことばに、
水の感触器は、地面に垂れたホースでできている。通常、それは空気を吸入する。しかし水を吸入した場合、抵抗が増加し、ビーストはそれを感知する。
そして神経細胞が方向転換を指示し、ストランドビーストは向きを変えるのである。
とあります。
また「圧縮空気」は、風と共にビーストの動力源になるのですが、ビーストのスゴいところは、風を受けた羽根がピストンを動かして、ペットボトルに空気を貯めることができるということ
エレクトロニクスを完全に排除したメカニズム
ここで公式ガイドブックからビーストの進化を整理してみましょ。
前グルトン期(~1990):コンピュータ内の仮想生物
グルトン期(1990):自立も歩行もできずに仰向けで脚を動かすだけ
コルダ期(1991-93):塩ビ管+結束バンドで歩行可能に
カリダム期(1993-94):風力で自力歩行が可能に
タピディーム期(1994-97):塩ビ管のパーツを規格化(遺伝子化)
リグナタム期(1997-2001):木材や鉄板の身体を得て巨大化
ヴァポラム期(2001-06):動力源が自然風から貯め込んだ圧縮空気に
セレブラム期(2006-08):神経細胞を獲得
スシディーム期(2009-11):より少ない圧縮空気で効率よく走ることを実現
アスペルソリウム期(2012):自発的に尾を振ることが可能に
アウルム期(2013-15):微風でも歩くための大きな帆を装着
ブルハム期(2016-):脚を持たない新系統「キャタピラ型」誕生
まさしく「進化」としかよべないこの過程で、脇道に逸れた感のあるのがリグタナム期ですな。
今回の展覧会では同期のビーストは1頭も展示されていませんでしたが、公式ガイドブック付録のDVDを観ると、「アニマリス・リノセロス・トランスポルト」の動きと音がスゴい 私は、「20世紀少年」のロボットを連想してしまいました。
YouTubeを探したところ、彼を見つけました
画質が悪くかつ風の音がデカいことはご愛敬ということで…
どうしてもテオ・ヤンセンのストランド・ビーストは、「塩ビ管の骨格をむき出しにして自律歩行する生命体」のイメージが強くて、リグタナム期のパネルの「皮膚」を持ったビーストには違和感を持ってしまいます。
と、まだ展覧会のほんのさわりしか書いていませんが、「#2-3」につづきます。
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