私は仕事がゴタゴタすればするほど、時間を忘れて心にズシンと来る大曲を聴いてみたくる傾向がある。
久し振りにワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」の全曲DVDを取り出して時間を経つのを忘れて見入ることができた。1983年のバイロイト音楽祭での映像。バレンボイムの指揮、演出はジャン・ピエール・ポネルである。ポネルの演出は今、流行の読み替えの演出とは背を向けた幻想的で音楽と寄り添うような演出で安心して見ることが出来ます。巨大な作品ですがドビュッシーの歌劇「ペレアスとメリザンド」の世界を連想させるものも感じる時があります。
このオペラは以前、自己紹介で私の大好きな三本のオペラの一つに入れていましたが、やはり好きなオペラと言うより私にとって特別なオペラと言ってよいでしょう。
第1幕の何か不健康で、うずくような前奏曲から始まり、そしてこのオペラな核心と言える第2幕の延々と続くトリスタンとイゾルデの愛の二重唱。聴けば聴くほど、この作品を初めて聴いた時の感動を思い出すばかりである。
「名付けることなく、別れることなく、
新たに知り合い、新たに燃え、
無限に、永遠に、一つの意識に、
熱く焼けた胸の、至上の愛の快楽!」
二重唱の最後、「愛の死」のメロディに乗って二人が情熱的に歌い上げるところになると、こちらも、どうにもならない状態になっています。
楽劇「トリスタンとイゾルデ」という作品を知ったのはクラシック音楽を聴きだした高校生の時。コンサート形式の「前奏曲と愛の死」を聴いて、それまで聴いたクラシック音楽にはない何か形容の出来ない未知の世界があるように感じました。それまでの名曲路線で行くか、それとも自分の聴きたいものに進んで行くか分岐点だったのでしょう。クラシック音楽の深みに入っていく前に大きくふさがっていた大きな扉を「前奏曲と愛の死」が開けたくれたと言ってよいでしょう。今、考えてみると、高校生の時、とんでもない音楽を聴いてしまったと言う感が強くします。
そして「前奏曲と愛の死」だけでは飽き足らず、ぜひオペラ全曲を聴いてみたいと強く思い、少しずつ小使いを貯め、高校三年の時、遂に全曲レコードを手にしました。5枚組レコードのアルバム。初めて手にした時のズシリとした重さは今も忘れません。これが作品の重みというものでしょうか。CDの時代になって、こういう気持ちを持つことが出来なくなったのは本当に残念である。
購入したレコードはカール・ベームが1966年バイロイト音楽祭で指揮したライブ録音である。また初めて手にしたワーグナーのオペラの全曲レコードでした。初めての全曲レコードが「タンホイザー」や「ローエングリン」ではなく「トリスタンとイゾルデ」であったことが今から思うと何か考えさせるものがあります。
さて、自宅へ帰ってケースを開ける、まずは説明書の厚さに驚かされました。「トリスタンとイゾルデ」伝説から始まりワーグナーとヴェーゼンドンク夫人との関係、作曲や初演までの過程、そして音楽的意義など今のCDの解説書では考えられない、ぎっしりと内容が詰まった解説書で、読みきるだけでも大変でした。
そして初めて、当時のステレオ装置から第2幕の冒頭の音楽が鳴り響いた時、言い様がない感動を憶えたものです。そして初めて聴いた長大な二重唱。それにしても
高校生のガキが、とんでもない作品を聴いてしまったものである。
「おお、降りて来よ、愛の夜を、
愛の夜を、我が生きることを、忘れさせよ」
長大な作品だけに、いつも全曲を通して聴く事はできませんが、聴くたびに初めてこの作品を聴いた時と同じ感動を憶えることが出来るのは本当に幸せです。
さて指揮のベームであるが、その長い生涯のなかで一番敬愛した作曲家はおそらくモーツァルトでしょう。しかし一番愛したオペラは「トリスタンとイゾルデ」だったのではと思う事があります。解説書では演奏中、ベームは時折、涙を流しながら指揮していたと記されています。現在でもベーム盤が「トリスタンとイゾルデ」の全曲録音のトップだと思っていますし、ベームの数多い録音の中でも最高のものだと信じています。
今の時期、ドイツではバイロイト音楽祭が開催されています。私も死ぬまで一度、バイロイト詣でをしてみたいものです。
久し振りにワーグナーの楽劇「トリスタンとイゾルデ」の全曲DVDを取り出して時間を経つのを忘れて見入ることができた。1983年のバイロイト音楽祭での映像。バレンボイムの指揮、演出はジャン・ピエール・ポネルである。ポネルの演出は今、流行の読み替えの演出とは背を向けた幻想的で音楽と寄り添うような演出で安心して見ることが出来ます。巨大な作品ですがドビュッシーの歌劇「ペレアスとメリザンド」の世界を連想させるものも感じる時があります。
このオペラは以前、自己紹介で私の大好きな三本のオペラの一つに入れていましたが、やはり好きなオペラと言うより私にとって特別なオペラと言ってよいでしょう。
第1幕の何か不健康で、うずくような前奏曲から始まり、そしてこのオペラな核心と言える第2幕の延々と続くトリスタンとイゾルデの愛の二重唱。聴けば聴くほど、この作品を初めて聴いた時の感動を思い出すばかりである。
「名付けることなく、別れることなく、
新たに知り合い、新たに燃え、
無限に、永遠に、一つの意識に、
熱く焼けた胸の、至上の愛の快楽!」
二重唱の最後、「愛の死」のメロディに乗って二人が情熱的に歌い上げるところになると、こちらも、どうにもならない状態になっています。
楽劇「トリスタンとイゾルデ」という作品を知ったのはクラシック音楽を聴きだした高校生の時。コンサート形式の「前奏曲と愛の死」を聴いて、それまで聴いたクラシック音楽にはない何か形容の出来ない未知の世界があるように感じました。それまでの名曲路線で行くか、それとも自分の聴きたいものに進んで行くか分岐点だったのでしょう。クラシック音楽の深みに入っていく前に大きくふさがっていた大きな扉を「前奏曲と愛の死」が開けたくれたと言ってよいでしょう。今、考えてみると、高校生の時、とんでもない音楽を聴いてしまったと言う感が強くします。
そして「前奏曲と愛の死」だけでは飽き足らず、ぜひオペラ全曲を聴いてみたいと強く思い、少しずつ小使いを貯め、高校三年の時、遂に全曲レコードを手にしました。5枚組レコードのアルバム。初めて手にした時のズシリとした重さは今も忘れません。これが作品の重みというものでしょうか。CDの時代になって、こういう気持ちを持つことが出来なくなったのは本当に残念である。
購入したレコードはカール・ベームが1966年バイロイト音楽祭で指揮したライブ録音である。また初めて手にしたワーグナーのオペラの全曲レコードでした。初めての全曲レコードが「タンホイザー」や「ローエングリン」ではなく「トリスタンとイゾルデ」であったことが今から思うと何か考えさせるものがあります。
さて、自宅へ帰ってケースを開ける、まずは説明書の厚さに驚かされました。「トリスタンとイゾルデ」伝説から始まりワーグナーとヴェーゼンドンク夫人との関係、作曲や初演までの過程、そして音楽的意義など今のCDの解説書では考えられない、ぎっしりと内容が詰まった解説書で、読みきるだけでも大変でした。
そして初めて、当時のステレオ装置から第2幕の冒頭の音楽が鳴り響いた時、言い様がない感動を憶えたものです。そして初めて聴いた長大な二重唱。それにしても
高校生のガキが、とんでもない作品を聴いてしまったものである。
「おお、降りて来よ、愛の夜を、
愛の夜を、我が生きることを、忘れさせよ」
長大な作品だけに、いつも全曲を通して聴く事はできませんが、聴くたびに初めてこの作品を聴いた時と同じ感動を憶えることが出来るのは本当に幸せです。
さて指揮のベームであるが、その長い生涯のなかで一番敬愛した作曲家はおそらくモーツァルトでしょう。しかし一番愛したオペラは「トリスタンとイゾルデ」だったのではと思う事があります。解説書では演奏中、ベームは時折、涙を流しながら指揮していたと記されています。現在でもベーム盤が「トリスタンとイゾルデ」の全曲録音のトップだと思っていますし、ベームの数多い録音の中でも最高のものだと信じています。
今の時期、ドイツではバイロイト音楽祭が開催されています。私も死ぬまで一度、バイロイト詣でをしてみたいものです。