「空海と密教美術展」前編(第一会場) 東京国立博物館

東京国立博物館
「空海と密教美術展」
7/20-9/25



1200年の歴史を持つ密教美術の最高峰を展観します。東京国立博物館で開催中の「空海と密教美術展」のプレスプレビューに参加してきました。

私自身、実のところ今年の東博で最も楽しみにしていた特別展でしたが、実際にも全く期待を裏切られることはありませんでした。

それこそ密教美術の全てが揃った展覧会です。密教の祖、空海の残した書をはじめ、ゆかりの絵画や工芸、そして東寺の仏像曼荼羅をはじめとする初期密教美術の名品などが一同に介していました。

構成は以下の通りです。

第1章 空海ー日本密教の祖
第2章 入唐求法ー密教受法と唐文化の吸収
第3章 密教胎動ー神護寺・高野山・東寺
第4章 法灯ー受け継がれる空海の息吹


第1会場(第1~3章)にて空海の業績を追った上で、後半部の第2会場、つまりは第4章の法灯において、空海の教えを実践するために造られた仏像を概観するという流れになっていました。

ともかく質量ともに見応えがあります。よって拙ブログでも前(第1章~3章)・中(第4章・法灯)・後編(東寺・仏像曼荼羅)と分けてご紹介したいと思います。

さて展示の冒頭、空海こと「弘法大師像」を経由して登場するのは、空海の残した書及び、密教に関する経典の数々です。


「聾瞽指帰」空海著・筆 平安時代 和歌山・金剛峯寺 (上巻:~8/21)、(下巻:8/23~)

中でも圧巻なのは空海が24歳の時に表したという「聾瞽指帰」です。上の写真を見てもお分かりいただけるかもしれませんが、その長さは上下巻あわせて約20メートルにも及びます。その上下巻を会期を半分に分けての展示です。入唐前の空海らしい奔放な筆致が魅力とされる作品ですが、その意思の漲るような力強い表現には感心するものがありました。


右「勤操僧正像」 平安時代 和歌山・普門院(~8/21)

またここでは、一説で空海の師とも伝えられる「勤操僧正像」にも興味をそそられます。弁舌に長けた人物であったという彼の様子は、確かにこの肖像でも伺い知ることが出来ます。口を開き、身振り手振りで語りかける姿が印象に残りました。

804年に遣唐使の一員として唐に渡った空海は、中国密教の大成者である恵果に出会います。そして空海は約2年という短い期間で密教の奥儀を体得し、その全てを日本に持ち帰りました。



展示ではそうした空海が唐より持ち帰ったとされる作品が並びます。損傷が激しいものの、空海に与えるために恵果が唐の画家、李真に描かせたという「真言七祖像」、そして東寺宝物でも極めて重要視されるという袈裟などが紹介されていました。


「宝相華迦陵頻伽蒔絵冊子箱」 平安時代 京都・仁和寺(~8/21)

また空海が持ち帰った法典などを書写した冊子を納めるための箱、「宝相華迦陵頻伽蒔絵冊子箱」も見どころの一つではないでしょうか。やや紫色がかった漆に浮かび上がる唐草文や鳥や蝶などは実に細やかでした。


「兜跋毘沙門天立像」 唐時代 京都・東寺

さて第一会場も中盤に差し掛かったところで仏像のお出ましです。堂々たる体躯を見せた高さ2メートル超の「兜跋毘沙門天立像」が立ちはだかります。鎖を編んでいるという西域風の金鎖甲の姿はかなり独特で、思わず仰け反ってしまいました。


「五大力菩薩像」 平安時代 和歌山・有志八幡講十八箇院(~8/7)

また仰け反るといえばもう一点、一つは高さ4メートル近くに達するという三幅対の「五大力菩薩像」も強烈です。本来慈悲的ある菩薩が密教的な明王の忿怒の形をとって見る者を圧倒してきます。そのクワっと開いた口、そして赤々と燃え盛る背景の炎など、凄まじい異様にはどこか打ちのめされるものすら感じました。



その一方、後ろにずらりと並ぶ金の眩さには目を奪われた方も多いかもしれません。かつて東博で用いられていた伝統な展示ケースに収められたのは、杵や鈴などの法具です。



時に刃物のように鋭利な造形が印象的ですが、それらはかつて法具が武器であった名残でもあるとのことでした。


手前「金念珠」 伝空海所持 唐時代 和歌山・竜光院(7/20~7/30)

また唐の順宋皇帝より空海に贈られたともいわれる「金念珠」もお目見えしています。なおこの作品は展示期間が10日ほどしかありません。

全般的に展示替えが極めて多い展覧会です。お出かけの際には前持って出品リストにあたっておいた方が良いかもしれません。

また絵画で興味深い作品も展示されています。その一つとして挙げたいのが「四種護摩本尊並眷属図像」です。全部で143点の観音や菩薩の姿が描かれているそうですが、いずれも軽妙な筆致で、どこかエキゾチックや雰囲気を漂わせています。なお本作も会期途中で巻替えです。

この第3章では空海の章もいくつか出ていますが、そちらも前後期で入れ替わることが多いので注意が必要かも知れません。


「両界曼荼羅図(高雄曼荼羅)」 平安時代 京都・神護寺(胎蔵界:~7/31)、(金剛界:8/2~8/15)

さて第一会場のハイライトとして最後に是非ともご紹介したいのが、展覧会の目玉の一つでもある「両界曼荼羅図 (高雄曼荼羅)」です。

ともかくその大きさを見て唖然とした方も多いのではないでしょうか。天井から吊るされた縦4.5メートル、横4メートルにも及ぶ巨大な曼荼羅は、展示ケースの壁面の全て覆い、ほぼ床面までに達しています。ともかく傷みが激しく、細部は良く分かりませんが、そこは隣に置かれているVTRが大変に有効です。驚くべきほどに鮮やかな映像にて図像がとらえられていました。

それにしてもこの曼荼羅の正面に立ち、上を見上げると、まるで金彩で描かれた仏様が降り注いでくるかのような感覚を得ました。まさに神秘の世界です。

ちなみに現在は胎蔵界(7/31まで)が、そして8月前半は金剛界(8/2~8/15)が公開されます。それ以降、同じく8月後半に登場する血曼荼羅も見逃せませんが、何とかそちらをあわせて会期中足繁く通いたいと思います。


「大鋺・鋺・鋺蓋・皿」 平安時代 京都・東寺

これで第一会場(第1~3章)が終りです。第二会場は第4章「法灯」と東寺の「仏像曼荼羅」ですが、これがまた恐ろしいほどに密度の高い展示となっています。そちらも下記リンク先にまとめてあります。宜しければご覧下さい。

「空海と密教美術展」中編(法灯)
「空海と密教美術展」後編(東寺・仏像曼荼羅)

9月25日まで開催されています。まずはお早めに出かけられることをおすすめします。

「空海と密教美術展」 東京国立博物館・平成館
会期:7月20日(水)~9月25日(日)
休館:月曜日 *8月15日(月)、9月19日(月)は開館。
時間:9:30~17:00(入館は閉館の30分前まで) *会期中の金曜日は20:00まで、土・日・祝日は18:00まで開館。
住所:台東区上野公園13-9
交通:JR上野駅公園口より徒歩10分。東京メトロ銀座線・日比谷線上野駅、京成電鉄上野駅より徒歩15分。

注)写真の撮影と掲載は主催者の許可を得ています。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 3 )
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コメント
 
 
 
Unknown (あおひー)
2011-08-18 09:58:47
こんにちは。
ここにきてかなり混雑してきているみたいですね。

法具の洗練された形は好きですね。かっこよいです。機能美とは対極のもののように思います。

 
 
 
Unknown (はろるど)
2011-08-23 20:11:08
@あおひーさん

こんばんは。

>混雑

そのようですね。夏の東博でここまで盛況とは…。恐るべき空海と密教展です。

>法具の洗練された形

同感です。武器にも由来するそうですが、鋭角的な造形が見事でした。
 
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