ウィトラのつぶやき

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名曲だった囲碁名人戦第3局

2017-09-23 14:32:13 | 囲碁

現在、囲碁名人戦が進行中である。高尾名人に井山6冠が挑戦しており、井山氏は勝てば2度めの7大タイトル全冠制覇となる。地力から見れば4勝2敗で井山氏がタイトル奪取、というのが相場だろうが、高尾名人が「今までと違う打ち方を見せる」と意気込んでおり、これまで内容の濃い名人戦になっている。第1局目は井山挑戦者が攻めてきた石を高尾名人がうまく取らせて、石が取られて時点で打ちやすい碁になった。その後、井山氏が様々な技を繰り出したが、高尾名人がかわし続けて逃げ切った、という印象だった。第2局は順当に井山挑戦者が勝った印象だった。9月21,22日に打たれた第3局は歴史に残る名局だったと思う。

1日目から双方が最強の手を繰り出し、一つ読み間違えればつぶれてしまうようなぎりぎりの戦いと続けながらどちらが有利ともいえない状態が続いていく。2日目もぎりぎりの激しい戦いが続き、一段落したところで、大きな地を井山挑戦者が囲いに出て、高尾名人が反対側から減らしに出たのが失敗で、そこをチャンスとみて井山挑戦者が手を抜いて別の方面を囲いに出た判断が的確で、そのまま押し切った。「これで勝てる」と見た井山挑戦者が、それまで最強の手で戦いに出ていたのを、一転戦いを収める方向に出て押し切った見事な収束が光っていた。

しかしこの碁を名局に仕立て上げたのは、むしろ高尾名人の積極的な戦いぶりだったと思う。井山6冠は読みが深く戦いに強いのが有名で、井山挑戦者が戦いに引きずり込もうとするのに対して高尾名人はバランスをとりながらかわし気味に打つのかと思っていたが、この碁では高尾名人がむしろ自分から仕掛けるような感じで、双方が思いきり戦いぬいた印象だった。「今までと違う打ち方を見せる」とはこの事か、と思った。

私がここまで感心したのは昨夜帰宅してから見た朝日新聞の囲碁サイトにあった張栩九段の解説ビデオを見たからである。棋譜だけを見て感心していた私だが、張栩九段の深いレベルの解説と同時に、張栩氏自身が二人の戦いをぶりを見て興奮している感じがこちらにも伝わってきて、私自身も感動させられた。

名人戦は挑戦者の井山6冠の2勝1敗である。第3局のような名局はそう続くものではないと思うが、どちらかが4勝して決着がつくまで、両者力いっぱいの戦いを期待している。


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