オペラファンの仕事の合間に パート2

大好きなクラッシック音楽やフィギュアスケート、映画などを語ります。メインは荒川静香さんの美しさを語るブログ。

歌劇「蝶々夫人」 その2

2008年01月25日 11時50分34秒 | オペラ
歌劇「蝶々夫人」(全曲)

(蝶々さん)マリア・カラス (ピンカートン)二コライ・ゲッタ
 ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮ミラノ・スカラ座管弦楽団・合唱団
 1955年8月ミラノ・スカラ座にて録音
 
 (CD)ナクソス・ヒストリカル・シリーズ 8.111026-7 

大学生の時、初めてレコードで歌劇「蝶々夫人」を聴いた全曲盤はこのカラス盤である。今でも初めて聴いた第1幕の冒頭の音楽の衝撃は今も忘れる事が出来ません。私は日本風の異国情緒あふれた美しい音楽が流れて来る物と思っていましたが、実際は、その後の蝶々さんの運命を暗示するような激しい音楽。プッチーニーは最初から蝶々さんの過酷な運命を最初から伝えずにおれなかったのでしょうか?

このオペラの最初の全曲レコードにカラス盤を選んだ理由はもう憶えていませんが、やはりその頃からマリア・カラスの存在がすでに大きかったからでしょう。
今回のCDはナクソスレーベルがレコードからCDに復刻した物。少し前に購入していましたが今日初めて封を切って聴きました。モノラル録音ですが古さを感じさせない、柔らか味があり、歌手の声も艶がある音で見事な復刻だと思います。(私が最初購入したレコードはモノラル録音を電気的にステレオ化した物だった)

カラスは生前、蝶々さんは一度しかステージで演じていません。しかしステージの経験が無いから良くないかという事は全くありません。例えば「カルメン」は全くステージの経験はありませんが他の追随を許さない見事な全曲録音があり、「蝶々夫人」の録音も同様のことが言えます。
第1幕はやはり可憐さの必要な15歳の少女を歌うにはカラスの声は強烈すぎて他の歌手で聴きたくなりますが、第二幕となるとカラスの独壇場である。声が演技をしているとしか言い様がありません。
ピンカートンの手紙を携えたシャープレスとの二重唱は大変地味ですが蝶々さんのちょっとした感情を見事に表現して次の大きなドラマを期待させ、引きずり込む凄さがあります。このオペラの録音だけではありませんがカラスの声はオペラが単に聴かせ所のアリアを美しく歌うだけではない「オペラはドラマである」という事をいつも教えられます。

第二幕第二場の冒頭ピンカートンを待って一夜を明かした蝶々さんがわが子を寝かす時に歌われる子守歌。
 
「いらっしゃるは、いらっしゃるは、きっと。
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 
 おやすみ、かわいい坊や、私の胸でおやすみ。
 お前は神様と、私は苦しみと一緒。
 金星の光はお前のものに。
 坊や、おやすみ」

Verra(いらっしゃるは)のたった一言のことばに込めたカラスの思い。何という悲しさでしょうか。この時のカラスの歌はまさに蝶々さんの悲しさそのもの。ここの場面を他の歌手で聴くと単に美しく歌いましたとしか聴こえない。

最後に今回この録音を聴いてカラヤンの指揮が以外と良かった。後年カラヤンはフレーニ、パヴァロッティそしてウィーンフィルとこのオペラを再録音して大変定評がありますが私自身、厚化粧しすぎてノツノツしてあまり聴きません。(ただし第一幕の後半の二重唱の美しさは最高だと思いますが・・・)カラスの歌う蝶々さん、そしてスカラ座のオケ。やはりいつもと違った気持ちでレコーディングに臨んだのでしょう。