オペラファンの仕事の合間に パート2

大好きなクラッシック音楽やフィギュアスケート、映画などを語ります。メインは荒川静香さんの美しさを語るブログ。

楽劇「トリスタンとイゾルデ」への想い。その2 

2009年08月31日 10時00分10秒 | オペラ
8月17日の記事では私に楽劇「トリスタンとイゾルデ」との出会い等を書き込みました。中断していましたが、時間があれば続きを書きこむつもりでいました。そんな時、17日の記事の直後、新聞の朝刊の社会面の片隅の小さな訃報欄を見て、大変、驚きました。

イゾルデ役を得意にしていたドイツのドラマティック・ソプラノ歌手、ヒルデガルト・ベーレンスが東京の病院で急死。72歳。
草津夏期国際音楽アカデミー&フェスティヴァルの講師として来日していましたが、体調を悪くして都内の病院に入院、そして18日、息を引取ったとの事で、大変、衝撃を受けました。
もっと早く話題にしたかったのですが、丁度そのころ「フレンズ・オン・アイス」直前で盛り上がっていた頃なので今に至ったことを、どうかご容赦ください。

私にとってベーレンスの名前を聞いてすぐに頭に浮かぶのは彼女のデビュー録音になったR・シュトラウスの楽劇「サロメ」の録音です。カラヤン指揮のウィーンフィルによる1977年のEMIでの録音である。
久し振りに当時、初発売された時にすぐに購入した国内盤のレコードを引っ張り出してみました。解説書には録音の様子を写した写真も多く掲載され懐かしい。そしてCDではなくレコードで「サロメ」の終曲のサロメの長大なモノローグを聴いてみました。
当時「サロメ」やワーグナーのヒロインを歌うソプラノ歌手は、どちらかというと体格のいい、肉厚のある声のある歌手が主流?だったのですが、彼女の登場は、そのような概念を吹き飛ばすものがありました。改めて長大なモノローグを聴いてみて彼女のシャープで張りのある輝かしい声に魅了されました。楽劇「サロメ」の録音はいろいろ持っていますが、やはり彼女の録音が一番好きである。
そして解説書の写真を見ると、それまでのワーグナー歌手では見られなかった(失礼!)美人である。私の手元に彼女のバイエルン国立歌劇場でのイゾルデに扮した第2幕の写真がありますが、トリスタンを見つめる眼差しの鋭さは凄いものがあります。
また彼女がメトロポリタン歌劇場で歌ったプッチーニの歌劇「トスカ」のDVDも持っていますが、彼女の声はプッチーニを歌う声とちょっと違うかな?と思ったりしますが、舞台姿は本当に美しい!さぞかし舞台栄えのするオペラ歌手だったのでしょう。彼女の歌うイゾルデの映像が無いのが本当に残念である。さぞかし神々しいくらい美しかったに違いありません。

最後に彼女とイゾルデにまつわる私の印象に残るエピソードを一つ。
1981年、バイエルン国立歌劇場でモーツァルトの歌劇「後宮からの誘拐」を指揮していた最晩年のベームの元にバーンスタインが訪ねてきました。バーンスタインはちょうどその時バイエルン放送交響楽団と「トリスタンとイゾルデ」をライブ録音中である。そんなバーンスタインにベームが一発かましたそうである。

「バーンスタイン、君はトリスタンをやるそうじゃないか。私の全曲にかけてきた以上の回数を、君は1幕のリハーサルにかけてるのか。もしかして、その効果が表れているのではあるまいか?
公演の方は疲れるから、リハーサルに顔を出していいかい?
それに聴きたいのはヒルデガルト・ベーレンスの歌いぶりだけだから!」

ベーム晩年のザルツブルグ音楽祭でベーレンスはR・シュトラウスの歌劇「ナクソス島のアリアドネ」のアリアドネ役を歌いました。ライブ録音があるらしいのですが、まだ手に入れることが出来ていません。
ベーム、カラヤン、バーンスタイン、サヴァリッシュといった大指揮者に愛されたベーレンス。
また一人、私の時代を代表するオペラ歌手が亡くなってしまいました。寂しさをかくせません。
心よりご冥福をお祈りいたします。