新・徒然煙草の咄嗟日記

つれづれなるまゝに日くらしPCにむかひて心に移りゆくよしなし事をそこはかとなく紫煙に託せばあやしうこそものぐるほしけれ

マンダラのパワーを浴びきれなかった…

2011-09-02 11:16:33 | 美術館・博物館・アート

きのう、先週に引き続いて上野に行ってきました。先週はあきらめた「空海と密教美術展」を観るためです。


東京国立博物館(東博)に到着したのは11:00。いつもなら本館1Fの総合文化展「ジャンル別展示」を3/4ほど観てから渡り廊下(?)を使って平成館に向かうところですが、きのうはダイレクトに平成館へ向かいました。


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それほど混んでいる様子はありませんな。


平成館1階のエントランスも先週より(こちらの記事をご参照方)スカスカです。


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これならゆっくり&じっくり鑑賞できそうな予感が…


   


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ところが、予想に反して会場内はかなりの人で満ちていました。


こういう展覧会の常として、入口近くの展示は人があふれて、順路を進むにつれて観客がばらけているものですが、「空海と密教美術展」もご多分にもれず、「第一章 空海-日本密教の祖」は、かなり高い比率で音声ガイドを利用している観客がびっしりと展示ケースの前に行列をつくっていました


しかも、ただでさえ混む展覧会の冒頭に、遠目が利かない絵巻物(弘法大師行状絵詞)や書巻(聾瞽指帰紫紙金字金光明最勝王経)などが展示されているものですから、展示ケース前に観客の後頭部がズラリと並んでいました。


私は基本的に、行列して、前の人のペースに合わせて鑑賞するのは好きじゃないもので、行列の間隔が空いているところからチラ見でこの難所を乗り切りました。


それでも、空海が24歳の頃、発心出家の意を親戚知己の間に表明したとされる書簡、国宝「聾瞽指帰(ろうこしいき)」は、他の多くの観客のように最初から最後までなめるように拝見することはできなかったものの、部分・部分をチラ見して、力強くかつ自在な空海の筆致を鑑賞することができましたし、料紙の上と下の収縮度が違うとかで、広げるとまっすぐにならない妙な全体像(こちらのブログをご参照方)も観ることもできました。


でも、展覧会全体としては、仏像類を除いては、わたし的にはイマイチ


かの名高き国宝「風信帖」も人混みでよく見えず、ポストカードを購入して我慢することになりましたし、


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法具には興味がわかないし、平安時代初期の仏画はひたすら薄暗いし…。


ところで、「風信帖」はよく知られているように、空海最澄に送った書簡なわけですが、それがどうして送付先の最澄の本拠地・延暦寺ではなく、差出人である空海の重要拠点の一つ・東寺(教王護国寺)に伝わっているのでしょうか?

です…


   


空海と密教美術展」の目玉ともいうべき「東寺の立体曼荼羅」の再現展示は見事でした


東寺のサイトから引用しますと、


密教の教えをわかりやすく表現したのが曼荼羅です。
曼荼羅には、胎蔵界曼荼羅
(たいぞうかいまんだら)と金剛界曼荼羅(こんごうかい)があり、それぞれ、理と知慧(ちえ)という教えを伝えています。
その曼荼羅を、よりリアルに伝えるために、弘法大師空海は具現化することを構想しました。
それが羯磨曼荼羅
(かつままんだら)。一般的に立体曼荼羅として知られているものです。
弘法大師空海は、大日如来を中心とした21尊の仏さまを講堂の須弥壇に登場させました。
曼荼羅の中心に大日如来が描かれているように、東寺の中心に大日如来を安置して、寺域を巨大な曼荼羅にレイアウトしたのです。


だそうで、この「21尊の仏さま」のうち、下図に示した8尊が東下されていました。


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例によって、一段高い場所から立体曼荼羅を俯瞰し、そして、仏像を間近に、かつ360°から拝見していると、これらの仏さまが留守にしている東寺・講堂はスカスカではないかと思いましたが、上の図を見るとそれほどでもなさそうです。

それでも、東寺のサイトでは、


東寺では、東京国立博物館で開催の「空海と密教美術」展などのため、現在、一部の仏像を安置しておりません。
10月上旬まで、拝観内容が通常とは異なりますので、予めご了承くださるよう、お願いします。


と注意を呼びかけています。


私は10月8~10日の大阪遠征(もちろんTHE TOUR OF MISIA JAPAN SOULQEST大阪公演絡みです)の時にでも、東寺で立体曼荼羅空間を体感したいと思っていましたが、「10月上旬まで、拝観内容が通常とは異なります」ですと、かなりビミョーですな…
一方、東大寺ミュージアムの開館は10月10日だそうで、こちらの観覧は今回はあきらめています


1100902_1_06 それはさておき、東下された仏さんたちは平安時代初期(839年)の作だそうですが、先立つ白鳳~天平期の仏像とはお顔つきがかなり違いますし(右の写真はイケメン系の帝釈天騎象像)、


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四天王像(左の写真はど迫力持国天立像)は若干メタボが入っています


空海は唐から帰る際、多くの教典や法具、仏像の他、仏像の模写を持ち帰り、模写絵に忠実に仏像を造らせたそうですから、こうした顔つきメタボといった特徴は唐風ということなのかもしれません。

実際、唐から輸入され、羅城門の楼上で王城鎮護の役目を負っていた(平安末期に東寺へ移管)という「兜跋毘沙門天(とばつびしゃもんてん)」は、装束も全体のたたずまいも、日本のものとは違うことが一目瞭然でした。


   


ところで四天王邪鬼を踏みつけているのが普通で、上の持国天も情け容赦なく邪鬼を踏みつけています。特に右の邪鬼はむぐぐぐ…と呻くしかなさそうで、かなり気の毒… 「空海と密教美術展」に限らず、四天王像を観る時は、この邪鬼もまた見どころの一つです


また、仏さんの乗り物も千差万別です。に乗っているといえば普賢菩薩がおなじみですが、上に載せた帝釈天も象に乗っていらっしゃいます。ただ、象の耳しおれた菜っ葉か、束ねたカーテンみたい…
梵天の蓮華座を支える4羽のガチョウ(4羽が違うポーズをとっているのがイイ)とか、大威徳明王を乗せた水牛なんてのも楽しい


でも、楽しさで言えば、東寺大威徳明王を乗せた水牛よりも、立体曼荼羅の一つ手前の展示室で観た醍醐寺大威徳明王の水牛の方が上でしょう


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水牛にしても象にしても、本物を見たことのない人が、伝聞をもとに造ったのでしょうな(上の写真は、8年前の中国出張で貴州省に行ったとき、紅楓湖で見かけた水牛さんたち)。


   


ということで、平日の午前中にもかかわらず、大勢の観客(多くはリタイア済みの方々)に気負けしてしまった私、このまま帰るのも、2週続けて総合文化展を観るのもアレだし、と、久しぶりに表慶館アジアギャラリーを観覧しました。


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表慶館は、外観だけでなく、内部もステキです


展示品のガンダーラ仏も、やはり、イイ


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右の作品「仏頭(アフガニスタン/ハッダ、3~5世紀)」は、型を用いて大量生産されたストゥッコ(漆喰)製だそうですが、ウェイヴィーおぐし
がよござんす


東博の特別展を観終わって時間と心に余裕がありましたら、本館や表慶館、平成館1階の総合文化展、さらには法隆寺宝物館も観られることをお薦めします(別料金は取られません)。

もっとも東博全館制覇を目指すとなると、どんなに急いでも2~3時間はかかるし、歩行距離も相当なものになるはずですから、その辺はご注意くださいませ

コメント
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